◇学園校舎前◇

「ぉーーーっい!」
タタタ――……。
小走りで駆け寄りながら、青い髪の少女が一行に向けて元気よく手を振る。
「……ディアナ?」
「お帰り……ふふ」
馴染みのある声に、ジュンが真っ先に顔を上げた。チラと一瞥するセレス。
「へぇー。面白そうな事やってんじゃん? ぁたしも混ぜてよぉー」
「あれぇ? ディアナちゃんじゃないですかぁ~。お久しぶりィ!」
――キラリ。
近寄って来るディアナの姿を確認した途端、安田が黒縁眼鏡を煌めかせた。
「ネコ撫で声出すなやぁ安田ァ。気色悪い奴っちゃのぅ~ッ!」
「ぜぇーぜぇー、……も、もう一本、……いざ、……尋常にッ」
泰然自若の振る舞いでいきり立つ安田を制止しつつ、対戦者を宥める下洗。
「もぅ相撲大会は終わりじゃ。殆ど体力残ってないじゃろが?」
「……くッ、……今度は、……今度こそは……、負けぬ……ッ」
悔しそうにガックリ頭を下げる褐色肌の男。稽古で既に体力は限界の様だ。
集う一同の環中に加わった青髪の少女が、つまらなさそうに唇を尖らせる。
「ぇー? なに? もぅ大会終わり~? つまんないのぉーっ」
「お前ェなら特別に一本だけ相手ェしてやっても構わんぞォ?」
一瞬、怯んだ様子をみせる『ディアナ』。騙されてはいないだろうか――。

「……ぇ? それは嫌かも。でもセレスとならヤりたいかな♪」
「いいからマワシをつけいッ! 特別に稽古つけちゃるけんッ」
オォオォオ――……。
太鼓ッ腹をポンと叩くと、威圧的な眼差しでカミュを見下ろす禿げの中年。
蔑むかの様な淀んだ視線を注がれ、カミュは静かに腹の底を煮え返らせる。
「……オッサン、いい度胸じゃん。後で泣いても知らないよ?」

「ひゃはッ、泣くんはどっちかのぅ~? 楽しみじゃわいッ!」
「良く回る口だよね、ほんと……。呆れてモノも言えないよっ」

ハラり――……。
ミニスカのホックを外すディアナ。下履き一枚になると、にたりと笑った。
「ティーバックなんだけど。これでマワシ代わりになるよね?」
「だ、駄目だよディアナちゃん、そんな大胆な事をしたら……」
「……えぇ度胸しとるのぅ小娘のガキャあ。折檻したるわあッ」
ぐぐ――……ッ。
狼狽える安田の忠告を他所に、蹲踞の姿勢から立ち合いに移る中年小太り。
その血走った血眼が、対面で構えるディアナの小ぶりな双乳に据えられる。
「……発気、……揚々ッ!」
トンッ――。ドガァッ!
拳で軽妙に砂を叩くと、立ち合い変化からの老獪なぶちかましが炸裂した。

ワイワイ――……。
流石というか、早速『ディアナ』はセレス一行と打ち解け合っている様だ。
誰とでも直に打ち解け会えてしまう。彼女の処世術には舌を巻くばかりだ。
――ザッ。
一行に歩み寄ると、直人は慣れ親しんだ知人の様なノリで軽く声をかけた。
「……よぉ。ジュン」
黒い学生服を着た長身の男が、興味なさげに切れ長の眼をこちらへ向ける。
「……あ、あぁ……」
直人の呼び掛けにジュンは意外にもあっさりと応じた。拍子抜けする直人。
「……」
オォオォオ――……。
屋上で襲撃した時の出来事が、つい昨日の事の様に直人の心中を過ぎ去る。
件のけんに関しては特に気にしていない様子。恨んではいないのだろうか。

「おいジュン。俺を、……覚えてるだろ?」
「……あぁ。天界でお前は手配中だからな」
「手配中だと? そう、……だったな……」
クックと肩を揺らして嗤う直人の鋭い双眸が、隣に立つ黒髪少女に向いた。
「お兄さま……?」
「ッ? ……何?」
おぉおぉお――……。
驚愕する直人。先程までの彼女とは様子が違う。今の彼女は、まるで――。
あの日、航空機の事故で恐らく死別した彼女と、雰囲気が、表情が瓜二つ。
「まさか、――楓、……なのか?」
「あぁ、やっぱりお兄さまだっ!」
「嘘、……いや、本当なのか……」
―― 十数年前のあの日 ――。
大勢の死傷者が確認された。が、妹の遺体をこの目で確認した訳ではない。
生存者は一名と報道されたが、確か他の行方不明者も数名程は居たはずだ。

