◇駅周辺の空◇

オォオォオ――……。
宙空から、淡いエメラルドグリーンの髪色をした可愛い少女が眺めている。
「にゃははっ♪ ハデスは仕事が遅いにゃ♪ 歳かにゃ?」
ヒュォォォ――……。
突風が少女の傍らにもう一体の少女の姿を象る。制服姿。利発的な顔立ち。

「チップス、貴女の洗脳の効果が弱かったとかじゃない?」
「にゃにゃ?」
来訪者の呼び掛けに、さして驚く様子もなく、飄々と迎え入れるチップス。

「にゃに。誰かと思えばエスタにゃん。何の用事かにゃ?」
「ほら、またたび持ってきたよ。お代わり自由だからね♪」
ガサゴソ、……――ス。
エスタと呼ばれた淡青色の髪の少女が、制服のポッケから巾着を取り出す。
「にゃにゃっ、またたびっ! ありがとにゃエスにゃんっ」
はぐぅぅっ――。
巾着袋から差し出されたまたたびに、半ば条件反射でむしゃぶりつく少女。
「うみゃぁあっ♪ 美味いにゃ~。わかってますにゃね~」
「そりゃそうよ。チップスとは長い付き合いなんだからさ」
「みゃみゃっ。はぐはぐ。みゃたたびっ、みゃたたびっ!」
はぐはぐっ――。
凄まじい喰いつきっぷりに、感嘆めいた吐息を漏らしつつ少女がきり出す。
「で、……進捗状況を確かめに来たんだけど。どぅなの?」
「にゃぁ。ゲートが開くのは、もう少しかかりそうにゃ♪」
はぐぅ――っ。
食べながら無邪気に笑うツインテール少女。その素性は混沌を齎す者――。
「心配ないにゃ。その為の下準備も進めてきたつもりにゃ」
「……以前捕獲した異星人からの抽出は、ほぼ終わった?」
数千年前、中枢に迷い込んだ異星人を捕獲済だ。情報は調べつくしてある。
「あらゆる生体情報は抽出完了にゃよっ。滞りにゃくっ♪」
はぐぅ――っ。
大事そうに持ったまたたびを口一杯に頬張りながら、チップスが胸を張る。
「……そぅ。ならアザトスの方は大体無力化出来るわね?」
「そうとも言えないにゃよ。不確定分子が一匹か二匹……」
言い淀むチップス。月の住人達の中にまだ未知なる力を隠し持つ輩がいる。
捕えた異星人の記憶を隅々まで覗いたが、特性は未だシークレットのまま。
「それよりもスーラ側にゃ。しぶとくて、減らんにゃよっ」
仲違いを諮り共倒れを企ててはみたが、スーラ側の脱落者は未だ少数――。
「スーラ側の方もちゃんと対策してあるよね、チップス?」
「にゃぁっ。色々とやってるにゃが、上手くいくかにゃ?」
オォオォオ――……。
肩を並べて権謀に没頭する二人。傍からは女学生の何気ない会話に見える。
「ガトゥガとハイドラの復活まで、まだ暫くかかりそうね」
「気長に待つにゃよ♪ 地上を更なるカオスにするにゃ♪」
にゃはは――っ。
謳い興ずる愉し気な萌え声が、陰鬱たる暗雲に覆われた寒空一面に弾けた。
◇学園校舎前◇

