ざらついた映像がゆっくりと再生された。
研究所の中、白衣を着たサンティスが、机に手をつき、何かを見つめるように話していた。
その瞳は、映像越しでもわかるほど疲れていた。
『……これは、ルクシミウム・コアに関する重要な補足記録だ。今後、これを扱う者が現れるなら──いや、“彼女”のために残す』
彼は、手元のノートをめくりながら、ゆっくりと語りはじめた。
『ルクシミウム・コアは、ただの反応炉ではない。人間の内面……つまり感情や記憶といった、人間の根幹にある不確かで制御不能な要素と反応する。』
リアの目が見開かれた。
「……感情や記憶……?」
映像の中のサンティスは、何かを思い出すように、静かに息を吐いて続けた。
『感情が揺れたとき、コアの出力もまた変化する。喜びや悲しみ、怒り、恐れ。そういった揺らぎが、コアの振動を高め、光や熱などのエネルギーに変換される……。例えば、嬉しい時には瞳の中で金色の光を放つのだ。記憶や感情が充填されると、コアは臨界値に達し、記憶や感情を消費してルクシミウムの莫大なエネルギーを発する。つまり、扱う者の心そのものが、コアの“スイッチ”となってしまう』
サンティスはしばらく黙り込み、やがて、ノートの一節を読み上げるように言った。
『心が灯れば、コアもまた灯る。これは比喩ではない。逆に言えば、心が閉ざされている状態では、コアは眠ったままなのだ。それは、制御するには不安定すぎる装置である。だが……』
彼はふと視線を上げ、まるで、未来のリアを見つめるように言葉を続けた。
『だからこそ私は、人に託した。装置や機械ではなく、命を持つひとりの存在に。彼女が“人の心”を取り戻したとき、その力はきっと、破壊ではなく希望に変わると……そう信じた』
リアは、静かに息を呑んだ。
自分の中にある“何か”が、ずっと疼いていた理由が、
今、ようやくわかった気がした。
「わたしの中に……光がある……?」
リアは思わず、自分の胸に手を当てる。
そこには確かに、脈打つような何かがある。
鼓動の奥で、静かに眠っている“光”
──それは、記憶や感情に反応し、共鳴する。
そのとき、映像のサンティスが、最後に小さくつぶやいた。
『未来は、選べる。希望になるか、破壊になるかは……その手に委ねられている』
映像が、ふっと消えた。
部屋の中に、再び静寂が戻る。
だが、リアの胸の内には、確かに何かが目を覚ましかけていた。
それは、人の心を取り戻した少女の中で灯る光か。
それとも、兵器か。
ただひとつ、確かに言えるのは、
この光は、彼女の中で生まれ、育ち、
いまようやく“意味”を探し始めたということ。
──自分が、なぜ生かされているのか。
──なぜ感情というものを、取り戻すことができたのか。
リアは、自分が歩んだ確かな時間をしっかりと胸に刻んでいた。