――カチ……ッ。
直人の心中で、永らく止まっていた時計の秒針が、音を立てて動き出した。
(……しかし、今更……、いや、……無事で良かった……)
同時に、抱いてきた神々への怨嗟や憤りの感情が急速に衰えるのを感じた。
愛妹が生きていた。連中に復讐する正当な理由が、動機が、――もうない。
(……いや、……まだだ……。まだ、……終わってない……)
萎える闘争心を懸命に呼び起こす。まだ旅の途中だ。見届ける必要がある。
妹が理想の伴侶と安息を得るその日まで、彼女を護り、支えねばならない。
(……ッ)
―― 彼女に対する不安材料は他にもあった ――。
大きな鎌を自在に振り回す、あの以前の状態に戻ってしまう懸念があった。
別の某かにもし憑かれているなら、其れから彼女を救い出さねばならない。
(……ッ)
奪われた時は取り戻してやれないが、ここを起点に新たに築く事は出来る。
礎となり陰から支える事で、彼女の人生の再出発を手助けしてあげられる。
「ねぇ、ここ何処なの? 私たちって休暇で、確か親戚のお家に……」
「……ッ?」
ふと声を掛けられ、我に返った。傍で黒髪ツインテの少女が見上げている。
「いや、……アレから大分経ってる。お前は記憶を失っているんだよ」
「……ぇ? 記憶って、……兄さま、私、今まで記憶喪失だったの?」
「……ッ」
困惑を隠せない直人。楓の動揺ぶりは素だ。演技らしい素振りは一切ない。
ここは、彼女に正面から向き合う必要があるだろう。まだ幼い愛妹に――。
「お前、一度自分の身体を良く見てみろ。随分と成長しているだろ?」
「ぁっ、……そいやそぅだっけ。……何で気が付かなかったのかな?」
「状況が状況だったからな。周囲を見渡す心の余裕も無かったんだろ」
「ぅん、……そぅだねっ」
「……」
にっこり頷く楓の姿に、胸奥で鼓動が熱く打った。感情が呼び覚まされる。
懐かしく温かな感情が胸中に湧き上がる。自分が兄だという実感が蘇った。

「きゃんっ」
――バチィンッ!
豪快に肉を引っ叩く音が弾ける。呆れる一同の前で、公然折檻が行われた。
「げははッ、ガキャあ、このワシにようも減らず口叩きよったのぉッ」
「ぁはあっ! や、やめろつってんだろ、このキモい太鼓っ腹ハゲっ」
――バチンっ、バチィンっ!!
下洗の小脇に担がれた青髪の少女が、剥き出しの美尻を掌で叩かれている。
伸ばされたティーバックが陰部に食い込み、アイラインの全容が丸見えだ。
「す、凄いッ! さっすが御大、あのディアナちゃんを手籠めだッ!」
「げははッ、ワシに逆らう生意気なメス共は須らくこうなる運命よッ」
「ぎゃんっ、ひぁんっ」
――バチィイ――ッ! ぷしゅぅ――っ。
渾身の一振りが、『ディアナ』の陰部にヒット。途端に黄金水が飛沫いた。
「ぃぎ――っ? ……ふぁぁああ……んっ♡」
ぷしゃぁぁ――……。――ガクガク……。
鼻にかかった嬌声を撒き散らして、身体を小刻みに痙攣させる青髪の少女。
――ぐるん。
陰の核を力一杯に叩かれた快感で、舌を突き出し、白目を剥いて絶頂した。
「んっ、……ぉっ、ぉぉぉぉ、……ん……っ♡」
おぉおぉお――……。
ざわつく衆目の前で、口端から涎を流し恍惚の笑みを浮かべる青髪の少女。
「うぉッ!?」
血眼をギラつかせる中年の太鼓ッ腹男が、驚愕の面相で舌なめずりをする。
「ひゃはッ、マジかいやッ、こんガキャあ漏らしよったでぇッ!?」
「御大の勝ちだぁ! いやぁディアナちゃんの負けっぷり、いいッ」
「んん? ……ディアナ、……じゃないのか……。誰だあの女は?」

ワァァアア――……。
湧き立つ学園校舎前。辺りは一面、ゾンビの屍と瓦礫の山に覆われている。
「……ッ」
異様な盛り上がりをみせる場の状況をジト眼で一瞥し、ジュンは嘆息する。
恒例の、太鼓ッ腹担任と取り巻き眼鏡のコント・ショーには辟易していた。
青髪の少女も口では嫌がってはいるが、あのノリだ。傍観の一手に尽きる。
「あら、良いの? 貴方の友人が一介の人間に折檻されてますよ?」
「……いや、あの男はこの学園の担任だった男だ。……恩義もある」
セレスに諭されるも、敢えてそっぽを向くジュン。カミュには良い妙薬だ。

