紙芝居「キジとゴリラの杜」始まり始まりー!
あの嵐のあと、
森は すこしずつ しずけさを とりもどしました。
空をとぶ鳥たちは それぞれの国(くに)へ もどり、
みんなで 新しい巣(す)をつくっていました。
キジも けがをなおし、
ちいさな丘に 家をつくりました。
だけど、ときどき 空を見あげると、
遠くの山の上に ゴリラのすがたが 見えました。
ゴリラは やさしい声で いいました。
「キジよ。
オマエは もうひとりじゃない。
オレが そらの守りかたを おしえてやろう。」
キジは すこし うれしくなりました。
だって、森のどうぶつたちは まだ こわかったし、
ゴリラは 力があって、
なにより 嵐のときに 助けてくれた 思い出があったからです。
ゴリラは キジに まもりの塔をたててくれました。
ピカピカの鉄でできた 高い塔。
そのてっぺんには、
空を見はる おおきな耳がついていました。
「これで オマエの国も 安全だ。」
ゴリラは 満足そうに 笑いました。
けれども ある夜、
キジは 風にまぎれて 奇妙な声を 聞きました。
塔の上から、 小さな声が つぶやいていたのです。
「キジよ、キジよ。
きみの空は、本当に自由かい?」
キジは はっとして 夜空を見あげました。
月は ゴリラの影に かくれていました。
塔の耳は、風の音ではなく、
森じゅうの声を 聞いていました。
キジは 気づきました。
自分の歌も、羽ばたきも、
すべて ゴリラの大きな手のひらの上にあったことを。
けれども ゴリラは やさしく言いました。
「オマエの空は オレの空。
だからこそ守るんだよ。」
その言葉は 甘くて、あたたかくて、
どこかこわいものでした。
キジは 夜明けの空を見あげながら、
小さくつぶやきました。
「いつか本当に 自分の羽で飛べる日がくるのだろうか。
目が痛いほど 空がまぶしい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
真理は、手話で「空」を示し、
天を仰ぎました。
講堂で物語を聞いた子供たちの中の一人が、手を小さく握りしめて心の中でつぶやきました。「?」
講堂に響く拍手に真理はそっと微笑む。物語は集まった子供たちの胸の中で灯火となり、想いが次の未来へ渡されていくのを願う。
手話ナレーターのボランティアを続ける真理。彼女の声はまだ戻らない。
END
あの嵐のあと、
森は すこしずつ しずけさを とりもどしました。
空をとぶ鳥たちは それぞれの国(くに)へ もどり、
みんなで 新しい巣(す)をつくっていました。
キジも けがをなおし、
ちいさな丘に 家をつくりました。
だけど、ときどき 空を見あげると、
遠くの山の上に ゴリラのすがたが 見えました。
ゴリラは やさしい声で いいました。
「キジよ。
オマエは もうひとりじゃない。
オレが そらの守りかたを おしえてやろう。」
キジは すこし うれしくなりました。
だって、森のどうぶつたちは まだ こわかったし、
ゴリラは 力があって、
なにより 嵐のときに 助けてくれた 思い出があったからです。
ゴリラは キジに まもりの塔をたててくれました。
ピカピカの鉄でできた 高い塔。
そのてっぺんには、
空を見はる おおきな耳がついていました。
「これで オマエの国も 安全だ。」
ゴリラは 満足そうに 笑いました。
けれども ある夜、
キジは 風にまぎれて 奇妙な声を 聞きました。
塔の上から、 小さな声が つぶやいていたのです。
「キジよ、キジよ。
きみの空は、本当に自由かい?」
キジは はっとして 夜空を見あげました。
月は ゴリラの影に かくれていました。
塔の耳は、風の音ではなく、
森じゅうの声を 聞いていました。
キジは 気づきました。
自分の歌も、羽ばたきも、
すべて ゴリラの大きな手のひらの上にあったことを。
けれども ゴリラは やさしく言いました。
「オマエの空は オレの空。
だからこそ守るんだよ。」
その言葉は 甘くて、あたたかくて、
どこかこわいものでした。
キジは 夜明けの空を見あげながら、
小さくつぶやきました。
「いつか本当に 自分の羽で飛べる日がくるのだろうか。
目が痛いほど 空がまぶしい。」
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真理は、手話で「空」を示し、
天を仰ぎました。
講堂で物語を聞いた子供たちの中の一人が、手を小さく握りしめて心の中でつぶやきました。「?」
講堂に響く拍手に真理はそっと微笑む。物語は集まった子供たちの胸の中で灯火となり、想いが次の未来へ渡されていくのを願う。
手話ナレーターのボランティアを続ける真理。彼女の声はまだ戻らない。
END



