それでも、この世界で、光を


自分の胸に埋め込まれたもの。
それが、すべての始まりだった。

リアは、薄暗い研究室の片隅で膝を抱えて座っていた。

手を胸に当てる。
ぬくもりの奥で、淡い震えのようなものが響いていた。

「……ここに……」

ルクシミウム・コア。

ノアレを破壊した、あの爆発の中心にあったもの。

人々の命を奪い、町を焼き尽くした“光”。
その結晶核が、今、自分の中で脈打っている。


それは、どうしても逃れられない事実だった。

まるで、自分という存在の証のように、じっとそこにある。
生きている証であると同時に、破壊の証でもあった。

「私は……誰かの希望なんかじゃない」

リアはそう思った。
サンティスは「誰かを救いたかった」と言った。
でも、それは結果的に、多くの命を奪う光を生んだ。


ふと、目を伏せると、微かに青い光が胸元に滲んでいた。

コアの覚醒が近い。
感情に反応して、ルクシミウムは光る。

それは、喜びでも怒りでも、ほんの少しの不安でも。

「わたし……本当に、爆弾なんだ」

小さな声が、誰もいない部屋の中に沈んでいった。


自分は、ただ生かされただけ。

このコアによって救われ、
その代わりに、すべてを抱えてしまった。

あの日、ノアレで失われた命、未来、家族。
すべての記憶の上に成り立つ命。


──もし、このまま記憶や感情が蓄積されて、コアが覚醒すれば、
わたしは兵器として使われるのかな──


セリオの声が、まだ耳の奥で響いている。


『戦局を変え得る力でもある』


──それが、わたしの使命なの? 生き残った意味?


ノアレを焼いた、あの光。

もしまた、あの光が生まれてしまったら。
今度は、ヴァストラの町を、そこに暮らす人たちを、
何も知らない誰かを傷つけてしまう──


「……それって、本当に平和なの……?」


誰にも届かない問いが、唇からこぼれる。

──正しいって、なんだろう。
わたしの中にあるものが、そんな未来をつくるのなら……
それって、ほんとうに、必要とされてるってことなの?──

リアは、息を潜めるように自分自身に問いかける。

そして、ぽつりと言葉が落ちた。


「……わたしは、生きていてはいけなかったのかな……」


唇がかすかに震える。
胸の奥で脈打つルクシミウム・コアが、静かに淡く光を放っていた。



──逃げる……?──



そう思った瞬間に、胸の奥がズキリと痛んだ。
きっと、この首飾りは、ただの制御装置ではない。

見張られている。
セリオのことだ。
発信機が仕込まれてても、おかしくない。
どれだけ距離を取っても、この身体ごと暴発する可能性がある。

リアは全てを悟った。

──ノアレと同じように、何も知らない人々を、再び巻き込んでしまうかもしれないんだ……だったら、私は、道具として使われるべきなのかな……誰かの意志で、誰かのために──


リアは、胸が、押しつぶされそうだった。

サンティスが与えてくれた時間。
ノースフィアで出会った人たち。
イファやマリナの笑顔。

そのすべてが、まるで夢のように遠のいていく。

“世界の平和のために使われる”という言葉が、冷たく、無慈悲にリアの胸に響いていた。