天蘭王国の初代国王を守る盾であった者達。『天命の盾』と呼ばれていた彼らにはそれぞれ特殊な能力があった。
一人目は自分以外の人の過去の記憶を書き換えたり、過去を見ることが出来る天命の力を持つ者。
二人目は人の心を読み、これから先に起こす相手の行動や心意を先読みする天命の力を持つ者。
三人目は風、炎、大地、空、自然のあらゆる物を操ることが出来る天命の力を持つ者。
四人目は不老不死の身体と相手に幻聴と幻を見せることが出来る力を持つ者。
そんな四人の天命の盾である者達は初代国王が亡き後、姿を消した。
***
天蘭王国の西に位置する小さな村。
ロフィス村にて1人の青年が誕生日を迎えていた。
「シウ、お誕生日おめでとう。もう20歳か、早いものだな」
「ああ、そうだな」
朝起きるなり父親であるサリスにそう声を掛けられた俺は父親を見て頷き返す。
「今日はお前に話しておかなければならないことがある」
「話しておかなければならないこと?」
「ああ、そうだ」
真剣な顔をした父親を見てこれから何を話されるのかと少しばかり緊張しながらもシウは木製で出来た椅子に座り、父親が話し始めるのを待つ。
「お前には天命の力という不思議な力がある。
その力は俺にもあったが歳を取るにつれて、その力は徐々に消えていき、子供であるお前に受け継がれた」
「天命の力……?」
「ああ、初代国王に仕えていた天命の盾である者達が持っていた力だ。初代国王に仕えていた天命の盾の一人は私達の祖先に当たる」
父親から話されたことは天命の盾についてのことだった。
「シウ、お前の力は相手過去の記憶を書き換えたり、過去を見ることが出来る天命の力だ」
「過去の記憶を書き換え、過去を見ることが出来る力……」
シウは父親から教えてもらった自身の力を理解する。
そんなシウを見て父親は話を続ける。
「ここ最近、天命の力を持つ者がこの村にいると気づき始めた者がいてな。万が一お前に天命の力があると村の者に知られたら、利用されてしまう可能性もある」
「なるほど……」
「ああ、だから、シウ。お前はこの村を出ろ。少し早いが私がお前と同い年くらいの頃、暮らしていた家がある。これからはそこで暮らしてくれないか?」
父親からの問いにシウは迷うことなく頷き返す。
「わかった」
父親は村を出て一人で暮らすことを了承したシウを真剣な顔で見つめてから自身の思いを声にして伝える。
「シウ、これだけは忘れないでくれ。離れていてもお前は父さんと母さんの大切な子供だ。これから先、きっと大変なこともあると思うがシウ、お前ならきっと大丈夫だ」
父親からの言葉にシウは優しく笑い返した。
✳︎
翌日の早朝。
「シウ、気をつけて行くんだぞ」
「シウ、何かあったら帰ってきてもいいのだからね」
「ああ、わかった! 父さん、母さん、俺をここまで育ててくれてありがとう。元気でな」
シウは父親と母親に見送られロフィス村を発ったのであった。