オォオォオ――……。
セレスの前に立ち尽くす三体の影。駅前へと急行した女子学生の姿はない。
立ち込める血と硝煙の匂い。辺り一帯にゾンビ軍団の屍が散らばっている。
「……」
ヴヴヴ――……。
結界内に埋没し、靄に覆われたセレスは、時折辛そうな表情を垣間見せる。
忽然と姿を消した事から、恐らく中にはディアナが幽閉されているハズだ。
「で、どうすんねやジュン坊。こないなとこに居ってもしゃあないで」
「ジュン君。彼女の事も心配ですが、待っていても埒があきませんよ」
キラリ――。
眼鏡を注意深く煌かせながら、安田がダミ声の担任への慎重な同意を示す。
「せやでジュン坊。ワシ等も早よ安全圏へ避難した方がえんちゃうか」
「……いや、ここで待つ方が安全だ。駅周辺は強い瘴気が漂っていた」
霊気で判る。ジャッカル、レディの神霊力は健在だ。今の所緊急性はない。
特に神魔衆と渾名す四大魔王は窮地に追い込まれる程その真価を発揮する。
「霊気ィ? ンなもん感じ取れるんか? なンか胡散臭いんやが……」
「下洗先生、ジュン君にこれまで助けて貰った恩もあるでしょ……?」
眼鏡が、すかさずフォロー。世渡りの何たるかをこの数時間で学習済みだ。
水と油の二人を上手に転がす……。修羅場を潜った事で匙加減も卒がない。
「ここは、彼を信じるべきでしょう。僕も色々と思う事がありますし」
「はぁ? 安田ぁ、お前がこの期に及んで何を考える事があるんじゃ」
「そりゃ色々と抱えてますよぉ~。下洗先生ィ~。解るでしょぉ~?」
凛々しい顔が一転、気持ちの悪い程の猫撫で声を絞り出す安田の真骨頂だ。
「げははッ、それもそうよのう! そいじゃ安田ぁ、一丁待つかッ!」
「そ、そうですねぇ先生。僕もそれが良いと思いますよ、へへッ……」
だははは――ッ。
後方で笑い合う二人を他所に、ジュンは慎重に固有結界の周波数を紐解く。

「んだよこれ、……ワケ解んねー……。複雑過ぎンだよ、ったく……」
――スゥ……っ。
ブツブツ小言を呟きながらセレスの周囲を取り巻く膜状の構造物に触れる。
「……ぅ、……くッ」
ヴォン――……。
再度の強烈なめまいがジュンを襲った。波長の違いがジュンの侵入を阻む。
が、ディアナが心配だ。神霊力からその正体は薄々勘付いてはいたが――。
「……ッ、……チッ」
久々に再会したリリスに気を取られ、場の状況もあり会話が出来なかった。
「駄目か、ンだよこれ……。シンクロさせないといけないのか……?」
ヴヴヴ――……。
波長を共鳴させる事で結界内に干渉が出来る様だが、正直、難易度が高い。
◇コンコース◇

オォオォオ――……。
橙色の髪を手で払いながら、アテナが声を張り上げてコズエに要求をする。
「異星人っ! 今からでも間に合うかもよ? 交渉に応じなよっ!」
「……貴女達と交渉するつもりはないのだけれど。駄目かしら……」
チャキッ――。
刀剣の柄が鳴る。無造作に構えるコズエの眼は、標的を刃圏に補足済みだ。
「私達に協力すれば少なくとも貴方たち異星人は無事に済むかもぉ」
「……却下。問題外ね。やはり貴女達は、一度殲滅する必要がある」
数千年前の平和条約の締結さえなければ、今頃は地底も開拓していたハズ。
それをしなかったのは上層部の恩情だと思っていたが決定違いだった様だ。
「今からでも間違いを糺すのに遅くはない。むしろ好機だと思うわ」
「へぇ。言ってくれるじゃない。糺されるのはどっちの方かしら?」
チャキ――っ。
神具メデューサを構えるアテナ。照射した対象物を強制的に石化する銃だ。
「お互いに争わなきゃいけない運命の様ね? なんだか残念だわァ」
ピシピシ、ボゴォ――……。
微かな地響きを伴って、コズエの後方の地表に放射状の亀裂が奔ってゆく。
「……はぁ」
見え透いた古典的手法に嘆息するコズエ。通ずると思っているのだろうか。

オォオォオ――……。
やや離れた距離から遠巻きに諍いを見守る二つの影。二人とも満身創痍だ。
「義姉さん、アイツぁ確か以前俺を半殺しにした熾天使じゃねーか」
ギリ――ッ。
歯噛みするジャッカル。嘗てコズエにやられた苦い記憶が尾を引いている。
「ぅむ。コズエという女、剣の技量は私が上だが、火力は奴だろう」
「一戦交えそうな塩梅だな。……俺達ぁこの機に休ませて貰おうぜ」
「ぅ、ぅむ……。お前も連戦で大変だな。何時も何時も、済まない」
何時になく殊勝なレディの労わりに、ジャッカルは思わず失笑を漏らした。
「らしくねェぜ、義姉さん。俺が勝手にやってるだけなんだからよ」
「そ、そうだな。私とした事が、おセンチになってしまっていたか」
柄にもなく取り繕うと、レディは照れを隠す様にして空々しく喚き散らす。
「ついでにハデスも屠って貰いたい所だが、今回は大目に見ようっ」
「……ッ」
わーはっはっは――。
引き攣り声が散らかったコンコースに空虚に響く。顔を背けるジャッカル。

