港を出て少し歩いたセナ達は紅蘭国へと繋がる西の森に入った。
夜空に浮かぶ星々が暗い森の中を照らす中、セナはルソンに声を掛ける。
「ルソン、少し散歩しない?」
「いいですよ~」
「リクス、ちょっとルソンとその辺歩いてくるわね」
「はーい、いってらっしゃい!」
リクスと天命の盾であるルイア達はセナとルソンを見送った。
森の中を歩き出して、皆がいる場所から少し離れてからセナは口を開く。
「城の外に出てから随分と長い時間が経ったような気がするわ」
「そうですね」
「ええ、天命の盾が集まった今、城へ戻るべきか、それともこのまま外の世界を知っていく為の旅を続けていくべきか悩んでいるの」
セナの思いを聞いたルソンは、少しでもセナの悩みを解消できるように護衛として思ったことを言葉にする。
「なるほど。未来に天蘭王国の王として姫さまが即位することになった時に、外の世界を見て知ったことはきっと姫さまの糧になると俺は思っていますよ」
「そうね、よし! 決めたわ」
セナは通った声でそう言い、足を止めて後ろにいるルソンを見つめる。
セナの顔に迷いはなかった。ルソンはそんなセナを見て優しく微笑み返す。
「ルソン、私、旅を続けるわ。本当は城に戻るべきなのかもしれない。だけど私はもっと外の世界を知っていきたい」
「はい! 俺は何処へでも着いて行きますよ。なんてたって俺は姫さまの護衛ですからね」
「ふふ、護衛であり私の幼なじみでしょう?」
「そうですとも!」
✤
麗らかな昼過ぎ頃、セナ達は紅蘭国へと繋がる森の中を歩いていた。
「リクスが作ってくれた昨日の夕飯、凄く美味しかったなぁ……」
「だろ? リクスの作るご飯は凄く美味しいんだ。男じゃなかったら嫁に貰いたいくらいだ」
ルイアとシウは昨日の夜、リクスが作った料理を思い出しながら会話していた。
そんなルイアとシウの背後を歩いていたセルとリタはシウとルイアの話しを聞いていたのか口を開く。
「はは、でもセナも料理上手いよね~!」
「そうなんですか?」
「まあ、リクスには劣るけどなぁ」
「ルソン、お前ねぇ…… これからもっと上手くなるから、見てなさいよ~!」
「はい、頑張って下さいね~! 姫さま」
セナの隣を歩くリクスはルソンとセナの会話を聞いて「ルソンは意地悪だね~」と言いながらセナの肩を優しくぽんぽんと叩き励ます。
「セナもこれからもっと上手くなると思うから一緒に頑張ろ!」
「ええ! リクス、これからも色々、教えてちょうだい」
「うん、いいよ!」
いつか城に帰るその日まで、私はううん、私達はこれからも外の世界を巡り行く。


