深夜2時の青春

「じゃ、サッカーしに行きましょっか」

 そう言った翔太くんは自分のアパートの真横にあるという公園に向かって歩き出した。

3〜4分くらい歩いた先に、街灯にぼんやりと照らされた公園があった。

ブランコとシーソーだけがある小さな場所だ。

「よし。春馬さん、パスの練習からしよう!」

 公園に入った翔太くんは、早速背負っていたリュックサックからサッカーボールを取り出した。

「……うん。わかった」

 僕は一度深く息を吸い込んでから返事をする。

「……春馬さん、顔険しすぎない?」

 翔太くんが僕の顔を見て笑った。

「春馬さん、もしかしてすげー緊張してたりする?」

「え?そりゃあ緊張するよ。だって、なんていうかその……僕はスポーツがあまり得意じゃないからさ。本職である翔太くんの迷惑にならないように頑張らないとって思うとそれだけで……」

「あははっ、はは」

 翔太くんは急に吹き出して笑った。

「なっ……なんで笑うの」

「いやー、春馬さん可愛いこと言うなあって思って」

「どこに可愛さなんか」

 自分の言動に可愛い要素なんてなかったはずだ。

だから、ただ翔太くんに揶揄われているのかもしれないと思うと、急に恥ずかしくなってくる。

僕は翔太くんの邪魔にならないようにって、真剣に思ったのに。

「はぁー……。やばいね、春馬さん」

 翔太くんの言葉と態度の意味が分からなくて、徐々に頭が混乱してくる。

「運動苦手なのに俺のために頑張ってくれるんだーって思ったらさ、可愛い人だなって思うでしょ、普通。ははっ」

 そう言った翔太くんは、困ったような顔をして笑った。

僕の頭の中は翔太くんの人懐っこい笑顔と、言われ慣れない言葉のせいで、プチパニックに陥ってしまう。

「それはだって。この前の僕の失態のお詫びだから、一生懸命しないと誠意が無いというか……」

 僕が口ごもりながら話すと、翔太くんが僕の言葉に被せるようにして言った。

「失態って?」

「……僕が……翔太くんにキスを強請って、させてしまったこと……かな」

 改めて自分の不埒な言動を口にすると急激に恥ずかしさが込み上がってくる。

「じゃ、キスしてなかったら、俺とサッカーはしてくれなかった?」

 翔太くんは優しく微笑みながら言った。

「っ、そんなことは……ない……かな」

 僕は小さく答えた。

きっと僕はキスのお詫びなんて言い訳がなくても、翔太くんに誘われたら断れなかったと思う。

「そっか。じゃ、やっぱ可愛いで合ってるじゃん。」

 翔太くんは僕に相槌を促すように、「ね?」と軽く首を傾げた。

「……そういう考えもあるかもしれない」

 僕は必死に返事をはぐらかした。

そうじゃないと、翔太くんの何気ない一言一言に変な勘違いを起こしてしまいそうになる。

アラサーのこんな僕に可愛いなんて、本気で思ってるはずは無い。

僕はもう一度深く息を吸って、心で2回ほど繰り返した。