◇コンコース◇

オォオォオ――……。
数千倍に増幅された神霊力を手に、慎重に隙を窺う魔界霊術師ゾーイ。
相手は大気の精霊だ。微細な気圧の変化すらも命取りになりかねない。
「……貴女、……いや、あんたって私の事、何も知らないよね……?」
「……っ?」
呼称が変わる。先までの余裕が形を顰め、……怒り心頭の証拠だろう。
「知る必要すらないとしたら? 貴女は力を過信する哀れな繰人形よ」
おぉおぉお――……。
不敵な笑みを浮かべ、相手を挑発する魔界霊術師。怒りはミスを誘う。
標的が怒ればそこに付け入る隙が生まれる。ゾーイ流勝利の方程式だ。
「だから、……私は繰人形じゃないっ! エスタって名前があるっ!」
「……あぁ、そういう事……。それが貴女の第二の生き方って訳ね?」
エスタ。ギルガメシュ叙事詩の旧支配者の一覧に刻まれている名前だ。
確信に至るゾーイ。少女が旧世界の神々の依り代である事が理解った。
「……く……」
とすると。少女ディアナの記憶、叡智も相手の手に渡ったとみるべき。
月の住人達のデータは、恐らく総て旧支配者に流布されたとみていい。
「第二も何もないっ! これが最初の人生だ! 過去なんてないっ!」
ヴォお――……。
大気が鳴動する。怒りに我を忘れ、総身から突風を吹き上げるエスタ。
「……――っ」
ヴォン――。
臨界点に達する霊力。今が攻撃の好機ではある。後はタイミングのみ。
が、ゾーイに迷いが生じていた。彼女は本当に脅威なのだろうか――。
◇青海市街地◇

タタタ――、ザッ。
セレスの脚が止まった。目の前に羆の様な変わったモンスターが居る。
「……アレは?」
「……きゃあっ」
――ドンっ。
白昼夢から覚めたカミュが、立ち止まったセレスの背に顔をぶつける。
「痛ったぁ~。ちょっと何よぉ突然……っ」
ジオフロント内のトレーニングジムで、独自ストレッチに興じていた。
浮遊式の超振動デバイスが局所を効果的にマッサージする優れものだ。

「あーぁ。気持ちぃとこだったのに~……」
もう少しで達した所を、現実に引き戻された鬱憤と不満が燻っている。
夢見心地の最中を邪魔された事は癪だが、どうやら緊急事態の様子だ。
「ディアナ、あの魔獣に見覚えない……?」
「……へぁ? ぁ、あれ? あの魔獣……」
「どうしたお前ら、あの魔物に見覚えが?」
タタ、……――ザッ。
追走してきたジュンも足を止める。女子二人の表情が何時になく固い。
「ぅ、ぅん。ちょっとだけ心当たりが……」
「えぇジュン、あのグリズリーは……っ!」
ゴゴゴ――……ッ。
セレスの総身が、普段の彼女とは程遠い禍々しいオーラを放っている。
「ぁたしが過去に倒したハズだけど……っ」
嘗てジオフロント内部でタイムリープした際、気紛れに倒した魔獣だ。
「ぅげっ、……まさか、復活したの……?」
「……許せない……、アイツが、……っ!」
おぉおぉお――……。
驚愕に眼を見開くカミュの傍らで、セレスが怒りに髪を逆立てている。
「奴だ……。アイツがディアナを……っ!」
ゴゴゴ――……。
過去の凄惨な記憶が、――忘却の縁に追いやっていたトラウマが蘇る。

オォオォオ――……。
数千倍に増幅された神霊力を手に、慎重に隙を窺う魔界霊術師ゾーイ。
相手は大気の精霊だ。微細な気圧の変化すらも命取りになりかねない。
「……貴女、……いや、あんたって私の事、何も知らないよね……?」
「……っ?」
呼称が変わる。先までの余裕が形を顰め、……怒り心頭の証拠だろう。
「知る必要すらないとしたら? 貴女は力を過信する哀れな繰人形よ」
おぉおぉお――……。
不敵な笑みを浮かべ、相手を挑発する魔界霊術師。怒りはミスを誘う。
標的が怒ればそこに付け入る隙が生まれる。ゾーイ流勝利の方程式だ。
「だから、……私は繰人形じゃないっ! エスタって名前があるっ!」
「……あぁ、そういう事……。それが貴女の第二の生き方って訳ね?」
エスタ。ギルガメシュ叙事詩の旧支配者の一覧に刻まれている名前だ。
確信に至るゾーイ。少女が旧世界の神々の依り代である事が理解った。
「……く……」
とすると。少女ディアナの記憶、叡智も相手の手に渡ったとみるべき。
月の住人達のデータは、恐らく総て旧支配者に流布されたとみていい。
「第二も何もないっ! これが最初の人生だ! 過去なんてないっ!」
ヴォお――……。
大気が鳴動する。怒りに我を忘れ、総身から突風を吹き上げるエスタ。
「……――っ」
ヴォン――。
臨界点に達する霊力。今が攻撃の好機ではある。後はタイミングのみ。
が、ゾーイに迷いが生じていた。彼女は本当に脅威なのだろうか――。
◇青海市街地◇

タタタ――、ザッ。
セレスの脚が止まった。目の前に羆の様な変わったモンスターが居る。
「……アレは?」
「……きゃあっ」
――ドンっ。
白昼夢から覚めたカミュが、立ち止まったセレスの背に顔をぶつける。
「痛ったぁ~。ちょっと何よぉ突然……っ」
ジオフロント内のトレーニングジムで、独自ストレッチに興じていた。
浮遊式の超振動デバイスが局所を効果的にマッサージする優れものだ。

「あーぁ。気持ちぃとこだったのに~……」
もう少しで達した所を、現実に引き戻された鬱憤と不満が燻っている。
夢見心地の最中を邪魔された事は癪だが、どうやら緊急事態の様子だ。
「ディアナ、あの魔獣に見覚えない……?」
「……へぁ? ぁ、あれ? あの魔獣……」
「どうしたお前ら、あの魔物に見覚えが?」
タタ、……――ザッ。
追走してきたジュンも足を止める。女子二人の表情が何時になく固い。
「ぅ、ぅん。ちょっとだけ心当たりが……」
「えぇジュン、あのグリズリーは……っ!」
ゴゴゴ――……ッ。
セレスの総身が、普段の彼女とは程遠い禍々しいオーラを放っている。
「ぁたしが過去に倒したハズだけど……っ」
嘗てジオフロント内部でタイムリープした際、気紛れに倒した魔獣だ。
「ぅげっ、……まさか、復活したの……?」
「……許せない……、アイツが、……っ!」
おぉおぉお――……。
驚愕に眼を見開くカミュの傍らで、セレスが怒りに髪を逆立てている。
「奴だ……。アイツがディアナを……っ!」
ゴゴゴ――……。
過去の凄惨な記憶が、――忘却の縁に追いやっていたトラウマが蘇る。


