1)0:01~(伊草マツヨ)
さぁ、みなさん、こんばんは。
夏の間7回にわたってお送りするこちらの番組「夏の恒例! 怪談師・伊草マツヨと心霊エピ語っちゃおう特番」も、早いものでもう4回目となります。
今回も応募フォームに様々な心霊エピをお送りいただきましてありがとうございます。もう毎回ね、全国各地にこんなに心霊体験した人が居るのねってびっくりするぐらいお便りいただけまして。心霊好きとしては非常にほくほくしておりますよ、えぇ。
ちなみに毎回言ってますが「エピ」は「エピソード」の「エピ」ですからね。省略してるのは可愛いからですよ。可愛げって大事だもの。ねぇ。
さてさて。そんな多数いただいた中からスタッフさんと厳選しましてね。今回は5通ほど読ませていただこうと思います。
まず1通目。こちらなんと、この特番史上初めてかもね、心霊写真のエピソードです。「え~マツヨさんラジオで心霊写真の話してもわかんないよ~」って思われるかしらね?
でもねこちら、お話がとってもゾワゾワなんです。写真も添付してくださってるんですけどね、もう見た瞬間スタッフさんと「えっ」て野太い声で叫んじゃった。
じゃあ、まずはお便りを読みますね。
2)1:34~(お便り①)
マツヨさん、こんばんは。去年偶然この特番を聴いて以来マツヨさんのファンです。可愛い口調で声がバリトンなの最高です。
マツヨさんは一昔前に流行した招待制のSNS「ともマーチ」をご存知でしょうか。
リアルタイムで短い文章を投稿しタイムラインを作る機能があったり、長い文章を投稿できる日記機能があったり、写真だけを管理するアルバム機能があったり……と、機能自体は今主流になっているSNSとあまり変わらないと思います。いまだに完全招待制なのが、唯一他と違うところでしょうか。
その「ともマーチ」が流行したころ、僕は大学生でした。大学内でもかなり広まっていて、アカウントを持っていない人は身の回りに居ないというレベルでした。
社会人になった今では他のSNSをメインで使うようになり「ともマーチ」のことはすっかり思い出になっていたのですが、ふと、大学時代に使っていたパソコンを立ち上げたらブックマーク欄にWeb版「ともマーチ」のURLが残っているのを見つけちゃって。
アカウントってまだ生きてるのかなぁと気になって記憶を頼りにIDとパスワードを打ち込んだら、ログインできちゃったんですよね。自分の記憶力にびっくりしました。
いざログインしたらもう、懐かしい思い出が次々出てきて。当時の自分や友達たちの投稿が色鮮やかに表示されている画面が、嬉しくて嬉しくて。思わずそのスクリーンショットをみんなに送り付けました。
その日のうちに、一人から返信がありました。同じサークルで副部長をしていた女性です。
「懐かしいね。私もうIDもパスワードもわからなくなっちゃったから、自分のページ見られないんだよ。最後に投稿したのが心霊写真だったことは覚えてるのに」
僕は「そんなのあったっけ」と気になり「ともマーチ」の彼女のホーム画面に飛びました。
彼女は日記機能をメインに使っていて、確かに一番最後の投稿のタイトルは「親が心霊写真撮ってきたんだけど」でした。
ここから先は、彼女と、この写真を撮影した彼女のお母さんに許可を取った上で転記させてもらった、彼女の日記全文です。
3)4:42~(撮影者の娘の日記部分)
見て。ねぇちょっと、見て。
親が心霊写真撮ってきたんだけど。
どこかの会社のさ、一泊二日の観光ツアーに参加して九州のほうに行ってたんだけどさ。
そのお土産が心霊写真って何なの~!
この写真が我が家のデジカメに残ってるって状況も怖いけど、消すのもなんだか怖い。
前にどこかで「みんなで見たら恐怖が分散する」って聞いた気がするから分散させて。写真は一番下に貼っておくから見たくない人は今のうちにブラウザバックしてね。予告したからね。
この写真を撮った時、お母さんは高速道路を走るバスの中から山を撮ろうとしたんだって。九州から帰ってくる途中にある、島浜あたりの山。
ガイドさんが「幕末時代の有名なエピソードがある山です」って紹介したから、とりあえず撮っておこうと思ったみたい。
ウチのお母さん、写真撮るの大好きだしこだわりもあるから、デジカメのレンズを窓にぴったりくっつけて、窓に反射した車内の景色が映りこまないように工夫したんだって。確かにいつもそれやってる。
私も同じ撮り方をするから知ってるんだけど、そうやって撮ったら窓の外だけが綺麗に撮れるんだよ。ガラスの厚みによっては変わるかもしれないけど、バスの窓ぐらいの薄さだったら他のものや車内は絶対に写り込まないはずなんだよ。
でも撮れた写真には、ありえない人間が写ってる。
見てこれ。まるで山の上に大きな男の人が寝そべってるみたい。
顎から下の上半身しか写ってないけど、たぶん左下が頭で、右上にお腹。たとえ車内が写り込んだとしても、走行中にこんな角度でべったり横になれるわけないじゃん。母曰く全員椅子は直角に起こしてたらしいし。
お父さんはこれを見て、この服はかなり前に流行したカジュアルな登山用の上着だって言ってた。色柄が特に特徴的で、襟の縁部分の柄がその当時の何かの記念の柄だったって。(万博開催記念とかオリンピック開催記念とか、そんな感じの何かの記念だったらしい。詳細はあやふや)
もうね、怖い。本当に怖い。みんな見て。私の恐怖分散させて。
デジカメ写真でもお祓いって取り扱い可能なんでしょうか……?
