◇直人の別荘◇

見回りから返った直人を、楓が出迎えてくれた。
深夜、寝静まった床の間で、直人はヘンテコな夢で眼が覚めてしまった。
月明かりに照らされた床の間で、隣から心配そうに覗き込む楓が見えた。
「どうしたの? うなされてたけど」
「ぅーむ……。変な夢を見た……」
「へぇ。どんな夢?」
「その、なんだ、……何でもないよ」
「ぇー? 気になるなぁ。教えて?」
「いや、あまり思い出したくはないんだが、……各地を旅していた」
「各地って、……どこ?」
「うーむ……アレは、……世界旅行、……になるのかな?」
言葉を濁す直人。楓が興味津々に身をのりだす。
「美術館を鑑賞したり、豪華客船でディナーを食べたり、セーヌ河を渡ったり……
「へぇー、面白そう。楓もいつか世界旅行に行ってみたいなぁ……」
「……何時でもいいが? お前さえ良ければ、連れて行ってやるけど」
その言葉に、楓が白い顔を輝かせる。
「えーほんと? わぁやったぁーっ! で、何時行くの?」
「ゾンビの群れが収まったら、……て事に、なるのかな?」
「えー? 何それ。ゾンビなんてなんで居るのー?」
実際、何時になるやら、永久にこのままかもしれない――。
「知るかよ。こっちが聞きたいくらいだ。だが、恐らく……」
一呼吸置くと、おもむろに直人が言葉を紡ぐ。
「冥府の王、ハデスが関与している事は間違いがなさそうだ、という事と、……」
「ハデス? やだぁ、誰それ。怖いおじさんか何か?」
失笑する直人。結界内の初老の男だが、決して怖くはなかった。むしろその逆――。
「楓、お前はこれから一つずつ知らなければ。この世界で生き抜く為に必要な事なんだ」
「……ぅ、ぅん……」
神妙な面持ちの楓が、ごくりと生唾を呑む。
「今、この世界は新旧あらゆる神々が抗争を広げている最中の様なんだ……」
静謐の中、従容と言葉を紡ぐ直人。
「で、俺たちは、世界中の人々は、皆、奴らの抗争に巻き込まれている。……事になる」
「ぇー、なにそれ。怖い。神々? 、ってどんな人達なの?」
「お前、覚えてないか? 一緒に居た黒い制服を着た男が居たろ? あんな感じだ」
「普通の優しそうなお兄さん、て感じだったけれど?」
一瞬、ジュンの姿が直人の心中を過った。楓に優しい眼差しを向ける。
「一見、普通の人間に受肉しているんだ。だが中身は別物で、変な力を備えている」
「変な力……?」
「オーラ、だとかそうだが、実は、それって人間にもあるんだ。霊気、というか」
楓が身を乗り出した。
「私にもあるの?」
「あぁ、まぁな。鍛えようによっては、お前も神々に近い所までいけるのかもな」
「ぇっ、ほんと? 私、やってみる!」
「……まぁ、その、……なんだ、がんばれ」
はぐらかす直人。正直、頑張って欲しくもなかった。
「で、さっきの世界旅行って、どんな感じだったの?」
「……? 興味あるのか? まぁ話半分で聞いてくれればいいから」
「ぅん。教えて?」
「……豪華客船で、ディナーを食べたンだが、料理の味が普通だった」

「え? ……それだけ?」
「上手いと思うだろ? 意外と普通の味だったよ。豪華客船のディナーは」
「意外と、って、お兄さま、豪華客船に乗った事はないの?」
「……別に乗る必要がなかったからね。海外旅行自体、余り経験がないね」
「ふぅーん。この山の周辺に棲みついているって、感じなの?」
「あぁ。そんなところだ。何といっても第二の故郷だ。護らなくてはな」
「今度からは一緒に護れるねっ」
喜々として答える楓。だが、幾つもの不安が残されている。
「……」
先ず、楓が何時また、何かの景気を切っ掛けに豹変するかもしれないという懸念。
この世界そのものの存亡すら、今は危うい。現状ゾンビの群れが跋扈している。
無事な場所もあるかもしれない。が、直人の見た限り、街中は壊滅状態だった。
「……」
全てリサーチした訳ではないが、世界には未だ無事な場所があるかもしれない。
安息地を求めて移動を繰り返すより、現状この要塞に留まる方が恐らく安全だ。
食料は山菜や野菜、獣などから調達できる。水源は、渓谷の河川を使えば良い。
発電はボイラー発電であり、問題ない。モバイルのみガソリンの調達が必要だ。
「……」
都市機能が麻痺すれば、ガソリンや石油加工品はじめ道具の入手も困難になる。
現代は自然を壊し過ぎた。縄文時代の頃の様に、自然回帰もいいかもしれない。

