途端に結子が口を尖らせる。
くるくると、フォークにパスタを巻き付けてい
た手を止め、蛍里を睨んだ。
「ねぇ、話聞いてる?」
「えっ?……っと、あれ……何でしたっけ?」
肩を竦めながら蛍里がそう答えると、結子は
「もう」と頬を膨らませ、再びフォークにパスタ
を絡め始めた。
「谷口さんの話。誰を呼んで、誰を呼ばない、
っていう線引きが難しいから、結婚式は本社の
女子社員を全員呼ぶんだって。確かにそうかも
知れないけど、たいして仲良くないのにお祝儀
回収される子は災難よね。折原さんだって彼女
と話したのなんて、ほんの数回でしょう?」
「まあ、そうですけど……」
ぱくぱく、と口紅が剥げないように上手にパ
スタを口に運びながらそう言った結子に、蛍里
はマルゲリータにタバスコを振りながら、複雑
な顔をした。
あれから滝田とは顔を合わせていなかった。
座敷に戻ってみたら、彼はすでに帰っていたの
だ。どうやら、急な仕事が入ったらしいと、
結子は言っていたけれど……真偽のほどは定か
ではない。
そしてしばらくして戻ってきた専務とも、
蛍里が言葉を交わすことはなかった。斜め前に
座っていても目が合うことすらなく……けれど
彼は、見ていない“フリ”をしながら、ちゃんと
自分のことを気にかけてくれていたわけで。
そういった事を、ぐるぐる頭の中で考えてし
まえば、結子の話はぜんぜん耳に入ってこなか
った。
蛍里はタバスコを振りながら、ため息をついた。
このまま滝田と気まずくなってしまうのは嫌な
のに、どうすればいいかわからない。避けられて
いると思っていた専務は、実はそうではないよう
で……。彼の心中もよくわからない。
そして、詩乃守人。
彼からの返事も、未だ届いていなかった。
こういう状況を、二進も三進も行かない、と、
言うのだろうか?とってもモヤモヤする。
「ちょっと、折原さん!」
また、思考のスパイラルに陥っていた蛍里の耳
に、突然結子の声が飛び込んできた。蛍里はピタ、
と手を止める。結子は眉間にシワを寄せている。
「それ……かけ過ぎじゃない?」
「……えっ」
結子にそう言われピザに目をやれば、罰ゲーム
のような光景が目の前にある。蛍里は「あああ」
と声を上げ、泣きそうな顔をした。
「あーあ。何やってんだか」
結子は苦笑いしながら、透かさずペーパーナプ
キンを蛍里に差し出す。このペーパーで余分なタ
バスコを除けば、少しはマシになるということだ
ろう。
「すみません……」
蛍里はペーパーナプキンを受け取って、ちょん、
ちょん、とそれにタバスコを染み込ませた。
くるくると、フォークにパスタを巻き付けてい
た手を止め、蛍里を睨んだ。
「ねぇ、話聞いてる?」
「えっ?……っと、あれ……何でしたっけ?」
肩を竦めながら蛍里がそう答えると、結子は
「もう」と頬を膨らませ、再びフォークにパスタ
を絡め始めた。
「谷口さんの話。誰を呼んで、誰を呼ばない、
っていう線引きが難しいから、結婚式は本社の
女子社員を全員呼ぶんだって。確かにそうかも
知れないけど、たいして仲良くないのにお祝儀
回収される子は災難よね。折原さんだって彼女
と話したのなんて、ほんの数回でしょう?」
「まあ、そうですけど……」
ぱくぱく、と口紅が剥げないように上手にパ
スタを口に運びながらそう言った結子に、蛍里
はマルゲリータにタバスコを振りながら、複雑
な顔をした。
あれから滝田とは顔を合わせていなかった。
座敷に戻ってみたら、彼はすでに帰っていたの
だ。どうやら、急な仕事が入ったらしいと、
結子は言っていたけれど……真偽のほどは定か
ではない。
そしてしばらくして戻ってきた専務とも、
蛍里が言葉を交わすことはなかった。斜め前に
座っていても目が合うことすらなく……けれど
彼は、見ていない“フリ”をしながら、ちゃんと
自分のことを気にかけてくれていたわけで。
そういった事を、ぐるぐる頭の中で考えてし
まえば、結子の話はぜんぜん耳に入ってこなか
った。
蛍里はタバスコを振りながら、ため息をついた。
このまま滝田と気まずくなってしまうのは嫌な
のに、どうすればいいかわからない。避けられて
いると思っていた専務は、実はそうではないよう
で……。彼の心中もよくわからない。
そして、詩乃守人。
彼からの返事も、未だ届いていなかった。
こういう状況を、二進も三進も行かない、と、
言うのだろうか?とってもモヤモヤする。
「ちょっと、折原さん!」
また、思考のスパイラルに陥っていた蛍里の耳
に、突然結子の声が飛び込んできた。蛍里はピタ、
と手を止める。結子は眉間にシワを寄せている。
「それ……かけ過ぎじゃない?」
「……えっ」
結子にそう言われピザに目をやれば、罰ゲーム
のような光景が目の前にある。蛍里は「あああ」
と声を上げ、泣きそうな顔をした。
「あーあ。何やってんだか」
結子は苦笑いしながら、透かさずペーパーナプ
キンを蛍里に差し出す。このペーパーで余分なタ
バスコを除けば、少しはマシになるということだ
ろう。
「すみません……」
蛍里はペーパーナプキンを受け取って、ちょん、
ちょん、とそれにタバスコを染み込ませた。
