深夜2時の青春

 「翔太くん……ごめんね」

 翔太くんにおんぶをされて公園を後にした僕は、静かに謝罪の言葉を口にした。

「いいんだって。むしろ俺が無理させちゃった訳だしさ」

「そんなことないっ」

 ただ僕が調子に乗っただけだ。

ちょっと褒められたからって、雑念を生み出したりするから。

本当ならサッカーをして、もう少ししたら楽しく夜ご飯を食べていたかもしれないのに。

結局、僕は翔太くんに迷惑をかけてしまっている。

足首のズキズキと響く痛みが、浮かれていた心を沈ませる。

(はぁ、何をしてもダメだな。僕は)

 夜道とはいえ、たまにすれ違う人たちにクスっと笑われると、アラサーにもなって何をしているんだろうかと恥ずかしさと情けなさが同時に込み上げてくる。


 数分歩くと、翔太くんが住んでいるアパートに到着した。

「おじゃまします」

 相変わらずおんぶをされたままの僕は、靴を脱がしてもらって、部屋の中に運んでもらう。

「……わあ、すごい……」

 部屋の壁にはサッカーのユニホームが数枚飾られ、床には誰かのサインが書かれたボールが1つ置かれている。

それに、テレビ台には今の翔太くんよりも、うんと若い翔太くんがチームメイトと肩を組んで写っている写真もあった。

科学の専門書や小説、実用書ばかり置いてある自分の部屋とは全くちがう。

自分とは正反対な部屋に思わず圧倒されてしまった。

「春馬さん、部屋散らかっててごめんね。今片付けるから、その間これで足首冷やしてて」

 翔太くんは氷がいっぱい詰まった氷のうを僕に渡した。

言われた通り、右足首にそっと氷のうを当てると、さっきまでの鋭い痛みが冷たさで紛れていくような感じがする。

だけど、服を畳んだり、ローテーブルの上に置かれた書類を片付ける翔太くんを見ていると、迷惑を更新しているようで胸がチクっと痛んだ。

 「よっし、春馬さん。足見せて!」


 翔太くんはハサミとテーピング用の伸縮テープを持って、僕の隣に座った。

「ほらほら。靴下も脱いで」

「え、ちょっと待って」

 今から何をされるのだろうと、不安になりながら靴下を脱ごうとすると足首に痛みが走る。

「痛っ……」

 数十分冷やしただけでは、完全回復とはいかないらしい。

「あ、俺がやるよ」

 そう言った翔太くんは、僕の右足を優しく持ち上げた。

翔太くんは僕の足を掴んだまま、靴下の履き口にそっと指をかける。

「痛い?」

「……ううん」

 僕の返事を聞いた翔太くんは、そのままスルスルとゆっくりと靴下を下ろしていく。

きっと、足首に痛みが走らないように、慎重に脱がしてくれているのだろう。

だけど、その丁寧な脱がし方は乙女のように扱われているようで、心がくすぐったくて、小恥ずかしい。

「あの……翔太くん。そんなに慎重にしてくれなくても大丈夫だから」