アンリが二年生になり、一週間が過ぎた。と言いつつも、二年生にとって大きな変化は無く、大して進級した実感も無い。

　ただ一つの大きな変化と言えば、幼い頃に屋敷の火事で両親を失い自分を戒めるために、地位や身分を捨てオーリン家の執事として仕えていたフレッドが伯爵位を継ぐ決意と共に学園に通う事になった。そしてアンリの強い推薦によって入学当日、クラブに入会してもらった。
　
　クイニーからしたら、これまで労働者階級だと思い込み馬鹿にしていたフレッドが実は伯爵家出身で、学園入学と共に爵位を継いだという事実に戸惑い明らかに気まずい雰囲気を醸し出していた。
　そしてそんなクイニーとは対照的に以前、フレッドと声を交わしたことのあったミンスはフレッドの謙虚さと洗礼された所作を気に入っていたようで、一通りの真相を知ると喜んでフレッドを受け入れた。

　そして驚いたことにフレッドは色々な意味で入学早々、学園では有名人になっていた。
　一つはアンリ達と関わりを持っていることだ。もちろん学園には学年関係なく、交友関係を広げている学生は大勢居る。だがこれまで他と関わりを広げようとしなかったアンリ達と関わりを持ち、なにより誰一人として所属を許可しないと宣言していたクラブに入学初日、無条件で所属したことによって、主に女学生達から注目を浴びる事になった。

　二つ目の理由として、新年度が始まるタイミングで全学年それぞれテストが行なわれ、一年生には入学テストがある。そこでフレッドは一年生で唯一、全ての科目で満点を取り学年首席となった。
　後から知った事だが、今回の入学テストには入学したばかりの一年生に解かせるにしては難しい問題が含まれていたようで学園側も満点を取る人が現れることは想定していなかったと、学園の理事長も務めているお父様が夕食の時に笑いながら話していた。

　ちなみに二年生の成績はと言うと、レベルごとにテストの難易度は変わるのだが、点数だけで言えばザックが学年トップの成績、そしてザックに続きクイニーが二位の成績だ。二人の学ぶアドバンスレベル、その中でも理系科はこの学園で一番難しいと言われているだけあって、一年生の時から二人の頭が良い事は分かっていた。だが誰よりも予想外だったのは五位にミンスが入っていたことだ。そしてアンリはというと、二年生の中で中の下辺り。

　そしてブルーブラックの髪に端整な顔立ちをしたフレッドも例外なく女学生からの人気を集めたが、そういう事に興味が無いらしいフレッドは誰に対しても平等に接する。そんな態度が余計に女学生からの人気を集める要因となった。