「か、かっこいい……ではなくて?」
翔太くんが言った可愛いという言葉に心が乱される。
どう考えても、成人男性である僕に『可愛い』なんて単語は似合わないのに、翔太くんはどういうつもりだろう。
「うん。春馬さんはね、可愛い」
また、可愛いだ。
翔太くんが言う『可愛い』には、深い意味はないのかもしれない。
だけど、こんな僕を可愛く思うなんて、両思いの可能性もあるんじゃないかって期待してしまう。
今、僕に可愛いと言った翔太くんは、どんな表情をして言っているのだろう。
両方の眉を下げ、困ったような顔?
それとも、八重歯を口元から覗かせて、照れくさそうな顔?
いずれにしても、近くにいるのはスマホから聞こえる声だけだからもどかしい。
「春馬さん?」
翔太くんが数秒黙ったままになっていた僕の名前を呼んだ。
「あっ、ごめん」
「ねむいよね、寝る?」
翔太くんが申し訳なさそうに言った。
「じゃあ、あとちょっとだけ。ええと、あの……僕さ、今日試合を観に行って本当に良かった。新たな翔太くんも発見できたし、僕も研究を頑張ろうって思えた。活力をくれて本当にありがとう」
僕は唐突にお礼を伝えた。
「翔太くんの頑張りを見ている限り、僕も頑張れると思う」
僕は深夜1時になりかけている時計を見てから、部屋の明かりを消した。
「そっか。ありがと。………………春馬さんってさ、子どもの頃から研究者が夢だったの?」
「うん?違うけど?」
またコロリと変わってしまった話題に、僕は寝転んだまま首を傾げた。
「なんで変わったの?」
「うーん。やりたいことが見つかったから、かな」
「やりたいこと?」
「そう。僕は小さい頃から変わってるねって言われることが多かったんだけど、大学生になって、卒業論文を書いてる時に『あ、研究って楽しいかもしれない』って思ったんだよね」
「へえ?」
「何を言いたいかというと、僕の変わってる部分が人生で初めて活かせた気がして、それが凄く楽しかったんだよ。だから、今もボロボロになりながらだけど研究者になる夢を追いかけてる」
「そっか。春馬さんらしくて良いね。まっすぐで」
「そうかな?」
「そうだよ、俺も見習わないと」
翔太くんは「ははっ」と乾いた声で笑った。
それからの僕たちは「これだけ言ったら寝る」と言って、しばらくの間、互いの第一印象や何に転生したいかだとか、くだらない話を続けていた。
いつもなら眠っている深夜の時間は、遠くから救急車のサイレンが鳴る音が聞こえたくらいで本当に静かで非日常的だった。
いつの間にか朝になり、窓からうっすらと差し込む朝日で目が覚めた。
布団の中でゴソゴソと動いて、枕元のスマホを手に取る。
「っ、んん。ねむ……」
続けてボヤボヤとした視界を正すために、近くにおいてあった眼鏡をかける。
「目覚まし……かけてなかったかな」
スマホの画面を見ると、見慣れない画面になっている。
「ん?あれ?これって」
スマホの画面に翔太くんのLINEのアイコンが映っている。
どうやら昨夜の通話状態が保たれているらしい。
(どうしよう。これ、切らない方が良いのかな)
起きてすぐのぼんやりとした頭で、最善策は何かと考えていると、スマホの向こうから「んんーっ」と伸びをする声とともに布団が擦れる音がした。
「ふぁあ……え?あれ?春馬さん?んん?」
あくびをした翔太くんの不思議そうな声が聞こえる。
「あ、翔太くん?あの、電話が繋げっぱなしになっていたみたいで……」
僕は慌てて状況を説明しようと試みた。
すると、翔太くんの笑う声がスマホ越しに返ってきた。
「ぷっ。ふふふっ……春馬さん、俺たち寝落ち通話しちゃってるじゃん、これ」
「寝落ち通話……」
「恋人同士がよくやるやつ」
「こっ……え、恋?」
恋人同士という単語に反応してしまって、舌がもつれ、思い切り噛んでしまった。
「春馬さん寝落ち通話、知らない?」
「いや、知ってる、知ってるけど」
まさか、翔太くんと一晩中電話を繋げていたなんて。
スマホに表示されている7:34:22という通話時間を見ると、本当に寝ている間中ずっと翔太くんと電話を繋げていたのだと実感する。
それだけで特別な朝に思えて、顔のにやけが止まらない。
「はーるまさん、おはよ。いっぱい寝れた?」
スマホ越しに聞こえてくる翔太くんのちょっとだけ気怠そうな声が妙に色っぽい。
いつもの元気いっぱいな様子とは全然違う。
「おはよう。僕はすごく眠れた。……翔太くんは?」
「俺も寝た。でも、まだまだ寝れる」
「ははっ、元気だね」
僕が笑うと、翔太くんも「はははっ」と笑った。
一人暮らしの僕には、起きてすぐ『おはよう』と挨拶をする相手はいない。
だけど、もしも翔太くんと恋人になれたら、寝起きの翔太くんも独り占めして、おはようと笑い合えるのだろうか。
翔太くんが言った可愛いという言葉に心が乱される。
どう考えても、成人男性である僕に『可愛い』なんて単語は似合わないのに、翔太くんはどういうつもりだろう。
「うん。春馬さんはね、可愛い」
また、可愛いだ。
翔太くんが言う『可愛い』には、深い意味はないのかもしれない。
だけど、こんな僕を可愛く思うなんて、両思いの可能性もあるんじゃないかって期待してしまう。
今、僕に可愛いと言った翔太くんは、どんな表情をして言っているのだろう。
両方の眉を下げ、困ったような顔?