オォオォオ――……。
戦況を遠巻きに見守る二群。一方のグループの片割れが、意気軒高と叫ぶ。
「アテナッ! そんな虫けら、とっとと始末して楽にしてやれッ!」
「っ。義兄さまは気楽なものね。この女の神力を知らないのかしら」
義兄のマルスは耄碌したハデスの介護に付きっきりで、戦闘を控えている。
気楽なモノだ。外野は何とでも言える。だが、対面して初めて脅威が解る。
この少女の、――スーツの紅い色は、夥しい返り血を浴び着色された色だ。
「気に病む事ないわ。どうせ直ぐあの世よ。ただ貴女が先ってだけ」
「……ふぇえ、凄い自信ね。何処から来るのかしら? 興味あるぅ」
――ゾォ……。
背筋に冷たい悪寒を感じながら、アテナは地下鉱石のモース強度を上げる。
「その減らず口も直ぐに叩けなくなるわ。だから心配しないでね?」
ピピピ――。(電子音)
地表の細微な変化は、眼内レンズ中の地形解析ツールによりサーチ済みだ。
「そのセリフ、そのまんまお返ししちゃうわぁっ、喰らぇえっ!」
『グオォ――……ォン』
ボゴォオオ――ッ。
咆哮。コズエの背後の地表が割れ、裂け目から岩石の巨大魔人が出現する。
――刹那――。閃光が奔った。

ガァンッ! ……ドゴォォオ――ッ!!
剣光が閃くと同時に破砕音が鳴り渡り、遅れ気味の爆発が大気を轟かせた。

オォオォオ――……。
宙空から、淡いエメラルドグリーンの髪色をした可愛い少女が眺めている。
「にゃははっ♪ ハデスは仕事が遅いにゃ♪ 歳かにゃ?」
ヒュォォォ――……。
突風が少女の傍らにもう一体の少女の姿を象る。制服姿。利発的な顔立ち。

「チップス、貴女の洗脳の効果が弱かったとかじゃない?」
「にゃにゃ?」
来訪者の呼び掛けに、さして驚く様子もなく、飄々と迎え入れるチップス。

「にゃに。誰かと思えばエスタにゃん。何の用事かにゃ?」
「ほら、またたび持ってきたよ。お代わり自由だからね♪」
ガサゴソ、……――ス。
エスタと呼ばれた淡青色の髪の少女が、制服のポッケから巾着を取り出す。
「にゃにゃっ、またたびっ! ありがとにゃエスにゃんっ」
はぐぅぅっ――。
巾着袋から差し出されたまたたびに、半ば条件反射でむしゃぶりつく少女。
「うみゃぁあっ♪ 美味いにゃ~。わかってますにゃね~」
「そりゃそうよ。チップスとは長い付き合いなんだからさ」
「みゃみゃっ。はぐはぐ。みゃたたびっ、みゃたたびっ!」
はぐはぐっ――。
凄まじい喰いつきっぷりに、感嘆めいた吐息を漏らしつつ少女がきり出す。
「で、……進捗状況を確かめに来たんだけど。どぅなの?」
「にゃぁ。ゲートが開くのは、もう少しかかりそうにゃ♪」
はぐぅ――っ。
食べながら無邪気に笑うツインテール少女。その素性は混沌を齎す者――。
「心配ないにゃ。その為の下準備も進めてきたつもりにゃ」
「……以前捕獲した異星人からの抽出は、ほぼ終わった?」
数千年前、中枢に迷い込んだ異星人を捕獲済だ。情報は調べつくしてある。
「あらゆる生体情報は抽出完了にゃよっ。滞りにゃくっ♪」
はぐぅ――っ。
大事そうに持ったまたたびを口一杯に頬張りながら、チップスが胸を張る。
「……そぅ。ならアザトスの方は大体無力化出来るわね?」
「そうとも言えないにゃよ。不確定分子が一匹か二匹……」
言い淀むチップス。月の住人達の中にまだ未知なる力を隠し持つ輩がいる。
捕えた異星人の記憶を隅々まで覗いたが、特性は未だシークレットのまま。
「それよりもスーラ側にゃ。しぶとくて、減らんにゃよっ」
仲違いを諮り共倒れを企ててはみたが、スーラ側の脱落者は未だ少数――。
「スーラ側の方もちゃんと対策してあるよね、チップス?」
「にゃぁっ。色々とやってるにゃが、上手くいくかにゃ?」
オォオォオ――……。
肩を並べて権謀に没頭する二人。傍からは女学生の何気ない会話に見える。
「ガトゥガとハイドラの復活まで、まだ暫くかかりそうね」
「気長に待つにゃよ♪ 地上を更なるカオスにするにゃ♪」
にゃはは――っ。
謳い興ずる愉し気な萌え声が、陰鬱たる暗雲に覆われた寒空一面に弾けた。
◇学園校舎前◇

