それでも、この世界で、光を


リアは、傷口が塞がったイファを労わりながら、崩れかけた階段を静かに下る。
二人はかつて封印されたシェルハイム研究所の入り口へと辿り着いた。

その先にある自分の始まりを、今のリアは知っている。

「ここが……?」

イファの問いに、リアは小さくうなずいた。

リアは取手のない壁のような扉の前に再び歩み寄る。

彼女はそっと、自らの胸元に手を添えた。
そして目を閉じ、深く息を吸い込む。

リアの指先が扉に触れると、それは青白く光を放った。
ルクシミウムの粒子が静かに反応し、金属の扉が、左右へと開く。

彼女は振り返り、イファを見つめて言った。

「……来てくれて、ありがとう」

静かな声だった。
けれど、その中には言葉では言い尽くせない想いが込められていた。

イファはただ、黙ってうなずく。

リアは、
「私の、ここには……」
と言って、胸元を軽く押さえた。

「ルクシミウムの結晶核、ルクシミウム・コアが埋め込まれているの」

イファはわずかに目を見開いたが、静かに耳を傾けていた。

「私の故郷、ノアレで、わたしは……死の淵にいた。光と炎に包まれて……。でも、サンティス博士が……」

リアの言葉が、ほんの一瞬だけ震える。

「……この力を使って、私を救ってくれた」

リアは胸に当てた手をぎゅっと握りしめた。

「だから、今の私は生きてる」

リアは扉の先に続く、薄暗い通路に足を踏み入れた。
その足取りがためらうことはなかった。

イファはリアの後をそっと歩く。

リアは、視線を落とし、言葉を続けた。

「けれど、それと同時に、わたしはもう、人間じゃなくなった。……この力で生かされたとき、生きてきた記憶も、育ててきた感情も、全部……コアに消費されてしまったの」

薄明かりの中で、彼女の横顔はどこか遠くを見つめていた。

「……でも、何もない私に、手を差し伸べてくれたのは、イファだった」

彼女はイファへ視線を向けると、ふわりと笑った。

「イファ……本当にありがとう」

その表情を、イファはただ黙って見つめた。
言葉にできることなど、何もなかった。
喉の奥が熱く、何かが溢れ出してきそうだった。

そしてリアは、ふっと笑う。

「わたし……自分で選びたいの。自分の、人生だから。私が救われた意味……生きてきた意味が、きっと、あの部屋にある。だから、もう一度、あの部屋に行きたい」

どこか寂しげに、けれどどこまでも穏やかに。

「イファ……私のそばにいてくれる?」

イファは、小さく、けれど力強くうなずいた。

「どこへだって、一緒に行くよ。リアが選ぶ……その未来を信じたいんだ」

そして彼は、そっとリアの手を取った。
彼女の手は少しだけ震えていたけれど、何も言わず、ただ寄り添うように。