◇青海市街地◇

タタタ――……。
青海駅前広場までもう少しの所で、大事な用事を思い出し、引き返す一行。
今のアリエスはワームホールを発動出来ない。走っての移動が必要となる。
「……ジュピター。一つ質問があるんだが、……今、ちょっといいか?」
隣を並走しながら話を振る。体力馬鹿のジュピターは息一つきらしてない。
「ぁん? んだよ藪から棒に。ディアナの事がそんな気になんのかぁ?」
「いや、……そもそもお前が転校してきた目的ってな、何だったんだ?」
天空雷子と称してのジュピターの転校。その当初の目的が今一つ掴めない。
侵略の下準備の為の斥候役として使役されたのか、他の狙いがあったのか。
「何かねー、来てみたかったから。地下暮らしに飽きちゃってさぁー?」
「……は? そんな理由なのか? 他に大義じみた名目はなかったか?」
「大義? んなもんある訳ねーだろ? ぁたいはお前に会いかったんだ」
「……俺に?」
タタ、……タッ――。
突然の告白に、ジュンが足を止めた。追走してきた一同も足並みを揃える。
「な、何やねん急に止まりおって。ワシ等の前であんまイチャつくなや」
「雷子さぁん。あんまりジュン君に変な事吹き込まないで下さいよぉ?」
――ザッ。
外野の騒音を無視して、ジュピターがジト眼を注ぐジュンの下に詰めよる。
「ずっと前から会いたかったんだよ。ユーノの眼や禁足事項がなきゃっ」
が、――。
ジュンの反応はピンと来ない。呆気に取られたキョトン顔を浮かべている。
「ジュピター。地上の世界ではストーカー規制法ッてモンがあってだな」
「あぁーーッ! このドアホッ。もったいない事言うなやジュン坊ッ!」
「ら、雷子さんっ、ぼ、ボクで良ければ、今すぐにお、お付き合いをっ」
わぁあぁあ――……。
嘆かわし気にフォローする側近の二人。戦力の減退は生死に関わってくる。
「へぇ~そーなんだ。でもそんな決まりさ、別に気にしなきゃ良くね?」
「まぁ確かにそうだが、ジュピター。今はそれどころでもないだろう?」
諭す様にして言い聞かせるジュン。今は、世界の存亡に関わる緊急事態だ。
早急に事に対処する必要がある。ジュピターの話を聞くのは後でも出来る。
「この場を無事に凌げば、俺達にも少しは気持ちの余裕が出来るだろ?」
「……ちぇっ。この際いい機会だと思ったんだけどな。まぁ解ったよっ」
意外と物分かりが良い。サバサバした解り易い性格はジュピターの利点だ。
「……ありがとうジュピター。早速だが、ディアナの救出を急がないと」
「アイツ等は平気だと思うけどな。再会すんのは数千年ぶりだっけか?」
「……そんなに経つのか?」
口を噤むジュン。喧嘩している様にも見えたが、確執でもあるのだろうか。
互いに仲が良かった様だが。何らかの因縁めいたモノを感じないでもない。
「……」
確信した事がもう一つ。ジュピターが上層部から何も知らされていない事。
彼女はその嘘偽りのない奔放な性格から、秘密を知らされていないと解る。
◇青海駅周辺◇

オォオォオ――……。
無人と化したコンコースは、血塗れのゾンビの屍と死臭で満たされていた。
「バッカスと、ケルベロスも倒すとはな……。正直見くびっておったわ」
スゥ――……。
宙に浮いていた初老の男が、まるで段差を下る様にして地表へ降りて来る。
「よもやワシが直々に相手せねばならぬとはな。久方ぶりに腕が鳴るわ」
コキ、コキッ――。
小首を軽く回すと、初老の男は古めかしい杖を二人の眼前に翳して構えた。
「ぬぅぅうう……ッ」
ゴォオッ――。
凄まじい妖気がコンコースに立ち込める。周辺エリア上空が靄に包まれた。
オォオォオ――……。
迎え撃つ黒ジャケットの男が、傍らの金髪麗人に怒声にも似た檄をかける。
「ぜぇ。……義姉さんッ、まだ、――いけそうかッ?」
「あ、あぁ。……私なら、だいじょう、……がふっ!」
――ビシャッ。
片膝をつくなり、吐血するレディ。ダメージの蓄積量は限界を超えていた。
「――義姉……ッ!」
ゴォオ――ッ。。
刹那、戦慄に瞠目するジャッカルの総身が、渦巻く灼熱の業炎に包まれた。
◇学園校舎前◇

