刺されてもアーロンは痛がらずにじっと耐えて反撃する機会を窺っていたけれど、ヒルデガードは痛みに弱いのか見苦しくのたうち回り、ひどい有り様だった。

「父が勘当したあの時から、お前は弟でもなんでもない……ああ。やばいな……目が、見えなくなって来た」

「アーロン? ああ!」

 唐突に倒れ込んだアーロンに、私は驚き慌てて彼の身体を支えた。

「悪い。顔をよく見せてくれ。最後に……」

「それ以上、何も言わないで!!」

 私の悲鳴交じりの高い声にアーロンは驚いているのか、死にかけているはずなのに、とても驚いている表情になった。

「ブランシュ……俺は」

 アーロンに遺言めいた言葉なんて、絶対に言わせない。私の自分勝手だって、いくらでも罵られても構わない。

「……諦めないで死なないで!! 私が死ぬまでは、絶対に生きていて欲しいの!!!」

「ブランシュ……?」

 アーロンは私が声の限りに叫んだ言葉に、驚いていた。

「もう……アーロンが生きていたらって思って生きるのは、嫌なの! 絶対に生きて!!」

「……悪かった。大丈夫だ。泣かないでくれ」