オォオォオ――……。
セレスの前に立ち尽くす三体の影。駅前へと急行した女子学生の姿はない。
立ち込める血と硝煙の匂い。辺り一帯にゾンビ軍団の屍が散らばっている。
「……」
ヴヴヴ――……。
結界内に埋没し、靄に覆われたセレスは、時折辛そうな表情を垣間見せる。
忽然と姿を消した事から、恐らく中にはディアナが幽閉されているハズだ。
「で、どうすんねやジュン坊。こないなとこに居ってもしゃあないで」
「ジュン君。彼女の事も心配ですが、待っていても埒があきませんよ」
キラリ――。
眼鏡を注意深く煌かせながら、安田がダミ声の担任への慎重な同意を示す。
「せやでジュン坊。ワシ等も早よ安全圏へ避難した方がえんちゃうか」
「……いや、ここで待つ方が安全だ。駅周辺は強い瘴気が漂っていた」
霊気で判る。ジャッカル、レディの神霊力は健在だ。今の所緊急性はない。
特に神魔衆と渾名す四大魔王は窮地に追い込まれる程その真価を発揮する。
「霊気ィ? ンなもん感じ取れるんか? なンか胡散臭いんやが……」
「下洗先生、ジュン君にこれまで助けて貰った恩もあるでしょ……?」
眼鏡が、すかさずフォロー。世渡りの何たるかをこの数時間で学習済みだ。
水と油の二人を上手に転がす……。修羅場を潜った事で匙加減も卒がない。
「ここは、彼を信じるべきでしょう。僕も色々と思う事がありますし」
「はぁ? 安田ぁ、お前がこの期に及んで何を考える事があるんじゃ」
「そりゃ色々と抱えてますよぉ~。下洗先生ィ~。解るでしょぉ~?」
凛々しい顔が一転、気持ちの悪い程の猫撫で声を絞り出す安田の真骨頂だ。
「げははッ、それもそうよのう! そいじゃ安田ぁ、一丁待つかッ!」
「そ、そうですねぇ先生。僕もそれが良いと思いますよ、へへッ……」
だははは――ッ。
後方で笑い合う二人を他所に、ジュンは慎重に固有結界の周波数を紐解く。

「んだよこれ、……ワケ解んねー……。複雑過ぎンだよ、ったく……」
――スゥ……っ。
ブツブツ小言を呟きながらセレスの周囲を取り巻く膜状の構造物に触れる。
「……ぅ、……くッ」
ヴォン――……。
再度の強烈なめまいがジュンを襲った。波長の違いがジュンの侵入を阻む。
が、ディアナが心配だ。神霊力からその正体は薄々勘付いてはいたが――。
「……ッ、……チッ」
久々に再会したリリスに気を取られ、場の状況もあり会話が出来なかった。
「駄目か、ンだよこれ……。シンクロさせないといけないのか……?」
ヴヴヴ――……。
波長を共鳴させる事で結界内に干渉が出来る様だが、正直、難易度が高い。
◇コンコース◇

