LINEのトーク画面を開くと、翔太くんから続けて『今から祝勝会だから、終わったらすぐかける!』『たぶん22時くらい!もし遅かったら気にせず寝てね』というメッセージが届いていた。
22時。
今は17時を少し過ぎたところだから、大体6時間後だ。
僕は翔太くんから送られてきた文面をじっと見つめた。
「電話、何かな……」
好きな人からの着信を待つだけで、こんなにも気持ちが落ち着かなくなるなんて。
僕は早めに入浴を済まし、窓際に積んだままにしてあった小説を読んで、恋心を紛らわせることにした。
(ふああ……)
そろそろ約束の時間かと思い、大きなあくびをしてからスマホを見る。
「え……っ」
画面には23:47と表示され、翔太くんから3件の着信と『電話遅くなってごめん!また明日電話させて。おやすみ』とLINEがあった。
「まずいまずい。約束の時間過ぎてる」
翔太くんは約束通り22時に電話をかけてくれていたのに、僕はウトウトどころか、しっかり眠ってしまっていたらしい。
僕は慌てて小説を机に置き、翔太くんに電話をかけた。
「もしもし?春馬さん?」
深夜だからか、普段より低い翔太くんの声がする。
「あっ、もしもし?電話ごめんね。僕、寝てしまってて」
「ははっ。だと思った」
翔太くんの少し掠れた声で笑った。
「眠い?春馬さん」
「ううん、大丈夫。翔太くんは?」
「俺も大丈夫」
夜中のシンとした静けさの中で、翔太くんの優しい声だけが身体に響いてくる。
「あのさ、もしかしたら……っていうか、そうだと思うんだけど。春馬さん今日、試合来てたよね?」
一瞬、身体全身からドキっと音が鳴った。
応援に行ったことを気づかれていたとは思わなかった。
僕は小さく「うん」と答えた。
「俺の自意識過剰だったら恥ずいんだけど。もしかして俺を応援しに来てくれた、とか?」
翔太くんは照れくさそうに聞いてきた。
「え、あぁ……うん」
僕は素直に認め、スマホ越しにこくりと頷いた。
本人に内緒で応援しに行ったはずなのに、全部バレてしまっているなんて恥ずかしい。
「まじ?……え、じゃあ首からかけてたタオルは?」
「翔太くんの名前が入ったタオル、です」
どんどん恥ずかしくなってきて、僕はにやけてしまう口元を手で押さえた。
まさか、こっそりと翔太くんのグッズを身につけていたことまで気づいていたなんて。
「あはっ、あはは。やべー。…………すげー嬉しい」
スマホから笑い声がして、すぐに静かになったかと思うと、翔太くんがぼそりと言った。
吐息が混ざった『嬉しい』という一言が、僕の首筋から背中までぞくりと撫でた。
「で、どうだった?」
翔太くんは、ゆっくりと尋ねた。
「か、かっこよかった!本当に。最後の最後にシュートのアシスト?をしたのも凄かった!だけど……」
「だけど?」
「……周りの観客の人たちがさ、翔太くんが出てきた瞬間、すっごく嬉しそうで。それを見た時に、あぁ、この声援は翔太くんがこれまで積み上げてきた信頼の証なんだろうなって感じて……それが本当に格好良くて、ドキドキした」
僕はなんてことを口走ってしまっているんだろう。
たまに外で吹く風が窓をカタカタと揺らす音が聞こえるだけの静けさが、僕のテンションをおかしくしてしまっているのだろうか。
「ね……惚れた?」
翔太くんが、そっと僕に聞いた。
「あ……」
びっくりした。
ほんの一瞬、翔太くんは、サッカースタジアムという広い会場の中で僕を見つけただけでなく、僕の恋心まで見つけてしまったのかと本気で思った。
「うそうそ。冗談だって」
翔太くんがいたずらっ子みたいに笑う。
「惚れたよ。惚れた。すごくかっこよかった」
僕は恥ずかしさを堪えて、精一杯まっすぐ伝わるように言い切った。
すると、すぐに『まじ?ありがとう』とか『でしょ〜』とか、軽めの返事が返ってくると思ったのに、翔太くんは無言のままだった。
言葉を間違えたか、言い方がまずかったか。
青春真っ只中の男子高校生ならまだしも、僕みたいなアラサー成人男性から、真剣に惚れたなんて言われたら不快だったかもしれない。
1秒、1秒、進むごとに不安になる。
ちらりと時計を見ると、深夜0時30分を指している。
「……春馬さん。俺、死にそう」
当分黙っていた翔太くんがやっと発したのは想定外の言葉だった。
「ええ!!大丈夫!?」
「だいじょうぶだけど、だいじょうぶじゃない」
僕が返事に困っていると、翔太くんは続けて僕に話しかけた。
「ね、俺、今ベッドに寝転がってるんだけど、春馬さんは?」
何も脈略のない質問に、僕は「寝ちゃわないようにベッドに座ってる?」と疑問符をつけて返した。
「春馬さん。寝転びながら話しなよ。寝ても良いからさ」