タタタ――、タッ。
血の海と化した青凛学園の校舎前で、舞い戻ってきた一行の足が止まった。
「ッ!?」
「おいジュン、居たぞ、セレスだっ」
オォオォオ――……。
ジュピターが指で差し示す方角に、項垂れた一人の少女が突っ立っている。
その周囲は透明な靄状の膜で覆われており、外部の侵入を防いでいる様だ。
「ディアナの姿が、……見えないが……?」
「この雰囲気だと、どうも固有結界の中だろうな」
「……結界? セレスのか?」
何の為に封じ込める必要があったろうか。やはり異星人同士の仲違い――?
「まぁ放っときゃその内出て来んだろっ。それとも背負ってくか?」
「ッ? あぁ、いい考えだな。なら俺が背負ってくよ」
ザッ――。
結界内へと一歩近づいた時、めまいがした。内部は時空の流れがおかしい。

「無理だな。近づく事も難しい。どうやって解除すれば……」
「は? こんなのセレスが自分で解除するっきゃねーよ。ぁたいにゃ無理」
お手上げとばかり両手を頭上に掲げるジュピター。
「……なら、誰かがこの場に残って見張る必要があるな……」
「つーかお前、お友達が駅で待ってたんじゃなかったのかよ」
ジュピターが何時になく苛立っているのを感じる。
「……あぁ。ジャッカルが……」
言葉を濁すジュン。屋上での誘いを断ってから、相当な時間が経っていた。
「今から、駅に戻るとなると……、どれくらいかかる?」
「そりゃ一時間は悠にかかるでぇジュン坊。何しに戻ったんじゃ?」
「……いや、その……。」
ヌゥ――ッ。
小太りハゲの隣から、眼鏡男が不安げにジュンを覗き込む。
「ジュン君、駅にさえ行けば、ボク達、助かるんでしょ?」
「あ、あぁ。……かもな……」
煮え切らないジュンの態度に、いよいよジュピターが痺れをきらした様だ。
「お前ってさぁほんっと計画性ないよな? だから大丈夫つったじゃん」
「……あぁ、かもな……」
ジャッカルとレディは心配だ。が、それ以上にディアナの事が気になった。
何故だかは良く解らないが、彼女からはカミュに似た雰囲気を感じていた。
「まぁ安否確認が出来て良かったじゃん。んじゃ駅までレッツゴー♪」
「……お前、悪いが一人で行ってくれないか?」
「ぁん? んだそれ、ぁたいお前らの友達と何の関係もないんだけどっ」
素っ気なく拒否するジュピター。だが、今回のジュンは何時になく執拗だ。
「怒らないで聞いて欲しい。俺はコイツの傍に居なきゃいけないんだよ」
「はぁ? セレスの傍にお前がぁあ? なぁジュン、……舐めてンだろ」
ゴゴゴゴ――……。
総身に怒気を滲ませるジュピター。どうやら、怒りがピークに達した様だ。
「お前さ、ぁたいの事、――舐めてンだろっ!!」
「いや、……舐めてはいない。だが聞いてくれッ」
ガッ――。
ジュピターの両肩に手を叩き置くと、ここぞとばかりに熱弁を揮うジュン。
「これは貸しだ。いいか? 後でお前の言う事を聞いてやるから、な」
「……は? 本当だろーな? 聞いたかお前ら、言質とったからなー」
周囲をぐるりと見渡すジュピター。得心した中年ハゲと眼鏡が頻りに頷く。
「わかってますよぉアネゴぉお。ボク達もちゃんと聞きましたから~」
眼鏡が、気色の悪い猫撫で声ですかさず合いの手を入れる。同調する下洗。
「あぁワシ等に任せときッ。ちゃんとジュン坊には責任とらすさかい」
「……勝手に決めるなよ……」
ジュピターから逃げる様にして、調子づく二人の側近に批難の眼を向ける。