思案に耽っていると、直ぐ隣で楓の声がした。
「ねー。ディナー食べた後は、どーなったの?」
「え? あ、あぁ。……食べた後は、どーだったかな。確か演劇鑑賞して……」
「演劇? サーカスみたいの?」
無邪気な質問に、ふふっと微笑う直人。
「いや、俺が見たのはオーケストラだった。楽団が交響曲を演奏していたよ」
「ぅーん。それも退屈そう。演劇とかの方がぜったい愉しいよねっ」
「……そうかな。まぁ、ああいう娯楽は、そもそも資本家の退屈凌ぎだよな」
「退屈凌ぎででっかい船に乗れるなんて、羨ましぃーっ」
心底羨ましそうに、楓が無垢な声を弾ませる。
「飽きると思うよ。娯楽なんて大抵、最初だけで、直ぐに飽きが来るんだ」
「そーなんだ。飽きるものなんだね? 美味しい食事とかは飽きないけどな」
「はは。そうだな。食事は飽きないな。腹が減ったら食べたくなるもんな」
屈託なく笑う直人。楓との一時は新鮮味で溢れている。飽きがこない。
「飽きないって、何だろうな。普通は、続けていたらその内マンネリになる」
「好きなモノは飽きないんじゃない? 何が好きなのかは、わかんないけど」
素朴な疑問に、成る程と頷く直人。その視点は斬新だった。
「そうだな……。好きなモノは、……か。だったら、俺は……」
楓が好きだ――。その言葉をそっと胸に仕舞い込んだ。
「しかし妙だな。……なら、なんで夢にあの女が……」
「えー? 女って誰よぉー? 楓じゃないのぉー?」
「いや、実は、以前に色々と手助けして貰った女性が居てだな、……」
「ふーん。べつに、変な仲じゃないんでしょ?」
嫉妬だろうか――? 楓が、釘を刺す様な言い方をしてくる。
「もちろんだよ。別に特別な仲じゃない。恩人ってだけだよ」
「恩人って? どんな風に?」
しつこく聞いて来るのは、単に好奇心の裏返しだろうか。それとも――。
「お兄ちゃんな、お前に再会する前、色々な場所に行ってるんだ」
「えー? だって海外とか行った事ないって、さっき……」
「リアルではね。仮想の世界って言うのかな、異世界へは行ったんだよ」
「異世界……?」
「このリアルだって今じゃ立派にゾンビや異界の神々の跋扈する異世界だ」
「ぅー。まぁ言われてみれば……そうだけど。」
納得いかなげな楓に、やんわりと諭す様に説明する。

「夜の遊園地で観覧車に閉じ込められた」
「ぁはは。楓もそれ、一度やってみたい」
「カジノみたいな所では、警備員の格好をして脱走した」

「かっこいい。楓も見てみたかったなぁー」
「いいもんじゃないぞ。あんなの命懸けだ」
思い出すだけでも、辛い時間が鮮明に蘇る。だが、同時に――。
「……ベネチアの様な場所で、恐らくヴィットリオ橋を歩いた」

「へ? 鳥大橋?」
「似た様なもんだ。思い返すと、アレが初めての海外旅行だった気がする」
「へぇー。海外旅行羨ましいなぁー。でー、その恩人って誰?」
「……覚えてないか? 学園前で、一瞬だけ会っただろ?」
「え? あの王女さまみたいな格好した、紫色の髪の人?」
「……青い方だ。ディアナって子で……」
そこまで言って、胸が苦しくなり、直人は口を閉ざした。
「どうしたの? お兄さま……」
「いや、……何でもない」
こうしている間も、あの熾天使はあの動乱に立ち向かっているのだろう。
それに対して、自分は――。
◇青海大通り◇

