鍵田氏が受け取った「幸せなメール」について扱ってきた。前章で扱った「幸せの手紙」は、受け取った飯塚氏を幸福にする力がなかったと推論されるが、鍵田氏の場合は大きく異なる。

 まず「幸せなメール」は、多くの「チェーンメール」と異なる点が見られた。

 1、転送人数が「一人以上」と少ない。
 2、「送らなければ不幸になる」などの警告文がない。
 3、「二十一年」という期間の長さ。
 4、「幸せな手紙」という原形の存在の提示。

 これら四つの点が、「幸せなメール」が他と一線を画す部分と言える。特殊性を持つ「チェーンメール」がすべて本物であるとは言えないが、ありがちな内容と離れた部分を多く持つ「チェーンメール」の中には、「幸せなメール」のように実際に幸福をもたらすメールがあると考えさせられる結果となった。

「幸せなメール」がもたらす幸福は、全部で五つとされる。一つ目はメールを受け取った七日後、鍵田氏は欲しかったゲームソフトを手に入れている。二つ目の九日後には、念願の一人部屋を手に入れ、三つ目の十三日後には、英単語を容易に覚えられるようになるなどの、「できたらいい」と願っていたことが叶えられた。四つ目の十五日目には、好意を寄せていた男子生徒と隣同士の席になることができている。

 一つ一つは小さな幸福かもしれないが、幸福の定義は個人に大きく左右される。さらに中学一年生当時の鍵田氏にとって、これら四つの出来事は、「幸せなメール」を信頼するに足る出来事であったと考えられる。
 
 そして最後の五つ目は、二十一年目に訪れた。鍵田氏を悩ませた■■■の存在の排除である。ほぼ無関係と言える■■夫妻を巻き込んだ形となったが、記念に新聞記事を保管するほどに、鍵田氏には幸運な出来事だったことが窺える。

 もっとも、「娘が増えた」ことこそが幸福である可能性を否定できないが、鍵田氏の認識では「■■■の排除」こそが「本当の幸せ」となっている。二十一年後も「幸せなメール」は効力を持ち、鍵田氏の願いを叶えたと考えられる。

 鍵田氏はこのインタビューに答えたのち、家族を失っている。ただし、これが「幸せなメール」に関連しているかは不明である。また五つ目の願いが叶った後、「娘が一人増えた」と鍵田氏は語っているが、その存在は確認されていない。

 しかしながら、鍵田氏に「現在幸せですか」と問い合わせたところ、「娘と二人幸せです」と返答があった。

 鍵田氏は念願を叶え、幸福になったと考えられる。
「幸せなメール」は本物であると、結論付けられるだろう。