それでも、この世界で、光を

夜があけ、太陽の光が部屋に差し込んでいた。

リアはベッドの上で目を閉じたまま、胸の奥の感情をじっと感じていた。
昨夜、イファと交わした言葉が、今も心の中に静かに残っている。


──私は、一人じゃない。
それでも、自分にしかできない選択がある。


リアはゆっくりと身を起こし、寝室を出て、キッチンに立つマリナの背中を見つめた。


「……マリナさん、少し、お話できますか?」

リアの声に、マリナは手を止めて振り返る。

「……ええ、もちろんよ。お茶でも淹れましょうか?」

リアは小さく首を横に振ると、テーブルの椅子にそっと腰を下ろした。
マリナが隣に座ると、リアは息を整えるようにして言葉を紡ぎはじめた。

「わたし……ノアレへ行くことにしました。自分の過去を、ちゃんと知るために。怖いけど、今のわたしには、それが必要だって……思ったんです」

マリナは目を伏せて、少しだけ口元を震わせたが、優しく頷いた。

「……きっと、リアがそう思ったのなら、それが今一番大切なことなのね」

マリナは、ゆっくりと言葉を続けた。

「……寂しく、なるわね……。最初にリアと出会った日のことを思い出すわ。大丈夫。私たちはもう、家族よ。あなたがどこへ行っても、それは変わらない」

「……ごめんなさい、マリナさん。私、また迷惑をかけてしまうかもしれません」

リアは、胸が締めつけられるような気持ちだった。
マリナは、そっと首を横に振った。

「いいえ、迷惑なんか一度だってないわ。リアがいてくれて、本当に嬉しかった。あなたと一緒に過ごせた日々……それは、かけがえのない贈り物だったのよ」

「……私、イファやマリナさんと出会えてよかった……だって……」

言葉が喉の奥で支えて出てこない。
マリナは、微笑み、そっとリアを抱きしめた。

そのぬくもりと優しい香りが、リアの心にそっと染み込んでいく。

「大丈夫。言葉にしなくても、ちゃんと伝わっているわ。ここで過ごしたことが、あなたにとっても、大切な時間だったこと。……立派になったわね、リア」

「マリナさん……」

「リア。私も、イファも、みんなあなたの味方よ。いつでも、帰っていらっしゃい。ここは、あなたの帰る場所だから。ずっと、待っているわ」

「……ありがとう、マリナさん」

朝の光が、ふたりの間にやわらかく差し込んでいた。
その光の中で、リアの心はあたたかくなっていった。