シウが故郷であるロフィス村を出てから7日経った日の昼過ぎ頃。
 紅蘭国(こうらんこく)の南に位置する森の中にぽつんと建つ小さな家に辿り着く。

「ここが、父さんが若い頃、住んでいた家か」

 シウは木造で出来たクリーム色の小さな家を見上げて一人呟く。

 春の穏やかな風に背を押されて、シウはこれから暮らすことになるであろう家の中へと入る為、クリーム色のドアの前へと足を運び、父親であるサリスから渡された鍵でドアを開ける為、鍵穴に鍵を差し込みカチャカチャと回す。

 鍵が開き、キィという音と共にクリーム色のドアは開く。シウは開いたドアから家の中へと入り、家の中を見回す。

「外から見たら結構、小さく見えるが、家の中は結構広々しているな。それにしても埃凄いな……」

 シウの父親であるサリスがこの家で暮らしていたのはかなり前である為、家の中は埃が凄く、所々に蜘蛛の巣があり、見るからに綺麗だとは言えない状態であった。

「大掃除になりそうだなぁ」

 掃除があまり好きではないシウであったが、快適に生活する為にはやらなければならないことである。

 少しばかり面倒だなと感じながらもシウは自分自身に喝を入れる為、「やれば終わるし綺麗になる」と3回ほど唱えてから動き始める。

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 その日から毎日、毎日、シウは家の中の掃除を継続して行った。

 あまり好きではないと思っていた掃除もやり始めると熱が入り、綺麗ではなかった所が綺麗になっていくことに楽しさを感じ始めていた。

 そんなこんなで2週間が経ち、家の中は見違えるように綺麗になった。
 シウは嫌いになった家の中を見回して一息ついてから自身を褒め称える。

「よくやったな、俺。偉いぞ」

 シウはそう呟いてからそっと床に腰を下ろして、茶色い天井を見上げる。

「一人暮らしか……」

 此処に来てからまだ2週間しか経っていないが、これからは一人でこの家で生活していかなければならない。
 そう改めて意識すると少し寂しいなと感じてしまう。

「今まで家には父さんと母さんがいたから寂しいなんて感じたことはなかったな。この寂しさも慣れる時がくるのだろうか……」

 シウは暖かい日の光が差し込む静かな部屋で一人そう呟いた。

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「シウ~! ご飯できたよ」

 俺の名を呼ぶリクスの声が聞こえて、俺は立ちながら寄りかかっていた木から身体をそっと離し、リクスとセナ達がいる元へと足を運んだ。
 
「今日も美味しそうだな」
 
 白い布の上に並べられたリクスの手料理を見て、シウは「流石、リクスだな」と褒める。

「でも、シウも料理作れるじゃない?」
「まあ、作れるが。リクス程じゃないからなぁ……」
「あら、そうなの?」

 そう言ったセナはシウの真横に座るセナはリクスから受け取った茶碗に入った味噌汁を飲み始める。

 シウはこれからも共に旅をしていくであろう仲間達の顔を見つめながら優しい笑みを溢す。
 そんなシウとセナ達の姿をゆらゆらと揺れる焚き火が照らしていた。