「ぉーーーっい!」
タタタ――……。
小走りで駆け寄りながら、青い髪の少女が一行に向けて元気よく手を振る。
「……ディアナ?」
「お帰り……ふふ」
馴染みのある声に、ジュンが真っ先に顔を上げた。チラと一瞥するセレス。
「へぇー。面白そうな事やってんじゃん? ぁたしも混ぜてよぉー」
「あれぇ? ディアナちゃんじゃないですかぁ~。お久しぶりィ!」
――キラリ。
近寄って来るディアナの姿を確認した途端、安田が黒縁眼鏡を煌めかせた。
「ネコ撫で声出すなやぁ安田ァ。気色悪い奴っちゃのぅ~ッ!」
「ぜぇーぜぇー、……も、もう一本、……いざ、……尋常にッ」
泰然自若の振る舞いでいきり立つ安田を制止しつつ、対戦者を宥める下洗。
「もぅ相撲大会は終わりじゃ。殆ど体力残ってないじゃろが?」
「……くッ、……今度は、……今度こそは……、負けぬ……ッ」
悔しそうにガックリ頭を下げる褐色肌の男。稽古で既に体力は限界の様だ。
集う一同の環中に加わった青髪の少女が、つまらなさそうに唇を尖らせる。
「ぇー? なに? もぅ大会終わり~? つまんないのぉーっ」
「お前ェなら特別に一本だけ相手ェしてやっても構わんぞォ?」
一瞬、怯んだ様子をみせる『ディアナ』。騙されてはいないだろうか――。

「……ぇ? それは嫌かも。でもセレスとならヤりたいかな♪」
「いいからマワシをつけいッ! 特別に稽古つけちゃるけんッ」
オォオォオ――……。
太鼓ッ腹をポンと叩くと、威圧的な眼差しでカミュを見下ろす禿げの中年。
蔑むかの様な淀んだ視線を注がれ、カミュは静かに腹の底を煮え返らせる。
「……オッサン、いい度胸じゃん。後で泣いても知らないよ?」

「ひゃはッ、泣くんはどっちかのぅ~? 楽しみじゃわいッ!」
「良く回る口だよね、ほんと……。呆れてモノも言えないよっ」

ハラり――……。
ミニスカのホックを外すディアナ。下履き一枚になると、にたりと笑った。
「ティーバックなんだけど。これでマワシ代わりになるよね?」
「だ、駄目だよディアナちゃん、そんな大胆な事をしたら……」
「……えぇ度胸しとるのぅ小娘のガキャあ。折檻したるわあッ」
ぐぐ――……ッ。
狼狽える安田の忠告を他所に、蹲踞の姿勢から立ち合いに移る中年小太り。
その血走った血眼が、対面で構えるディアナの小ぶりな双乳に据えられる。
「……発気、……揚々ッ!」
トンッ――。ドガァッ!
拳で軽妙に砂を叩くと、立ち合い変化からの老獪なぶちかましが炸裂した。

ワイワイ――……。
流石というか、早速『ディアナ』はセレス一行と打ち解け合っている様だ。
誰とでも直に打ち解け会えてしまう。彼女の処世術には舌を巻くばかりだ。
――ザッ。
一行に歩み寄ると、直人は慣れ親しんだ知人の様なノリで軽く声をかけた。
「……よぉ。ジュン」
黒い学生服を着た長身の男が、興味なさげに切れ長の眼をこちらへ向ける。
「……あ、あぁ……」
直人の呼び掛けにジュンは意外にもあっさりと応じた。拍子抜けする直人。
「……」
オォオォオ――……。
屋上で襲撃した時の出来事が、つい昨日の事の様に直人の心中を過ぎ去る。
件のけんに関しては特に気にしていない様子。恨んではいないのだろうか。

「おいジュン。俺を、……覚えてるだろ?」
「……あぁ。天界でお前は手配中だからな」
「手配中だと? そう、……だったな……」
クックと肩を揺らして嗤う直人の鋭い双眸が、隣に立つ黒髪少女に向いた。
「お兄さま……?」
「ッ? ……何?」
おぉおぉお――……。
驚愕する直人。先程までの彼女とは様子が違う。今の彼女は、まるで――。
あの日、航空機の事故で恐らく死別した彼女と、雰囲気が、表情が瓜二つ。
「まさか、――楓、……なのか?」
「あぁ、やっぱりお兄さまだっ!」
「嘘、……いや、本当なのか……」
―― 十数年前のあの日 ――。
大勢の死傷者が確認された。が、妹の遺体をこの目で確認した訳ではない。
生存者は一名と報道されたが、確か他の行方不明者も数名程は居たはずだ。