それとも、八重歯を口元から覗かせて、照れくさそうな顔?
いずれにしても、近くにいるのはスマホから聞こえる声だけだからもどかしい。
「春馬さん?」
翔太くんが数秒黙ったままになっていた僕の名前を呼んだ。
「あっ、ごめん」
「ねむいよね、寝る?」
翔太くんが申し訳なさそうに言った。
「じゃあ、あとちょっとだけ。ええと、あの……僕さ、今日試合を観に行って本当に良かった。新たな翔太くんも発見できたし、僕も研究を頑張ろうって思えた。活力をくれて本当にありがとう」
僕は唐突にお礼を伝えた。
「翔太くんの頑張りを見ている限り、僕も頑張れると思う」
僕は深夜1時になりかけている時計を見てから、部屋の明かりを消した。
「そっか。ありがと。………………春馬さんってさ、子どもの頃から研究者が夢だったの?」
「うん?違うけど?」
またコロリと変わってしまった話題に、僕は寝転んだまま首を傾げた。
「なんで変わったの?」
「うーん。やりたいことが見つかったから、かな」
「やりたいこと?」
「そう。僕は小さい頃から変わってるねって言われることが多かったんだけど、大学生になって、卒業論文を書いてる時に『あ、研究って楽しいかもしれない』って思ったんだよね」
「へえ?」
「何を言いたいかというと、僕の変わってる部分が人生で初めて活かせた気がして、それが凄く楽しかったんだよ。だから、今もボロボロになりながらだけど研究者になる夢を追いかけてる」
「そっか。春馬さんらしくて良いね。まっすぐで」
「そうかな?」
「そうだよ、俺も見習わないと」
翔太くんは「ははっ」と乾いた声で笑った。
それからの僕たちは「これだけ言ったら寝る」と言って、しばらくの間、互いの第一印象や何に転生したいかだとか、くだらない話を続けていた。
いつもなら眠っている深夜の時間は、遠くから救急車のサイレンが鳴る音が聞こえたくらいで本当に静かで非日常的だった。
いつの間にか朝になり、窓からうっすらと差し込む朝日で目が覚めた。
布団の中でゴソゴソと動いて、枕元のスマホを手に取る。
「っ、んん。ねむ……」
続けてボヤボヤとした視界を正すために、近くにおいてあった眼鏡をかける。
「目覚まし……かけてなかったかな」
スマホの画面を見ると、見慣れない画面になっている。
「ん?あれ?これって」
スマホの画面に翔太くんのLINEのアイコンが映っている。
どうやら昨夜の通話状態が保たれているらしい。
(どうしよう。これ、切らない方が良いのかな)
起きてすぐのぼんやりとした頭で、最善策は何かと考えていると、スマホの向こうから「んんーっ」と伸びをする声とともに布団が擦れる音がした。
「ふぁあ……え?あれ?春馬さん?んん?」
あくびをした翔太くんの不思議そうな声が聞こえる。
「あ、翔太くん?あの、電話が繋げっぱなしになっていたみたいで……」
僕は慌てて状況を説明しようと試みた。
すると、翔太くんの笑う声がスマホ越しに返ってきた。
「ぷっ。ふふふっ……春馬さん、俺たち寝落ち通話しちゃってるじゃん、これ」
「寝落ち通話……」
「恋人同士がよくやるやつ」
「こっ……え、恋?」
恋人同士という単語に反応してしまって、舌がもつれ、思い切り噛んでしまった。
「春馬さん寝落ち通話、知らない?」
「いや、知ってる、知ってるけど」
まさか、翔太くんと一晩中電話を繋げていたなんて。
スマホに表示されている7:34:22という通話時間を見ると、本当に寝ている間中ずっと翔太くんと電話を繋げていたのだと実感する。
それだけで特別な朝に思えて、顔のにやけが止まらない。
「はーるまさん、おはよ。いっぱい寝れた?」
スマホ越しに聞こえてくる翔太くんのちょっとだけ気怠そうな声が妙に色っぽい。
いつもの元気いっぱいな様子とは全然違う。
「おはよう。僕はすごく眠れた。……翔太くんは?」
「俺も寝た。でも、まだまだ寝れる」
「ははっ、元気だね」
僕が笑うと、翔太くんも「はははっ」と笑った。
一人暮らしの僕には、起きてすぐ『おはよう』と挨拶をする相手はいない。
だけど、もしも翔太くんと恋人になれたら、寝起きの翔太くんも独り占めして、おはようと笑い合えるのだろうか。



