私は彼が叔母に感謝する言葉を聞き、ほっと安心して息を吐いた。何も言わなかったモーベット侯爵が私と違う令嬢が良いとは、言い出さなくて良かった。

 彼は二週間後には必ず誰かとは結婚せざるを得ない。

 それに、私はとりあえず一度は結婚して、周囲から掛けられる、どうにかして結婚して欲しいという無言の重圧から脱したい。

 こうして顔を合わせることになった私たち二人の利害は、きっと一致するはずよ。

「姪のレニエラは、以前の婚約者が……本人からは、なかなかに言い難いと思うから、私が代理で言うけれど本当にっ! 嫌な男だったのよ。なのに、この子が一方的に何もかも悪いと言いがかりをつけて、婚約を破棄したかっただけなの。だというのに! その後で社交界に悪い噂を振り撒いてね。だから、これまでに良い求婚者がなかなか現れなかっただけだから」

 叔母が姪の私をお勧めの商品のように、にぎにぎしく売り込むのを隣で黙って聞いていた。

 もしかしたら、貴族令嬢が婚約破棄されたと聞いて、パッと聞けば悲劇だと思う人も居るかもしれないけど、私本人にとってみれば、それは華々しい武勇伝に近い。