(水蓮)を目指して再び歩き始めた セナ達が(水蓮)へと辿り着いたのはティリスの都を出てから3日目の昼頃。

 (水蓮)へと辿り着いたセナ達は両道に立ち並ぶ出店を横目に見ながら歩いていた。

「美味しそうな匂いがするね~」
「そうだな、お昼にしますか?」
「そうね、そうしましょう」
「何処で食べようか? うっわ…!」

 セルが最後まで言い終わる前に、前方から歩いてきた白い服に黒のズボンを着ている男にぶつかる。

「あ、すいません……!」
「いえいえ、こちらこそ不注意ですいません」
「大丈夫ですよ」

 セルが男に謝れば、ぶつかってきた男も申し訳なさそうに頭を下げて謝ってくる。
 セルの後ろにいたシウ、ルイアはぶつかってきた男を見て何故か眉間に皺を寄せる。
 そんなシウとルイアの二人を見た男は何かに気付いたようにはっとした顔をする。

「もしかして……天命の力を持っていますか?」
 
 男はセナ達を見てそう問い掛けてくる。
 セナはそんな男の問いに答える為に口を開く。

「ええ、まだ自分の力のことをよくわかっていないけれど、天命の力を持っているわ」
「やはりそうでしたか。貴方が天命の盾の主となるお方なんですね」
「ええ」

 そんなセナと男の会話を聞いていたセルはセナの目の前にいる男を見て口を開く。

「立ち話もなんだし、何処か場所を変えて話さない?」
「そうですね」
「じゃあ、行きましょうか」

 セルにそう言われリタは頷き返し、セナ達と共に歩き始める。



 セナ達はリタと共に(水蓮)にある居酒屋に入り、席に座って話し始める。

「まだ名乗っていなかったわね。私はセナっていうわ。天蘭王国の第一皇女だけれど、今は理由あって城から出ているの」
「俺はルソンだ。姫さまの専属護衛やってます」
「俺はリクスっていうよ~」

 セナ、ルソン、リクスの自己紹介に続いて天命の盾であるルイア、セル、シウの三人も自己紹介し始める。
 
「天命の盾の内の一人だ。ルイアっていう。よろしくな」
「俺も天命の盾の内の一人だよ~! セルっていうから、好きなように呼んでね~」
「天命の盾のシウだ。よろしく」
「はい、よろしくです。俺はリタっていいます!」

 リタと名乗った最後の天命の盾の一人である青年。
 セナは茶色のテーブルを挟んだ目の前に座るリタに気になっていたことを聞くことにした。

「ええ、気になったのだけど、私が天命の力を持っていることを知っているような感じだったわよね? わかっていたの?私がこの村に来るってこと」
「はい。セナ姫様、私は貴方がこの村にやって来ることを知っていました」
「知っていた?」

 自分達がこの村にやってくることを知っていたと言うリタにセナは首を傾げる。

「はい、多分、私以外の天命の盾の皆さまも同じく知っていたのではないでしょうか? セナ姫様が来ることを」
「ああ、リタ、お前の言う通り俺達もセナが来ることを知っていた」 

 リタの問いの言葉にルイアは同調する。
 そう、リタ以外の天命の盾達もセナ達が自分達の元にやって来ることを知っていたのだ。

「そうなのね。ねえ、リタ、私達と一緒に来てくれないかしら?」

 セナはセルの顔を見つめて優しい声色で告げる。
 セルはそんなセナの誘いに断るつもりなどさらさらなく迷いなく答える。

「はい、一緒に行かせてください」
「じゃあ、これからよろしくね、リタ」
「はい、よろしくお願いします!」

 その日の夕方頃。
 セナ達は最後の天命の盾の一人であるリタを仲間に加えて、(水蓮)を後にした。