◆ ◆ ◆
ある夢の一部、もしくは記憶の断片。
これがいつのことで、またどこの場所であるのかは相変わらず見当もつかない。ただ今回は、自分の記憶であるということを思い出せたからよかった。
それは、真っ白な雪景色。
高い常緑針葉樹が立ち並ぶ林の中に、ポカンとまるで秘密基地のように空いた空間があった。すべての木々の枝葉にはどっしりとした雪が乗り、地面の土色は一切見えない。
その中心部に、一人が佇んでいる。目を丸くし、口をぽっかりと開け、ただまっすぐに一点を見つめている。
あれは、自分だ。かつての自分だ。
「あれ、■■■?」
ぽつり呟いたのはとある人名。それは男性か、女性か、また何と言ったかまではわからない。きょろきょろとその場を見渡し、辺りを捜している。
「■■■、いるんでしょ? こんなとこにいたら風邪ひくよ?」
シン、とするその場はいやに静かであった。声はただ、白く冷たい雪の中へ、まるで吸い込まれるように消えてゆく。
足跡を辿って来たのだ。ただ『あの人』の足跡を。追いつきたくて、しかしなかなか追いつけない。もどかしく愛おしい、あの足跡を。
「■■■っ!」
愛おしいはずの名を叫び呼ぶ。不安を映すように眉尻はどんどん下がる。
そんな表情がかすかに見えたのをきっかけに、かつての自分を俯瞰視していた位置はサァッと後方へ遠ざかっていった。常緑針葉樹の合間を縫い、後ろへ後ろへとこの意識は引っ張られていく。不安気に叫び呼ぶかつての自分の姿は、そうして瞬く間に見えなくなる。
どうしてああなってしまったのだろう。早く、もっともっと思い出したい――記憶は夢の中で紡がれ、やがて滲むように思い出されていく。
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ある夢の一部、もしくは記憶の断片。
これがいつのことで、またどこの場所であるのかは相変わらず見当もつかない。ただ今回は、自分の記憶であるということを思い出せたからよかった。
それは、真っ白な雪景色。
高い常緑針葉樹が立ち並ぶ林の中に、ポカンとまるで秘密基地のように空いた空間があった。すべての木々の枝葉にはどっしりとした雪が乗り、地面の土色は一切見えない。
その中心部に、一人が佇んでいる。目を丸くし、口をぽっかりと開け、ただまっすぐに一点を見つめている。
あれは、自分だ。かつての自分だ。
「あれ、■■■?」
ぽつり呟いたのはとある人名。それは男性か、女性か、また何と言ったかまではわからない。きょろきょろとその場を見渡し、辺りを捜している。
「■■■、いるんでしょ? こんなとこにいたら風邪ひくよ?」
シン、とするその場はいやに静かであった。声はただ、白く冷たい雪の中へ、まるで吸い込まれるように消えてゆく。
足跡を辿って来たのだ。ただ『あの人』の足跡を。追いつきたくて、しかしなかなか追いつけない。もどかしく愛おしい、あの足跡を。
「■■■っ!」
愛おしいはずの名を叫び呼ぶ。不安を映すように眉尻はどんどん下がる。
そんな表情がかすかに見えたのをきっかけに、かつての自分を俯瞰視していた位置はサァッと後方へ遠ざかっていった。常緑針葉樹の合間を縫い、後ろへ後ろへとこの意識は引っ張られていく。不安気に叫び呼ぶかつての自分の姿は、そうして瞬く間に見えなくなる。
どうしてああなってしまったのだろう。早く、もっともっと思い出したい――記憶は夢の中で紡がれ、やがて滲むように思い出されていく。
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