あいだもんど 短編集  真理の手話紙芝居

紙芝居「灰の谷の小鳥」はじまりはじまりー。



「昔々、戦のあとに残った灰の谷に、一羽の小鳥がいました」

その小鳥は毎日、落ちている小さなごはんをついばむだけで、未来のことを考えることはありませんでした。
谷の周りでは、キツネやイタチが商売をしていて、群がるネズミやスズメたちは目の前のものに夢中で、ただ生きるだけでした。
小鳥もまた、その群れに紛れて、日々をやり過ごしていたのです。

ある夜、高い電柱にフクロウが止まり、静かに羽を震わせて言いました。
「腹を満たすことと、命を養うことは、違うのですよ」

その声に、小鳥は胸をざわつかせました。目の前の世界が、初めて少し違って見えたのです。翼を震わせ、小鳥は問いかけました。
「フクロウさん、どうしたら命を養うことができますか?」

フクロウは静かに答えました。
「自分の翼で確かめなさい。探すのは、あなた自身です」

次の日、小鳥は瓦礫を抜け、荒れた土地へ飛び出しました。枯れ草や泥水、倒れた木々、傷ついた仲間たち――すべてが新しい世界でした。怖くて、何度も戻ろうと思いました。それでも胸にフクロウの声が灯火のように残り、翼を震わせて少しずつ進みました。

空からはカラスが睨み、笑いかけます。「どうせ変われない!」と。
犬は吠えて、「翼を広げても無駄だ!何も変えられやしない!」と警告しました。
それでも小鳥は、少しずつ前へ進みました。

やがてフクロウは闇市の支配者に追われ、谷の空に姿を消しました。
「魂の声は消えない――」その言葉だけが、小鳥の胸に灯火として残りました。

小鳥は仲間を集め、灰の谷を飛び立ちました。未来はまだ荒れた荒野のままですが、自分で考え、選ぶ力を手に入れた小鳥の翼は、光を受けて震え、希望の光を抱えて空へ舞い上がります。

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講堂で物語を聞いた子供たちの目は輝きました。その中の一人が、手を小さく握りしめて心の中でつぶやきました。
「僕も、翼を広げてみよう」

講堂に響く拍手に真理はそっと微笑む。
物語は集まった小鳥たちの胸の中で灯火となり、静かに息づいていました。
灯火が次の未来へ渡されていくのを願い、手話ナレーターのボランティアを続ける真理。
彼女の声はまだ戻らない。

END