キィィィ……――。砲身が眩い煌めきを放つ。
「――爆裂無反動砲(パンツァーファウスト)ッ!」
ドゴォォ――ッ!!
神霊砲弾をモロに浴びたビル群の一角が、爆発で木っ端に吹き飛んだ。
「ジュンっ! ちょっとノーコン過ぎんでしょっ!」
「あぁ。済まないッ、俺はこー見えて適当なんだッ」
「こー見えてって、どっから見ても適当に見えるけどっ」
タタタ――……。
言い争いながらもゾンビの只中を突っ切る一行。セレスの息が上がっている。

「大丈夫か、セレス」
「はぁ、はぁっ。え、えぇ……。少し休めば……」
固有結界を展開できる貴重な異星人の仲間ではあるが、体力が限界の様だ。
「お仲間ってやらは、何時頃到着する予定なんだ?」
ジュンの質問に、セレスが息をきらしながら答える。
「え、えぇ。駅で落ち合おうって事になったけど、……はぁ、はぁ」
「つまりこのまま駅まで進めば問題ないって事よねっ!?」
横から『ディアナ』があっけらかんと断言した。
「飛行機の操縦技術は確かなんだろうな?」
「プロミスは信用出来るわ。腕は問題ない」
「……プロミス?」
「あぁーっ! あの嫌味な野郎かぁあっ!」
「知ってるのか? カ、……ディアナ?」
コクンと頷くと、『ディアナ』は獰猛な牙を剥き出した。
「知ってるも何も、今度あったらコテンパンに叩きのめしてやるっ」
「そっか、……仲が悪いんだな」
嘆息するジュン。カミュは人見知りするタイプではない。
問題があるとすれば、恐らくプロミスの方――。癖のある人物と推定できる。
「くしゅんっ」
不意に、くしゃみをする『ディアナ』。熾天使が風邪を引くとは珍しい――。
「どうした?」
「ぁー。なんかね、誰かが噂してるっぽいの」
「そんな事がわかるのか? どーなってんだお前」
「どーもこーもないっ! そんな言い方すんなっ」
「……ふふっ。さ、急ぎましょう」
「あぁ、……だな」
タタタ――っ。
セレスに促され、コンコースへと急ぐ一行――。

見回りから返った直人を、楓が出迎えてくれた。
深夜、寝静まった床の間で、直人はヘンテコな夢で眼が覚めてしまった。
月明かりに照らされた床の間で、隣から心配そうに覗き込む楓が見えた。
「どうしたの? うなされてたけど」
「ぅーむ……。変な夢を見た……」
「へぇ。どんな夢?」
「その、なんだ、……何でもないよ」
「ぇー? 気になるなぁ。教えて?」
「いや、あまり思い出したくはないんだが、……各地を旅していた」
「各地って、……どこ?」
「うーむ……アレは、……世界旅行、……になるのかな?」
言葉を濁す直人。楓が興味津々に身をのりだす。
「美術館を鑑賞したり、豪華客船でディナーを食べたり、セーヌ河を渡ったり……
「へぇー、面白そう。楓もいつか世界旅行に行ってみたいなぁ……」
「……何時でもいいが? お前さえ良ければ、連れて行ってやるけど」
その言葉に、楓が白い顔を輝かせる。
「えーほんと? わぁやったぁーっ! で、何時行くの?」
「ゾンビの群れが収まったら、……て事に、なるのかな?」
「えー? 何それ。ゾンビなんてなんで居るのー?」
実際、何時になるやら、永久にこのままかもしれない――。
「知るかよ。こっちが聞きたいくらいだ。だが、恐らく……」
一呼吸置くと、おもむろに直人が言葉を紡ぐ。
「冥府の王、ハデスが関与している事は間違いがなさそうだ、という事と、……」
「ハデス? やだぁ、誰それ。怖いおじさんか何か?」
失笑する直人。結界内の初老の男だが、決して怖くはなかった。むしろその逆――。
「楓、お前はこれから一つずつ知らなければ。この世界で生き抜く為に必要な事なんだ」
「……ぅ、ぅん……」
神妙な面持ちの楓が、ごくりと生唾を呑む。
「今、この世界は新旧あらゆる神々が抗争を広げている最中の様なんだ……」
静謐の中、従容と言葉を紡ぐ直人。
「で、俺たちは、世界中の人々は、皆、奴らの抗争に巻き込まれている。……事になる」
「ぇー、なにそれ。怖い。神々? 、ってどんな人達なの?」
「お前、覚えてないか? 一緒に居た黒い制服を着た男が居たろ? あんな感じだ」
「普通の優しそうなお兄さん、て感じだったけれど?」
一瞬、ジュンの姿が直人の心中を過った。楓に優しい眼差しを向ける。
「一見、普通の人間に受肉しているんだ。だが中身は別物で、変な力を備えている」
「変な力……?」
「オーラ、だとかそうだが、実は、それって人間にもあるんだ。霊気、というか」
楓が身を乗り出した。
「私にもあるの?」
「あぁ、まぁな。鍛えようによっては、お前も神々に近い所までいけるのかもな」
「ぇっ、ほんと? 私、やってみる!」
「……まぁ、その、……なんだ、がんばれ」
はぐらかす直人。正直、頑張って欲しくもなかった。
「で、さっきの世界旅行って、どんな感じだったの?」
「……? 興味あるのか? まぁ話半分で聞いてくれればいいから」
「ぅん。教えて?」
「……豪華客船で、ディナーを食べたンだが、料理の味が普通だった」

