八時五分発の電車のために
私は毎朝、十分以上の余裕をもってエスカレーターへ乗る。
理由はもうすぐ――ほら。
彼が下からあがって来るから。
頬が緩んでにやけるのを堪え、良い感じに微笑む。
隣り合う瞬間、どちらからとも無く会釈。
この一瞬が楽しみで。
まだ名前も知らない彼に私は今日もまた恋してる。


『すれ違う一瞬~another story~』

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