すると突然、後ろの扉が開く音がして、誰かの足音が駆け込んでくる。
「博士……! 成功したんですね!」
声の主は、若い男だった。
ヘーゼルの瞳が、歓喜に震えている。
リアを見て、その目はさらに輝きを増した。
「これは……すばらしい……! やはりルクシミウムは世界を変えられる! これで、ヴァストラ帝国との戦いにも終止符が打てるかもしれない……!」
あまりに興奮気味に語るその様子に、リアは無言のまま見つめ返した。
「自己紹介が遅れたな。私はセリオ・ヴァイス。サンティス博士のもとで、ルクシミウムの応用研究をしている」
そう言って、彼はリアに手を差し出す。
「君は我々にとって特別な存在だ。ここ、アルメリアのアルファ・コア研究所は、国家直属の施設だ。最先端の設備が整っている。安心してくれていい」
リアは表情ひとつ変えず、差し出されたその手をじっと見つめた。
握ることはなかった。
セリオは気にも留めず、むしろその無反応に満足したように微笑む。
「……完璧だ! 感情の揺らぎが一切ない。この静けさこそ、戦争を終わらせる兵器にふさわしい」
そのささやきに、サンティスがわずかに顔を曇らせた。
「……セリオ。あまり急ぐな。彼女の身体はまだ……」
「ご安心を。私は提案書をまとめて、すぐに本部へ提出します。博士も、お身体をお労りください。かなりお疲れのようですから」
それだけを言い残し、セリオは足早に部屋を出ていった。
彼が去った後、部屋には静寂だけが残る。
サンティスは、リアの手を優しく握ったまま、小さく吐息をこぼした。
「……リア……すまない……」
その言葉の意味を、リアはまだ知らなかった。
