あ……そういう感じね。

 いつもと同じように、過ぎていくと思っていた日。

 日用品の買い物中だった私は、まるで全身がボロ布のようになって道に横たわっている男性を見て、彼が誰であるかを冷静に悟った。

 ……あれ。十中八九の確率で本編中で、世界を一度は滅ぼしてしまう魔王だわ。

 確か……最終決戦の魔王の回想エピソードに、こんな場面あったと思う。別角度からになるけど、アニメの中でも、この風景なんだか見たことあると思った。

 獅子が我が子を千尋の谷へ叩き落とすように魔王は、まだ魔族として覚醒もしていないために、魔力も使えず身を守るすべも無い我が子を、その身ひとつだけで欲望渦巻く人間界へと送った。

 ギュスターヴは人の母を持ち、生粋の魔族でない。亡き母の死を悼む優しい心の持ち主で、誰とも戦いたくない争いたくないと、いつも泣いていたからだ。

 けど、そんな魔王ギュスターヴは、これから人間界でひどい迫害受けて人を憎むようになり、世界を滅ぼすという流れになってしまう。