「はっ……夫婦で心中を選ばれるなら、別に構いませんよ。義姉上。こんな田舎の村で起こったことなど、どうにでもなる。村人全員殺しても良い。キーブルグ侯爵家の権力があれば、その程度……造作もないことだ」

「そんなこと……絶対に、させないわ」

「そのような、弱腰で……俺も軍人キーブルグ侯爵家の者ですよ。姉上。それなりの訓練も受けている。美しい女性を殺すのは、忍びないが、苛々するような口を聞く女は嫌いなので……」

 その時、私が持っていた剣を倒れていたアーロンが素早く動いて取り、私に向かってきたヒルデガードの腹を刺した。

「痛い……! 痛い! 酷いじゃないか。兄上!!」

 道にみっともなくのたうち回る弟の姿を見ながら、アーロンは私の前で座り込んだ。

「……うるさい」

 ……この、決定的な瞬間を迎え撃つために、何を言われても、じっと黙っていたんだ。

「……アーロン。大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。よくやった。ブランシュ。君は立派なキーブルグ侯爵家の人間だ。俺が認めたんだから、誰にも文句は言わせない」

「……兄上! あにうえ!! 助けてくれ!!」