翔太くんは「ね?」と念を押して、僕に選択肢を与えるつもりは無さそうだった。
22時。
今は17時を少し過ぎたところだから、大体6時間後だ。
僕は翔太くんから送られてきた文面をじっと見つめた。
「電話、何かな……」
好きな人からの着信を待つだけで、こんなにも気持ちが落ち着かなくなるなんて。
僕は早めに入浴を済まし、窓際に積んだままにしてあった小説を読んで、恋心を紛らわせることにした。
(ふああ……)
そろそろ約束の時間かと思い、大きなあくびをしてからスマホを見る。
「え……っ」
画面には23:47と表示され、翔太くんから3件の着信と『電話遅くなってごめん!また明日電話させて。おやすみ』とLINEがあった。
「まずいまずい。約束の時間過ぎてる」
翔太くんは約束通り22時に電話をかけてくれていたのに、僕はウトウトどころか、しっかり眠ってしまっていたらしい。
僕は慌てて小説を机に置き、翔太くんに電話をかけた。
「もしもし?春馬さん?」
深夜だからか、普段より低い翔太くんの声がする。
「あっ、もしもし?電話ごめんね。僕、寝てしまってて」
「ははっ。だと思った」
翔太くんの少し掠れた声で笑った。
「眠い?春馬さん」
「ううん、大丈夫。翔太くんは?」
「俺も大丈夫」
夜中のシンとした静けさの中で、翔太くんの優しい声だけが身体に響いてくる。
「あのさ、もしかしたら……っていうか、そうだと思うんだけど。春馬さん今日、試合来てたよね?」
一瞬、身体全身からドキっと音が鳴った。
応援に行ったことを気づかれていたとは思わなかった。
僕は小さく「うん」と答えた。
「俺の自意識過剰だったら恥ずいんだけど。もしかして俺を応援しに来てくれた、とか?」
翔太くんは照れくさそうに聞いてきた。
「え、あぁ……うん」
僕は素直に認め、スマホ越しにこくりと頷いた。
本人に内緒で応援しに行ったはずなのに、全部バレてしまっているなんて恥ずかしい。
「まじ?……え、じゃあ首からかけてたタオルは?」
「翔太くんの名前が入ったタオル、です」
どんどん恥ずかしくなってきて、僕はにやけてしまう口元を手で押さえた。
まさか、こっそりと翔太くんのグッズを身につけていたことまで気づいていたなんて。
「あはっ、あはは。やべー。…………すげー嬉しい」
スマホから笑い声がして、すぐに静かになったかと思うと、翔太くんがぼそりと言った。
吐息が混ざった『嬉しい』という一言が、僕の首筋から背中までぞくりと撫でた。
「で、どうだった?」
翔太くんは、ゆっくりと尋ねた。
「か、かっこよかった!本当に。最後の最後にシュートのアシスト?をしたのも凄かった!だけど……」
「だけど?」
「……周りの観客の人たちがさ、翔太くんが出てきた瞬間、すっごく嬉しそうで。それを見た時に、あぁ、この声援は翔太くんがこれまで積み上げてきた信頼の証なんだろうなって感じて……それが本当に格好良くて、ドキドキした」
僕はなんてことを口走ってしまっているんだろう。
たまに外で吹く風が窓をカタカタと揺らす音が聞こえるだけの静けさが、僕のテンションをおかしくしてしまっているのだろうか。
「ね……惚れた?」
翔太くんが、そっと僕に聞いた。
「あ……」
びっくりした。
ほんの一瞬、翔太くんは、サッカースタジアムという広い会場の中で僕を見つけただけでなく、僕の恋心まで見つけてしまったのかと本気で思った。
「うそうそ。冗談だって」
翔太くんがいたずらっ子みたいに笑う。
「惚れたよ。惚れた。すごくかっこよかった」
僕は恥ずかしさを堪えて、精一杯まっすぐ伝わるように言い切った。
すると、すぐに『まじ?ありがとう』とか『でしょ〜』とか、軽めの返事が返ってくると思ったのに、翔太くんは無言のままだった。
言葉を間違えたか、言い方がまずかったか。
青春真っ只中の男子高校生ならまだしも、僕みたいなアラサー成人男性から、真剣に惚れたなんて言われたら不快だったかもしれない。
1秒、1秒、進むごとに不安になる。
ちらりと時計を見ると、深夜0時30分を指している。
「……春馬さん。俺、死にそう」
当分黙っていた翔太くんがやっと発したのは想定外の言葉だった。
「ええ!!大丈夫!?」
「だいじょうぶだけど、だいじょうぶじゃない」
僕が返事に困っていると、翔太くんは続けて僕に話しかけた。
「ね、俺、今ベッドに寝転がってるんだけど、春馬さんは?」
何も脈略のない質問に、僕は「寝ちゃわないようにベッドに座ってる?」と疑問符をつけて返した。
「春馬さん。寝転びながら話しなよ。寝ても良いからさ」
翔太くんは「ね?」と念を押して、僕に選択肢を与えるつもりは無さそうだった。