オォオォオ――……。
橙色の髪を手で払いながら、アテナが声を張り上げてコズエに要求をする。
「異星人っ! 今からでも間に合うかもよ? 交渉に応じなよっ!」
「……貴女達と交渉するつもりはないのだけれど。駄目かしら……」
チャキッ――。
刀剣の柄が鳴る。無造作に構えるコズエの眼は、標的を刃圏に補足済みだ。
「私達に協力すれば少なくとも貴方たち異星人は無事に済むかもぉ」
「……却下。問題外ね。やはり貴女達は、一度殲滅する必要がある」
数千年前の平和条約の締結さえなければ、今頃は地底も開拓していたハズ。
それをしなかったのは上層部の恩情だと思っていたが決定違いだった様だ。
「今からでも間違いを糺すのに遅くはない。むしろ好機だと思うわ」
「へぇ。言ってくれるじゃない。糺されるのはどっちの方かしら?」
チャキ――っ。
神具メデューサを構えるアテナ。照射した対象物を強制的に石化する銃だ。
「お互いに争わなきゃいけない運命の様ね? なんだか残念だわァ」
ピシピシ、ボゴォ――……。
微かな地響きを伴って、コズエの後方の地表に放射状の亀裂が奔ってゆく。
「……はぁ」
見え透いた古典的手法に嘆息するコズエ。通ずると思っているのだろうか。

オォオォオ――……。
やや離れた距離から遠巻きに諍いを見守る二つの影。二人とも満身創痍だ。
「義姉さん、アイツぁ確か以前俺を半殺しにした熾天使じゃねーか」
ギリ――ッ。
歯噛みするジャッカル。嘗てコズエにやられた苦い記憶が尾を引いている。
「ぅむ。コズエという女、剣の技量は私が上だが、火力は奴だろう」
「一戦交えそうな塩梅だな。……俺達ぁこの機に休ませて貰おうぜ」
「ぅ、ぅむ……。お前も連戦で大変だな。何時も何時も、済まない」
何時になく殊勝なレディの労わりに、ジャッカルは思わず失笑を漏らした。
「らしくねェぜ、義姉さん。俺が勝手にやってるだけなんだからよ」
「そ、そうだな。私とした事が、おセンチになってしまっていたか」
柄にもなく取り繕うと、レディは照れを隠す様にして空々しく喚き散らす。
「ついでにハデスも屠って貰いたい所だが、今回は大目に見ようっ」
「……ッ」
わーはっはっは――。
引き攣り声が散らかったコンコースに空虚に響く。顔を背けるジャッカル。

オォオォオ――……。
戦況を遠巻きに見守る二群。一方のグループの片割れが、意気軒高と叫ぶ。
「アテナッ! そんな虫けら、とっとと始末して楽にしてやれッ!」
「っ。義兄さまは気楽なものね。この女の神力を知らないのかしら」
義兄のマルスは耄碌したハデスの介護に付きっきりで、戦闘を控えている。
気楽なモノだ。外野は何とでも言える。だが、対面して初めて脅威が解る。
この少女の、――スーツの紅い色は、夥しい返り血を浴び着色された色だ。
「気に病む事ないわ。どうせ直ぐあの世よ。ただ貴女が先ってだけ」
「……ふぇえ、凄い自信ね。何処から来るのかしら? 興味あるぅ」
――ゾォ……。
背筋に冷たい悪寒を感じながら、アテナは地下鉱石のモース強度を上げる。
「その減らず口も直ぐに叩けなくなるわ。だから心配しないでね?」
ピピピ――。(電子音)
地表の細微な変化は、眼内レンズ中の地形解析ツールによりサーチ済みだ。
「そのセリフ、そのまんまお返ししちゃうわぁっ、喰らぇえっ!」
『グオォ――……ォン』
ボゴォオオ――ッ。
咆哮。コズエの背後の地表が割れ、裂け目から岩石の巨大魔人が出現する。
――刹那――。閃光が奔った。

ガァンッ! ……ドゴォォオ――ッ!!
剣光が閃くと同時に破砕音が鳴り渡り、遅れ気味の爆発が大気を轟かせた。