「え? ……それだけ?」
「上手いと思うだろ? 意外と普通の味だったよ。豪華客船のディナーは」
「意外と、って、お兄さま、豪華客船に乗った事はないの?」
「……別に乗る必要がなかったからね。海外旅行自体、余り経験がないね」
「ふぅーん。この山の周辺に棲みついているって、感じなの?」
「あぁ。そんなところだ。何といっても第二の故郷だ。護らなくてはな」
「今度からは一緒に護れるねっ」
喜々として答える楓。だが、幾つもの不安が残されている。
「……」
先ず、楓が何時また、何かの景気を切っ掛けに豹変するかもしれないという懸念。
この世界そのものの存亡すら、今は危うい。現状ゾンビの群れが跋扈している。
無事な場所もあるかもしれない。が、直人の見た限り、街中は壊滅状態だった。
「……」
全てリサーチした訳ではないが、世界には未だ無事な場所があるかもしれない。
安息地を求めて移動を繰り返すより、現状この要塞に留まる方が恐らく安全だ。
食料は山菜や野菜、獣などから調達できる。水源は、渓谷の河川を使えば良い。
発電はボイラー発電であり、問題ない。モバイルのみガソリンの調達が必要だ。
「……」
都市機能が麻痺すれば、ガソリンや石油加工品はじめ道具の入手も困難になる。
現代は自然を壊し過ぎた。縄文時代の頃の様に、自然回帰もいいかもしれない。

思案に耽っていると、直ぐ隣で楓の声がした。
「ねー。ディナー食べた後は、どーなったの?」
「え? あ、あぁ。……食べた後は、どーだったかな。確か演劇鑑賞して……」
「演劇? サーカスみたいの?」
無邪気な質問に、ふふっと微笑う直人。
「いや、俺が見たのはオーケストラだった。楽団が交響曲を演奏していたよ」
「ぅーん。それも退屈そう。演劇とかの方がぜったい愉しいよねっ」
「……そうかな。まぁ、ああいう娯楽は、そもそも資本家の退屈凌ぎだよな」
「退屈凌ぎででっかい船に乗れるなんて、羨ましぃーっ」
心底羨ましそうに、楓が無垢な声を弾ませる。
「飽きると思うよ。娯楽なんて大抵、最初だけで、直ぐに飽きが来るんだ」
「そーなんだ。飽きるものなんだね? 美味しい食事とかは飽きないけどな」
「はは。そうだな。食事は飽きないな。腹が減ったら食べたくなるもんな」
屈託なく笑う直人。楓との一時は新鮮味で溢れている。飽きがこない。
「飽きないって、何だろうな。普通は、続けていたらその内マンネリになる」
「好きなモノは飽きないんじゃない? 何が好きなのかは、わかんないけど」
素朴な疑問に、成る程と頷く直人。その視点は斬新だった。
「そうだな……。好きなモノは、……か。だったら、俺は……」
楓が好きだ――。その言葉をそっと胸に仕舞い込んだ。
「しかし妙だな。……なら、なんで夢にあの女が……」
「えー? 女って誰よぉー? 楓じゃないのぉー?」
「いや、実は、以前に色々と手助けして貰った女性が居てだな、……」
「ふーん。べつに、変な仲じゃないんでしょ?」
嫉妬だろうか――? 楓が、釘を刺す様な言い方をしてくる。
「もちろんだよ。別に特別な仲じゃない。恩人ってだけだよ」
「恩人って? どんな風に?」
しつこく聞いて来るのは、単に好奇心の裏返しだろうか。それとも――。
「お兄ちゃんな、お前に再会する前、色々な場所に行ってるんだ」
「えー? だって海外とか行った事ないって、さっき……」
「リアルではね。仮想の世界って言うのかな、異世界へは行ったんだよ」
「異世界……?」
「このリアルだって今じゃ立派にゾンビや異界の神々の跋扈する異世界だ」
「ぅー。まぁ言われてみれば……そうだけど。」
納得いかなげな楓に、やんわりと諭す様に説明する。