――カチ……ッ。
直人の心中で、永らく止まっていた時計の秒針が、音を立てて動き出した。
(……しかし、今更……、いや、……無事で良かった……)
同時に、抱いてきた神々への怨嗟や憤りの感情が急速に衰えるのを感じた。
愛妹が生きていた。連中に復讐する正当な理由が、動機が、――もうない。
(……いや、……まだだ……。まだ、……終わってない……)
萎える闘争心を懸命に呼び起こす。まだ旅の途中だ。見届ける必要がある。
妹が理想の伴侶と安息を得るその日まで、彼女を護り、支えねばならない。
(……ッ)
―― 彼女に対する不安材料は他にもあった ――。
大きな鎌を自在に振り回す、あの以前の状態に戻ってしまう懸念があった。
別の某かにもし憑かれているなら、其れから彼女を救い出さねばならない。
(……ッ)
奪われた時は取り戻してやれないが、ここを起点に新たに築く事は出来る。
礎となり陰から支える事で、彼女の人生の再出発を手助けしてあげられる。
「ねぇ、ここ何処なの? 私たちって休暇で、確か親戚のお家に……」
「……ッ?」
ふと声を掛けられ、我に返った。傍で黒髪ツインテの少女が見上げている。
「いや、……アレから大分経ってる。お前は記憶を失っているんだよ」
「……ぇ? 記憶って、……兄さま、私、今まで記憶喪失だったの?」
「……ッ」
困惑を隠せない直人。楓の動揺ぶりは素だ。演技らしい素振りは一切ない。
ここは、彼女に正面から向き合う必要があるだろう。まだ幼い愛妹に――。
「お前、一度自分の身体を良く見てみろ。随分と成長しているだろ?」
「ぁっ、……そいやそぅだっけ。……何で気が付かなかったのかな?」
「状況が状況だったからな。周囲を見渡す心の余裕も無かったんだろ」
「ぅん、……そぅだねっ」
「……」
にっこり頷く楓の姿に、胸奥で鼓動が熱く打った。感情が呼び覚まされる。
懐かしく温かな感情が胸中に湧き上がる。自分が兄だという実感が蘇った。

「きゃんっ」
――バチィンッ!
豪快に肉を引っ叩く音が弾ける。呆れる一同の前で、公然折檻が行われた。
「げははッ、ガキャあ、このワシにようも減らず口叩きよったのぉッ」
「ぁはあっ! や、やめろつってんだろ、このキモい太鼓っ腹ハゲっ」
――バチンっ、バチィンっ!!
下洗の小脇に担がれた青髪の少女が、剥き出しの美尻を掌で叩かれている。
伸ばされたティーバックが陰部に食い込み、アイラインの全容が丸見えだ。
「す、凄いッ! さっすが御大、あのディアナちゃんを手籠めだッ!」
「げははッ、ワシに逆らう生意気なメス共は須らくこうなる運命よッ」
「ぎゃんっ、ひぁんっ」
――バチィイ――ッ! ぷしゅぅ――っ。
渾身の一振りが、『ディアナ』の陰部にヒット。途端に黄金水が飛沫いた。
「ぃぎ――っ? ……ふぁぁああ……んっ♡」
ぷしゃぁぁ――……。――ガクガク……。
鼻にかかった嬌声を撒き散らして、身体を小刻みに痙攣させる青髪の少女。
――ぐるん。
陰の核を力一杯に叩かれた快感で、舌を突き出し、白目を剥いて絶頂した。
「んっ、……ぉっ、ぉぉぉぉ、……ん……っ♡」
おぉおぉお――……。
ざわつく衆目の前で、口端から涎を流し恍惚の笑みを浮かべる青髪の少女。
「うぉッ!?」
血眼をギラつかせる中年の太鼓ッ腹男が、驚愕の面相で舌なめずりをする。
「ひゃはッ、マジかいやッ、こんガキャあ漏らしよったでぇッ!?」
「御大の勝ちだぁ! いやぁディアナちゃんの負けっぷり、いいッ」
「んん? ……ディアナ、……じゃないのか……。誰だあの女は?」

ワァァアア――……。
湧き立つ学園校舎前。辺りは一面、ゾンビの屍と瓦礫の山に覆われている。
「……ッ」
異様な盛り上がりをみせる場の状況をジト眼で一瞥し、ジュンは嘆息する。
恒例の、太鼓ッ腹担任と取り巻き眼鏡のコント・ショーには辟易していた。
青髪の少女も口では嫌がってはいるが、あのノリだ。傍観の一手に尽きる。
「あら、良いの? 貴方の友人が一介の人間に折檻されてますよ?」
「……いや、あの男はこの学園の担任だった男だ。……恩義もある」
セレスに諭されるも、敢えてそっぽを向くジュン。カミュには良い妙薬だ。