タタタ――……。
青海駅前広場までもう少しの所で、大事な用事を思い出し、引き返す一行。
今のアリエスはワームホールを発動出来ない。走っての移動が必要となる。
「……ジュピター。一つ質問があるんだが、……今、ちょっといいか?」
隣を並走しながら話を振る。体力馬鹿のジュピターは息一つきらしてない。
「ぁん? んだよ藪から棒に。ディアナの事がそんな気になんのかぁ?」
「いや、……そもそもお前が転校してきた目的ってな、何だったんだ?」
天空雷子と称してのジュピターの転校。その当初の目的が今一つ掴めない。
侵略の下準備の為の斥候役として使役されたのか、他の狙いがあったのか。
「何かねー、来てみたかったから。地下暮らしに飽きちゃってさぁー?」
「……は? そんな理由なのか? 他に大義じみた名目はなかったか?」
「大義? んなもんある訳ねーだろ? ぁたいはお前に会いかったんだ」
「……俺に?」
タタ、……タッ――。
突然の告白に、ジュンが足を止めた。追走してきた一同も足並みを揃える。
「な、何やねん急に止まりおって。ワシ等の前であんまイチャつくなや」
「雷子さぁん。あんまりジュン君に変な事吹き込まないで下さいよぉ?」
――ザッ。
外野の騒音を無視して、ジュピターがジト眼を注ぐジュンの下に詰めよる。
「ずっと前から会いたかったんだよ。ユーノの眼や禁足事項がなきゃっ」
が、――。
ジュンの反応はピンと来ない。呆気に取られたキョトン顔を浮かべている。
「ジュピター。地上の世界ではストーカー規制法ッてモンがあってだな」
「あぁーーッ! このドアホッ。もったいない事言うなやジュン坊ッ!」
「ら、雷子さんっ、ぼ、ボクで良ければ、今すぐにお、お付き合いをっ」
わぁあぁあ――……。
嘆かわし気にフォローする側近の二人。戦力の減退は生死に関わってくる。
「へぇ~そーなんだ。でもそんな決まりさ、別に気にしなきゃ良くね?」
「まぁ確かにそうだが、ジュピター。今はそれどころでもないだろう?」
諭す様にして言い聞かせるジュン。今は、世界の存亡に関わる緊急事態だ。
早急に事に対処する必要がある。ジュピターの話を聞くのは後でも出来る。
「この場を無事に凌げば、俺達にも少しは気持ちの余裕が出来るだろ?」
「……ちぇっ。この際いい機会だと思ったんだけどな。まぁ解ったよっ」
意外と物分かりが良い。サバサバした解り易い性格はジュピターの利点だ。
「……ありがとうジュピター。早速だが、ディアナの救出を急がないと」
「アイツ等は平気だと思うけどな。再会すんのは数千年ぶりだっけか?」
「……そんなに経つのか?」
口を噤むジュン。喧嘩している様にも見えたが、確執でもあるのだろうか。
互いに仲が良かった様だが。何らかの因縁めいたモノを感じないでもない。
「……」
確信した事がもう一つ。ジュピターが上層部から何も知らされていない事。
彼女はその嘘偽りのない奔放な性格から、秘密を知らされていないと解る。
◇青海駅周辺◇

オォオォオ――……。
無人と化したコンコースは、血塗れのゾンビの屍と死臭で満たされていた。
「バッカスと、ケルベロスも倒すとはな……。正直見くびっておったわ」
スゥ――……。
宙に浮いていた初老の男が、まるで段差を下る様にして地表へ降りて来る。
「よもやワシが直々に相手せねばならぬとはな。久方ぶりに腕が鳴るわ」
コキ、コキッ――。
小首を軽く回すと、初老の男は古めかしい杖を二人の眼前に翳して構えた。
「ぬぅぅうう……ッ」
ゴォオッ――。
凄まじい妖気がコンコースに立ち込める。周辺エリア上空が靄に包まれた。
オォオォオ――……。
迎え撃つ黒ジャケットの男が、傍らの金髪麗人に怒声にも似た檄をかける。
「ぜぇ。……義姉さんッ、まだ、――いけそうかッ?」
「あ、あぁ。……私なら、だいじょう、……がふっ!」
――ビシャッ。
片膝をつくなり、吐血するレディ。ダメージの蓄積量は限界を超えていた。
「――義姉……ッ!」
ゴォオ――ッ。。
刹那、戦慄に瞠目するジャッカルの総身が、渦巻く灼熱の業炎に包まれた。
◇学園校舎前◇

