清華国(しんかこく)の北に位置する小さな村。
 スディア村で俺は生まれ育った。

 スディア村は貧民が多い為、この村で暮らしている人々はボロボロの服を着ていたり、服が汚れていたり。

 村の両道に転々と老人が横になっていたりする光景はセルにとってはいつも通りの光景である。

「今日も仕事頑張っていきますか」

 そしてこの小さな村にある唯一の酒場で、俺は朝から夜まで働いていた。
 
「セル、おはようさん~! 今日も1日頼んだぞ」
「はい~! ラガルさん、今日もよろしくお願いします~」

酒場の店主のラガルは怖そうな外見とは裏腹にとても優しくて気さくな人だ。
 両親が亡くなってすぐ後に餓死にしそうになっていた所を俺はラガルさんに救われた。

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 あっという間に時間は過ぎて行き、俺は今日の業務を終え、酒場を出た。

「綺麗な夜空だなぁ……」

 見上げた夜の空はとても綺麗で、心の奥底にあった俺の張り詰めた心を溶かしてくれるかのようだった。

 両親が亡くなってからずっと一人で生きてきたせいか、いつからか一人でいることにも慣れてきてしまっていた。

「来月は誕生日かぁ」

 静かな夜の空気が漂う家に繋がるまでの道を歩きながら独り言のようにそう呟いた。
 俺の誕生日である7月20日を迎えたら俺はもう24歳だ。

 早いものだなと感じながら、もしも神様がいるのなら何かプレゼントが欲しいと思ってしまった俺は歩きながら夜の空を見上げて、心の中で強く願った。

『俺を必要としてくれる人に出会いたいと』

 そんな叶うこともないだろうと思っていた願いが叶うことになるとはこの時の俺は思ってもみなかった。

✳︎

 いつもより少し早くに目が覚めた俺はシウとリタがまだ寝ているテントから出て、朝の心地良い澄んだ空気に当たっていた。

「セル、おはよう!」
「あ、セナ~! おはよう」

朝の澄んだ空気の中、セナの声がセルの耳に届き、セルは振り返って明るい笑みを溢した。

「よく寝れた?」
「うん、寝れたよ~! セナは?」
「私もよく寝れたわ。あ、そういえば今日、セル、誕生日だったわよね?」
「え、あ、そういえばそうだった……!」

 思い出したように声を上げれば、セルの横に来たセナはくすくすと笑っていた。

「セルってば、忘れてたの?」
「うん、忘れてたよ~!」
「ふふ、セル、25歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとう! セナ」

 去年の24歳を迎えた誕生日の日に俺はセナ達と出会った。
 ずっと一人だった俺はセナ達と出会い、一緒に旅をしていく中で一人でいた時には感じなかった暖かさを知った。
 
「俺、セナと、ルソンにリクス。ルイア達と出会えてよかった」
「あら、嬉しいこと言ってくれるんじゃない」

 そう言い嬉しそうに笑うセナを見つめながら、俺はこれからもこの家族のような仲間達と共にいれますようにと願った。