取材ノート:10月27日 晴
綾野紹子がレシピサイトにアップロードした、姑獲鳥の肉団子。
万病の薬だという謎のレシピ、
姑獲鳥は実在しない鳥だ。産女とも書く。
そして、綾野紹子が親しくしていた戸宮梨花が殺された。彼女は妊婦であって、遺体の一部が切り取られていた。
これらを繋ぎ合わせたとき、一つの不吉な直感が私の脳裏に生まれた。
姑獲鳥の肉、というのは。
もしかしたら、人間の肉なのではないだろうか。
人間の肉が滋養強壮にきく薬になる、という話は、古来より現在に至るまであちこちに存在する。
たとえば中国では、唐の時代、「本草拾遺」という医学の本に、薬の材料として人肉が記載されている。この本はベストセラーになり、人肉を薬として信じる人が多く出たらしい。それも、親が病気になった時に、子どもが自ら自分の肉を削いで薬として親に食べさせ、それが美談となったのだから驚きだ。
日本でも、江戸時代の処刑人である山田浅右衛門家は、処刑された罪人の肝臓や脳、胆嚢、胆汁などを原料とし、丸薬を製造して副業にしていた。これらは「人胆丸」などと呼ばれ、懐を大いに潤わせたという。
近代でも、1902年、東京都の麹町で少年が殺害され、尻の肉が持ち去られるという事件が発生した。その肉は、病人に薬膳として供されるために切り取られたのだ。
さらに2011年には、死産した赤子や乳幼児の死体から作られた粉末をカプセル錠剤にして韓国で販売した中国の業者の存在が明らかになった。人肉カプセルとして大いに紙面を騒がせたそれも、何故そんなものを作るのか、買う人間がいるのかといえば、滋養強壮にきく、という触れ込みだったからだ。
人肉を食材として扱うことは、あえて言うまでもないほど、当たり前のタブーである。
だが、決して治らぬ病に犯された人間にとっては、普通に手に入る食材でないからこそ、自分自身を救う最後の切り札のようにも思えるのだろう。
姑獲鳥の肉というのも、その比喩なのではないだろうか。
妊娠した女の肉に、なんらかの呪術的な力を見出して、それを人肉として自分で食らうことで、万能の薬だと思い込むことは、先の例からいってもあり得ることのように思える。
だがこれは、もちろん、荒唐無稽な単なる思い付きに過ぎない。
もしこの仮説が正しいのなら、綾野紹子は、友人であった戸宮梨花の肉を食べる目的で殺害したことになる。スーパーに並んだ獣の肉にさえ、死体の陳列だと拒否感を示していた彼女がそんなことをするだろうか。誰かに単なる推測としてぶつけるにはあまりにも重く、悪趣味な話だ。
綾野紹子がレシピサイトにアップロードした、姑獲鳥の肉団子。
万病の薬だという謎のレシピ、
姑獲鳥は実在しない鳥だ。産女とも書く。
そして、綾野紹子が親しくしていた戸宮梨花が殺された。彼女は妊婦であって、遺体の一部が切り取られていた。
これらを繋ぎ合わせたとき、一つの不吉な直感が私の脳裏に生まれた。
姑獲鳥の肉、というのは。
もしかしたら、人間の肉なのではないだろうか。
人間の肉が滋養強壮にきく薬になる、という話は、古来より現在に至るまであちこちに存在する。
たとえば中国では、唐の時代、「本草拾遺」という医学の本に、薬の材料として人肉が記載されている。この本はベストセラーになり、人肉を薬として信じる人が多く出たらしい。それも、親が病気になった時に、子どもが自ら自分の肉を削いで薬として親に食べさせ、それが美談となったのだから驚きだ。
日本でも、江戸時代の処刑人である山田浅右衛門家は、処刑された罪人の肝臓や脳、胆嚢、胆汁などを原料とし、丸薬を製造して副業にしていた。これらは「人胆丸」などと呼ばれ、懐を大いに潤わせたという。
近代でも、1902年、東京都の麹町で少年が殺害され、尻の肉が持ち去られるという事件が発生した。その肉は、病人に薬膳として供されるために切り取られたのだ。
さらに2011年には、死産した赤子や乳幼児の死体から作られた粉末をカプセル錠剤にして韓国で販売した中国の業者の存在が明らかになった。人肉カプセルとして大いに紙面を騒がせたそれも、何故そんなものを作るのか、買う人間がいるのかといえば、滋養強壮にきく、という触れ込みだったからだ。
人肉を食材として扱うことは、あえて言うまでもないほど、当たり前のタブーである。
だが、決して治らぬ病に犯された人間にとっては、普通に手に入る食材でないからこそ、自分自身を救う最後の切り札のようにも思えるのだろう。
姑獲鳥の肉というのも、その比喩なのではないだろうか。
妊娠した女の肉に、なんらかの呪術的な力を見出して、それを人肉として自分で食らうことで、万能の薬だと思い込むことは、先の例からいってもあり得ることのように思える。
だがこれは、もちろん、荒唐無稽な単なる思い付きに過ぎない。
もしこの仮説が正しいのなら、綾野紹子は、友人であった戸宮梨花の肉を食べる目的で殺害したことになる。スーパーに並んだ獣の肉にさえ、死体の陳列だと拒否感を示していた彼女がそんなことをするだろうか。誰かに単なる推測としてぶつけるにはあまりにも重く、悪趣味な話だ。


