捻挫をした日を境に翔太くんとは頻繁にLINEをするようになった。
はじめは怪我の具合を心配してくれる内容がほとんどだったけれど、次第に試合に勝ったとか負けたとか、研究が進まないだとか、互いの近況を報告をすることが増えていった。
それに、金曜の夜は弁当を買ったら、どちらかの家に行き、一緒に食べるようにもなった。
翔太くんからは、お酒を飲むことだけは止められていたけど、弁当を食べ、風呂に入り、くつろぎながら眠くなるまで話す夜は大学生の頃に戻ったみたいでどこか懐かしさがあった。
いつものように、金曜日の夜になり、研究室で翔太くんの練習が終わるのを待っていると、指導教員である山本教授が話しかけてきた。
「佐野くん。最近、調子良さそうですね」
「そうですか?」
「うん。少し前まではいつも目にクマを作っていたし、金曜日くらいになると疲労困憊って感じで青白い顔をしてたよ」
「え……そんなにですか」
たしかに、疲労感を漂わせているだろうなとは思っていたけど、先生に言われる程だとは思っていなかった。
「何か良い変化でもありましたか?」
山本先生は目尻に皺を寄せて微笑んだ。
「ええと……一緒に夜ご飯を食べてくれる人が出来ました。僕の知らない世界を持っている人なんですけど、話していると元気というか、勇気をもらえます」
「勇気か。それはすごく良いね。良い人が出来たんだね」
「はい。すごく」
自然と頬が緩む。
頭の中に翔太くんを思い浮かべるだけで、腹の底から力が湧いてくる。
ほんの少し前までは、いい歳した大人が結婚も安定も放り出して夢を追うなんて馬鹿なことをしてしまったと毎日後悔していたけど、目を輝かせながら失敗も成功も語る翔太くんを見ていると、僕もこのままもう少しだけ夢に縋っても良いのかもしれないと思わせてくれる。
何歳になっても夢を見ても良いんだって。
「ふふっ、僕もね、大学院生時代に結婚したんだけど。妻と食べる毎日の夕食が楽しくてね。いつのまにか研究室に泊まる癖が直っていたよ。佐野くんには良い彼女が出来たんだね」
「え……?いや、彼女ではないです……けど」
僕は何故かギクリとして、慌てて山本先生の言葉を訂正した。
「あぁ。それは申し訳ない。本当に。……あまりにも幸せそうな表情をしていたもんだから、つい学部生の惚気話を聞いているような気になってしまってね」
先生の言葉を聞いて、急に顔にカーッと熱が込み上がってきた。
「い、いえ。大丈夫です。紛らわしい言い方をしてしまって、こちらこそすみません」
きっと、今の僕の顔は本当に大学生が惚気話をしている時のような顔になっていたのだろう。
僕だって大学という機関に長くいるから、自分がどんな表情になっていたのかくらい想像がつく。
慌てて手で口元を隠し、先生から視線を逸らした。
「まあ、でも佐野くんに大切な相手ができたのなら僕は安心したよ。あ、そうだ。このチケット佐野くんにあげるよ。その友達を誘って観戦しに行ってみたらどうかな」
鞄をゴソゴソと探った山本先生はチケットを2枚僕に差し出した。
「本当は5枚くらい持ってるんだけど、友達は1人で合ってた?」
「合って、ます」
渡されたチケットを見ると、Jリーグの観戦チケットだった。
しかも、翔太くんが所属するチームの公式試合の招待券だ。
まさか山本先生から翔太くんのサッカーの観戦チケットをもらうなんて全く想像していなかった。
「また大切な友達と行った時の感想、聞かせてね」
「え、あっ、はい。ありがとうございます……」
僕は驚いてしまって、先生がくれた招待券の試合に僕の大切な友達が出場しますとは言えなかった。
はじめは怪我の具合を心配してくれる内容がほとんどだったけれど、次第に試合に勝ったとか負けたとか、研究が進まないだとか、互いの近況を報告をすることが増えていった。
それに、金曜の夜は弁当を買ったら、どちらかの家に行き、一緒に食べるようにもなった。
翔太くんからは、お酒を飲むことだけは止められていたけど、弁当を食べ、風呂に入り、くつろぎながら眠くなるまで話す夜は大学生の頃に戻ったみたいでどこか懐かしさがあった。
いつものように、金曜日の夜になり、研究室で翔太くんの練習が終わるのを待っていると、指導教員である山本教授が話しかけてきた。
「佐野くん。最近、調子良さそうですね」
「そうですか?」
「うん。少し前まではいつも目にクマを作っていたし、金曜日くらいになると疲労困憊って感じで青白い顔をしてたよ」
「え……そんなにですか」
たしかに、疲労感を漂わせているだろうなとは思っていたけど、先生に言われる程だとは思っていなかった。
「何か良い変化でもありましたか?」
山本先生は目尻に皺を寄せて微笑んだ。
「ええと……一緒に夜ご飯を食べてくれる人が出来ました。僕の知らない世界を持っている人なんですけど、話していると元気というか、勇気をもらえます」
「勇気か。それはすごく良いね。良い人が出来たんだね」
「はい。すごく」
自然と頬が緩む。
頭の中に翔太くんを思い浮かべるだけで、腹の底から力が湧いてくる。
ほんの少し前までは、いい歳した大人が結婚も安定も放り出して夢を追うなんて馬鹿なことをしてしまったと毎日後悔していたけど、目を輝かせながら失敗も成功も語る翔太くんを見ていると、僕もこのままもう少しだけ夢に縋っても良いのかもしれないと思わせてくれる。
何歳になっても夢を見ても良いんだって。
「ふふっ、僕もね、大学院生時代に結婚したんだけど。妻と食べる毎日の夕食が楽しくてね。いつのまにか研究室に泊まる癖が直っていたよ。佐野くんには良い彼女が出来たんだね」
「え……?いや、彼女ではないです……けど」
僕は何故かギクリとして、慌てて山本先生の言葉を訂正した。
「あぁ。それは申し訳ない。本当に。……あまりにも幸せそうな表情をしていたもんだから、つい学部生の惚気話を聞いているような気になってしまってね」
先生の言葉を聞いて、急に顔にカーッと熱が込み上がってきた。
「い、いえ。大丈夫です。紛らわしい言い方をしてしまって、こちらこそすみません」
きっと、今の僕の顔は本当に大学生が惚気話をしている時のような顔になっていたのだろう。
僕だって大学という機関に長くいるから、自分がどんな表情になっていたのかくらい想像がつく。
慌てて手で口元を隠し、先生から視線を逸らした。
「まあ、でも佐野くんに大切な相手ができたのなら僕は安心したよ。あ、そうだ。このチケット佐野くんにあげるよ。その友達を誘って観戦しに行ってみたらどうかな」
鞄をゴソゴソと探った山本先生はチケットを2枚僕に差し出した。
「本当は5枚くらい持ってるんだけど、友達は1人で合ってた?」
「合って、ます」
渡されたチケットを見ると、Jリーグの観戦チケットだった。
しかも、翔太くんが所属するチームの公式試合の招待券だ。
まさか山本先生から翔太くんのサッカーの観戦チケットをもらうなんて全く想像していなかった。
「また大切な友達と行った時の感想、聞かせてね」
「え、あっ、はい。ありがとうございます……」
僕は驚いてしまって、先生がくれた招待券の試合に僕の大切な友達が出場しますとは言えなかった。



