闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

◇◇◇ 赫燕(かくえん) ◇◇◇

 数ヶ月後、白楊(はくよう)国を揺るがす報せが駆け巡った。赫燕はその報せの紙を握りしめる。玄済(げんさい)大孤(だいこ)、さらにはその奥の騎馬民族たちが同盟を結び、白楊を滅ぼすべく大連合軍が結成されたと書かれている。

 天幕の中で一人、赫燕は地図に記された「崔瑾」の駒を見つめながら、笑みを浮かべた。そして、それを国境のまさにその一点へと、こつりと置く。

「——面白くなってきたじゃねえか」

 その声は、地図を囲む静寂の中で、盤上の駒と同じように乾いた音を立てた。