それでも、この世界で、光を


リアは、迷いの中で問いかける。

「……セリオさんは、わたしに何を望んでいるんですか?」

「……私はただ、君に可能性を、希望を感じているんだよ」

セリオの声がふと低くなる。


「私に協力してほしいんだ。君は奇跡であり、そして──戦局を変え得る力でもある」


リアの眉がわずかに動く。
セリオは少しの沈黙のあと、まっすぐに言った。


「アーゼルとヴァストラの冷戦は、限界を迎えている。いずれ必ず、戦火が再び燃え上がる。その前に、終止符を打たなければならないんだ。君自身で」

「……わたしの力で……?」

「君の中の光が目覚めた時、世界は大きく変わる。ヴァストラ帝国にルクシミウムの悲劇を味わわせてやるんだ。神の力を恐れた帝国は屈し、我がアーゼル共和国の平和が約束されるだろう。そうすれば、これ以上の犠牲を出さずに済む」

セリオは少し笑ってみせ、優しげな口調で語りかける。

「それが君の運命なんだよ。あの時死ぬはずだった君がルクシミウムの力で救われた。私は、君の力を信じている。それは、人の心と共鳴する力だ。きっと、この世界の痛みを終わらせることができる」

リアは目を伏せた。


自分が生きる意味……。


ノースフィアで過ごした大切な記憶や知ってきた感情が、
隣国の誰かの命を奪うのか。

生きているだけで、人を殺す兵器のためのエネルギーになるのか。


「……もちろん、記憶や感情が蓄積され、コアに充填された時、暴発の危険はある。だが安心してほしい。君の首にある装置には、暴走を防ぐ安定化機能を施してある」


リアは目を見開いて、首についている銀色の金属塊に手を伸ばす。

「もう少しなんだ。君はここで過去を知り、多くの感情と記憶を得た。それらは、知らず知らずのうちに、コアに充填されるべきエネルギーとして蓄えられてきた」

セリオは、勝利を確信したかのように、抑えきれない笑みを浮かべる。

「君の中で、コアを覚醒させるための記憶と感情が、すでに満ちつつある。
 ……あと、ほんの一押しだ。覚醒は、もう避けられない」

リアの呼吸が浅くなる。

今、自分の身に何が起きているのか。
なぜ光が脈打ち、なぜ記憶が戻るたびに苦しいのか──


すべて、仕組まれていたことだった。
セリオはリアに近づき、耳元で声を落とす。

「世界の平和のためさ。君には、その義務がある」

一歩引いてニヤリと笑うその瞳には微かな狂気を感じた。



部屋を後にすると、セリオは、通信端末を起動した。

「こちらセリオ・ヴァイス。制御装置によると、充填率は九十パーセントに達した。コアの覚醒はもうすぐだ。あと一歩でコアに接触できるようになるだろう。プロジェクトは予定通り進める」


研究室に一人残されたリアは、
胸に手を当て、その脈動を感じた。

そこに確かにある、熱のようなもの。

触れれば何かが目覚めてしまいそうな気配。


彼女は小さく息を吸い、そしてそっと、静かに吐き出した。


誰の声も届かないこの空間で、胸の鼓動だけが、確かに響いていた。