4)8:01~(お便り①)
転記はここまでです。最後の文章から二十行ぐらい空白があって、問題の写真が載っています。
それが、僕がフォームに添付した一枚目です。
マツヨさん、どう思いますか?
彼女のお母さんの証言が正しければ、こんな角度で山の上に人が写り込むことはなかなか難しいと、大人になった今の僕も思うのですが。
ちなみに、フォームにはもう一枚写真を添付しています。
なぜ僕が彼女の日記部分の転記だけでなく「ともマーチ」の話まで細かく書いたのかというと、この二枚目も問題だからです。
一枚目は「ともマーチ」のWeb画面のスクリーンショット。
二枚目はブラウザを通じてその画像をダウンロードしたもの。
同じ写真のはずなのに、同じパソコンで入手したはずなのに、入手経路が違うと、写真が異なって見えるんです。
マツヨさん。これはいったい何だと思いますか?
僕はいったい、何をダウンロードしてしまったんだと思いますか?
5)9:38~(伊草マツヨ)
……ということでね、お便りは以上です。
まぁね、もう、ゾゾっとしますよね。ゾワゾワです。今ブースの外でこのお便りを一緒に選んだスタッフさんが震えてました。
お便りの中でもある程度書かれてましたけどね、皆さんに分かりやすいよう、改めてお写真がどんなものか説明しますね。
まず一枚目。お便りくださった方がWeb画面をスクリーンショットして保存したほう。日記を書いたお友達のお母さまが撮影された、元々の写真ですね。
まず山が写っていますね。シルエットはなだらかで、豊かな山のようですが、ところどころ地滑りがあったのか木がない場所もあります。曇り空の下なので植物の色が濃いですね。ガラスの反射や窓の傷なんかは写り込んでいないので、言われなければバスの中から撮ったとは思わないですね、えぇ。
その山の上にね、はっきりと写っていますね。赤い服が。凹凸や丸みも感じるし、首や顎や手もしっかり見えるので、まぁ間違いなく、人ですねぇ、これ。
お便りにあったとおり、本当に山の上に大きな人が寝そべっているよう。でも灰色の空の部分にも写り込みがあるから、空や山っていう景色の上に別の次元がレイヤーみたいに一枚サッと挟まったみたいな感じね。こういう心霊の写り込みはね、けっこうあります。こんなに写真いっぱいにバーンと写ってるのは珍しいですけど。
そして、これも問題だとおっしゃってた二枚目ですね。
これはねぇ、あなた。いや、これもねぇ、うん。
お便りによると、こっちはブラウザからダウンロードした同じ写真。空と山はぴったり同じ景色なのに、上に写っている人物……【ガサガサというノイズのせいで不明瞭】……っていますね。
こういうのはちょっとあまり見ないですね。でも私原因がわかるんです。
これはね、決してブラウザのバグとか、SNSのサイトがおかしいとか、そういうことじゃないんです。これは怪異が現在進行形で……【怒鳴り声?のようなノイズのせいで不明瞭】……だからなんですね、うん。
お祓いはね、行ってもいいかもって思います。ただ撮影された方やご家族に今日まで何もなかったなら、忘れて過ごすことで影響を逃れられているような気はしますね。
つまりこれは撮影された方やカメラには憑いてないんです。場所ですね、場所。
にしてもこれは何かしらね。一枚目に写っている方も、二枚目で……【数秒間無音】……ちゃってる方々も、この体勢に理由があるのかしら。どうかしら。
大変興味深いお写真だったわ。送ってくださってありがとうございました。お便りをくださったラジオネーム・元平部員さんには番組から特性ステッカーをプレゼントいたします。日記のお友達と撮影者のお母さまの分も同封しますね、お渡ししてくださる?
それでは次のお便りに移りましょう。
【音声データ終了】

