そのとき僕の瞼の裏に、風歌の太陽のような人懐こい微笑みが広がった。
 すると、僕の口は自然と「いいんじゃない?」と言っていた。
「かっこいいよな、そういうの」とも付け足した。
 柊太は眉を浮かせたが、やがて僕の肩に厚い手を置くと、頷いて笑った。

 そのすぐ次の日。
 今度は、風歌に呼ばれた。
 屋上に通じる階段で待ち合わせた。
 僕が行くと彼女はもうそこにいたが、近づいて声をかける間もなく、上段に立っていた彼女はいきなり僕の頬をぶった。
 それから「なんで柊太を止めないのよ?」と言って、ぼろぼろと涙をこぼした。

「……ごめん」
 とりあえず謝るしかなかった。
 そりゃ、風歌は柊太にはずっとそばにいて欲しかっただろうから。
 でも、実は自分が柊太と風歌を引き離したかったのではと疑念が湧いてくると、確かにそんな気もしてきて、そんな所業を働いた自分が恐ろしくなってしまった。