「夜の遊園地で観覧車に閉じ込められた」
「ぁはは。楓もそれ、一度やってみたい」
「カジノみたいな所では、警備員の格好をして脱走した」

「かっこいい。楓も見てみたかったなぁー」
「いいもんじゃないぞ。あんなの命懸けだ」
思い出すだけでも、辛い時間が鮮明に蘇る。だが、同時に――。
「……ベネチアの様な場所で、恐らくヴィットリオ橋を歩いた」

「へ? 鳥大橋?」
「似た様なもんだ。思い返すと、アレが初めての海外旅行だった気がする」
「へぇー。海外旅行羨ましいなぁー。でー、その恩人って誰?」
「……覚えてないか? 学園前で、一瞬だけ会っただろ?」
「え? あの王女さまみたいな格好した、紫色の髪の人?」
「……青い方だ。ディアナって子で……」
そこまで言って、胸が苦しくなり、直人は口を閉ざした。
「どうしたの? お兄さま……」
「いや、……何でもない」
こうしている間も、あの熾天使はあの動乱に立ち向かっているのだろう。
それに対して、自分は――。
◇青海大通り◇

キィィィ……――。砲身が眩い煌めきを放つ。
「――爆裂無反動砲(パンツァーファウスト)ッ!」
ドゴォォ――ッ!!
神霊砲弾をモロに浴びたビル群の一角が、爆発で木っ端に吹き飛んだ。
「ジュンっ! ちょっとノーコン過ぎんでしょっ!」
「あぁ。済まないッ、俺はこー見えて適当なんだッ」
「こー見えてって、どっから見ても適当に見えるけどっ」
タタタ――……。
言い争いながらもゾンビの只中を突っ切る一行。セレスの息が上がっている。

「大丈夫か、セレス」
「はぁ、はぁっ。え、えぇ……。少し休めば……」
固有結界を展開できる貴重な異星人の仲間ではあるが、体力が限界の様だ。
「お仲間ってやらは、何時頃到着する予定なんだ?」
ジュンの質問に、セレスが息をきらしながら答える。
「え、えぇ。駅で落ち合おうって事になったけど、……はぁ、はぁ」
「つまりこのまま駅まで進めば問題ないって事よねっ!?」
横から『ディアナ』があっけらかんと断言した。
「飛行機の操縦技術は確かなんだろうな?」
「プロミスは信用出来るわ。腕は問題ない」
「……プロミス?」
「あぁーっ! あの嫌味な野郎かぁあっ!」
「知ってるのか? カ、……ディアナ?」
コクンと頷くと、『ディアナ』は獰猛な牙を剥き出した。
「知ってるも何も、今度あったらコテンパンに叩きのめしてやるっ」
「そっか、……仲が悪いんだな」
嘆息するジュン。カミュは人見知りするタイプではない。
問題があるとすれば、恐らくプロミスの方――。癖のある人物と推定できる。
「くしゅんっ」
不意に、くしゃみをする『ディアナ』。熾天使が風邪を引くとは珍しい――。
「どうした?」
「ぁー。なんかね、誰かが噂してるっぽいの」
「そんな事がわかるのか? どーなってんだお前」
「どーもこーもないっ! そんな言い方すんなっ」
「……ふふっ。さ、急ぎましょう」
「あぁ、……だな」
タタタ――っ。
セレスに促され、コンコースへと急ぐ一行――。


