深夜2時の青春


「俺……実はまだ夢を叶えきれてないんですよね」

翔太くんは鼻先を軽く掻きながら言った。

「俺、今J2でプレーしてるんですけど、J1でサッカーしたいんです」

「ジェーワン?」

「はい。J1はJリーグのトップリーグっすね。トップリーグの選手って、みんなほんっとに上手くて!もう試合見てるだけで『くぅ〜、うめえ』って胸がこう……なんていうか、カーッと燃えてくるんすよ。俺もあんなプレーしてえって」

徐々にサッカー熱が高まってきたらしく、翔太くんは小さな子どものように大きく身振り手振りしながら話している。

「やっぱシンプルに強いって、かっけえんすよ。見てる人の心まで動かすというか。俺は試合を観にきてくれた人に面白かったーって思いながら帰って欲しいと思ってます」

翔太くんが大きく動くたびに、耳元のピアスがきらりと光る。

それよりも、サッカーの話を夢中でしている翔太くんの笑顔は何よりもきらめいて見える。

「ぼ、僕も……僕も研究者としては未熟者なんだけど、いつか博士号を取れたら、世の中の役に立つ研究をたくさんしたいと思ってますっ」

僕は、頬をほんのり赤くした翔太くんの目を見て勢い良く言った。

「……いいっすね」

「はいっ、今は分析の方法とか学ぶことばかりなんですけど、本当は何歳になってもいいから博士号を取って、研究者として教科書に載るような理論とかを見つけたいんです。この世界の『初めて』を発見をしたい。知るだけじゃ物足りないんです、もっと、もっとこの世界を形作っている理屈を知りたい……」

きっと楽しそうに話す翔太くんに感化されたんだ。

いつの間にか僕は自分の心の奥底に閉じ込めていた本心を翔太くんに話していた。

未熟者の僕が口にするのは、おこがましいと思っていた気持ちを。

「え、春馬さんめっちゃかっこいいっすね」

「そう……かな」

「いや、まじでかっこいいっす!!」

八重歯をのぞかせながら話す翔太くんは、僕の肩をガッシリと掴んだ。

その拍子に、僕の膝に翔太くんの膝がコンと触れた。

「俺、もっと春馬さんの話聞きたい」

さっきまでニコニコと幼い子どものような表情をしていた翔太くんが、僕の目をジッと見て言った。

「春馬さんみたいな人、俺めっちゃ好きっす。……俺、春馬さんのこともっと知りたい」

翔太くんの手がに掴まれている肩が熱い。

じわじわと心まで溶かされてしまうのではないかと思うくらいだ。

それに、甘く整った翔太くんから真っ直ぐ見つめられると、全身を捕まえられているようで視線でさえ逃げられそうにない。

さっきぶつかった膝も離せないままでいる。

「僕もっ、翔太くんのこと、もっと知りたい……です……」

これは研究者としての知的好奇心なのか、それとも人としての本能なのか。

わからないけど胸が高鳴り、頬が緩む。

「ほんとっすか!めっちゃ嬉しいっす!」

翔太くんは「これからよろしくっす」と言って、僕の酎ハイのグラスに自分のグラスをコンっと当てた。

僕は慌ててグラスを持ち、「こちらこそよろしく」と言って、改めて二人で乾杯をした。