タタタ――、タッ。
血の海と化した青凛学園の校舎前で、舞い戻ってきた一行の足が止まった。
「ッ!?」
「おいジュン、居たぞ、セレスだっ」
オォオォオ――……。
ジュピターが指で差し示す方角に、項垂れた一人の少女が突っ立っている。
その周囲は透明な靄状の膜で覆われており、外部の侵入を防いでいる様だ。
「ディアナの姿が、……見えないが……?」
「この雰囲気だと、どうも固有結界の中だろうな」
「……結界? セレスのか?」
何の為に封じ込める必要があったろうか。やはり異星人同士の仲違い――?
「まぁ放っときゃその内出て来んだろっ。それとも背負ってくか?」
「ッ? あぁ、いい考えだな。なら俺が背負ってくよ」
ザッ――。
結界内へと一歩近づいた時、めまいがした。内部は時空の流れがおかしい。

「無理だな。近づく事も難しい。どうやって解除すれば……」
「は? こんなのセレスが自分で解除するっきゃねーよ。ぁたいにゃ無理」
お手上げとばかり両手を頭上に掲げるジュピター。
「……なら、誰かがこの場に残って見張る必要があるな……」
「つーかお前、お友達が駅で待ってたんじゃなかったのかよ」
ジュピターが何時になく苛立っているのを感じる。
「……あぁ。ジャッカルが……」
言葉を濁すジュン。屋上での誘いを断ってから、相当な時間が経っていた。
「今から、駅に戻るとなると……、どれくらいかかる?」
「そりゃ一時間は悠にかかるでぇジュン坊。何しに戻ったんじゃ?」
「……いや、その……。」
ヌゥ――ッ。
小太りハゲの隣から、眼鏡男が不安げにジュンを覗き込む。
「ジュン君、駅にさえ行けば、ボク達、助かるんでしょ?」
「あ、あぁ。……かもな……」
煮え切らないジュンの態度に、いよいよジュピターが痺れをきらした様だ。
「お前ってさぁほんっと計画性ないよな? だから大丈夫つったじゃん」
「……あぁ、かもな……」
ジャッカルとレディは心配だ。が、それ以上にディアナの事が気になった。
何故だかは良く解らないが、彼女からはカミュに似た雰囲気を感じていた。
「まぁ安否確認が出来て良かったじゃん。んじゃ駅までレッツゴー♪」
「……お前、悪いが一人で行ってくれないか?」
「ぁん? んだそれ、ぁたいお前らの友達と何の関係もないんだけどっ」
素っ気なく拒否するジュピター。だが、今回のジュンは何時になく執拗だ。
「怒らないで聞いて欲しい。俺はコイツの傍に居なきゃいけないんだよ」
「はぁ? セレスの傍にお前がぁあ? なぁジュン、……舐めてンだろ」
ゴゴゴゴ――……。
総身に怒気を滲ませるジュピター。どうやら、怒りがピークに達した様だ。
「お前さ、ぁたいの事、――舐めてンだろっ!!」
「いや、……舐めてはいない。だが聞いてくれッ」
ガッ――。
ジュピターの両肩に手を叩き置くと、ここぞとばかりに熱弁を揮うジュン。
「これは貸しだ。いいか? 後でお前の言う事を聞いてやるから、な」
「……は? 本当だろーな? 聞いたかお前ら、言質とったからなー」
周囲をぐるりと見渡すジュピター。得心した中年ハゲと眼鏡が頻りに頷く。
「わかってますよぉアネゴぉお。ボク達もちゃんと聞きましたから~」
眼鏡が、気色の悪い猫撫で声ですかさず合いの手を入れる。同調する下洗。
「あぁワシ等に任せときッ。ちゃんとジュン坊には責任とらすさかい」
「……勝手に決めるなよ……」
ジュピターから逃げる様にして、調子づく二人の側近に批難の眼を向ける。


