「できたぞ、常夜鍋だ」
俺が机の上に完成した鍋を置くと、二人は『おおっ!』と驚きの声を漏らした。
「肉多いな! おっさん、分かってんじゃん!」
「確かに、鍋というには野菜が少ないですね」
テンションが上がったノエルと、野菜の少なさを少し残念がるグラム。そんな年によって違う二人の反応を見つつ、俺は自慢げに口を開く。
「野菜はほうれん草みたいなのだけだ。ただこれだけでも十分に美味くて、ツマミになるのが常夜鍋の素晴らしい所だな」
常夜鍋はシンプルながら、毎日食べても飽きないと言われている鍋だ。要するに、ずっとツマんでいられる鍋ということだ。
如何にも知っているみたいな口ぶりだが、昔食べたことがあったが、自分で作ったのはこれで初めてだ。
それでも、スキル『おっさん』を使えば、おっさん料理人の力で作れてしまう。スキル『おっさん』は戦闘以外の私生活でも役に立つし、中々チートだよな。
俺はそんなことを考えながら、一升瓶に入ってある酒をコップに注いで、グラムに手渡す。それから、ノエルが自分のコップに飲み物を注ぎ入れるのを待って、俺は咳ばらいを一つする。
「それじゃあ、いただきましょうか。今日はお疲れ様でした、乾杯!」
「「乾杯!」」
俺の声に合わせてコップで乾杯してから、二人は各々鍋から好きな具材をとって、ポン酢風のタレをつけて口に運ぶ。
すると、ノエルとグラムは食べた瞬間、目を見開いた。
「美味いぞおっさん! これ、肉何枚でも食べれる!」
「ボア―の肉がすごいあっさりしてますね! 野菜とのバランスも素晴らしい」
俺は二人ががつがつと食べ出したのを見ながら、二人に倣うようにほうれん草のような野菜とボア―の肉を口に放る。
余分な脂が落ちて旨味のみが残ったボア―肉と、優しい舌触りのほうれん草のような野菜。薄味がついているそれらに絡んでいるポン酢のようなたれの塩味と酸っぱさが、それを薄めるものを欲しがる。
俺はその欲望に流されるように、その塩味と酸味を日本酒でぐいっと流し込む。キリっとした辛口の中にコメのうまみを感じながら、舌の上にあった油が流されていく。そして、微かなフルーティー香りが鼻に抜けていく。
「ああああっ! 美味い!!」
ツマミと酒の相性が抜群で、俺は自然と口角が緩んでしまっていた。
すると、グラムが目をぱちぱちっとして俺を見ていた。
「ひ、博さん、豪快に呑みますね」
「おっさん酒好きなんだよ。酒飲むとだいたいこんな感じになるんだ」
ノエルはなぜか得意げにそう言って胸を張っていた。
俺はどこに得意げになるポイントあったんだと思っていると、グラムが酒をくいっと飲んでから改めて鍋を見て感心するようにため息を吐いた。
「博さん、本当に何でもできるんですね」
「何でもはできませんよ。それに、調子に乗って今日はご迷惑をかけてしまいましたし」
「ご迷惑?」
俺がそう言うと、グラムは首を傾げて頭にはてなマークを浮かべた。
どうやら、本当に何のことかピンと来ていないらしい。
「ジャイアントビー件です。まとめて巣を焼き払う前に、確認しておけばよかったなと」
「迷惑だなんてとんでもない! というか、普通はあまりないことなんですよ。イワネズミの巣の近くにジャイアントビーが巣をつくるなんてことは」
「そうなんですか?」
「ええ。イワネズミも頭がいいので、巣はバレにくい場所につくります。目があまり良くないジャイアントビーが丁度良く巣穴を見つけるなんて確率はかなり低いかと」
俺はグラムの言葉を聞いて眉間にしわを入れて考える。
勝手に同じような場所に巣穴を作る習性があるものだと思っていたが、どうやらそう言う訳ではないらしい。
……そんなに確率が低いことなのに、偶然で片付けてしまっていいことなのだろうか?
「おっさん、おっさん! 米はまだ食わないのか?」
俺がそんなことを考えていると、ノエルが嬉しそうな顔でそんなことを聞いてきた。
俺は鍋に残る汁を見てから、首を横に振る。
「俺はまだいいよ。最後に雑炊にしたいからさ。食べるなら、雑炊を食べる分の腹は空けておきなさいよ」
「安心してくれ! おっさんの飯なら腹いっぱいでも食えるからさ!」
ノエルはニシシッと笑って、嬉しそうに土鍋にある米を取りに行った。
俺はそんなノエルの姿を見て、自然と口角を緩めていた。
まぁ、色々と難しいことを考えても分からないか。
とりあえず、今は何事もなく依頼を終えられて、ゆっくりと日本酒を飲めているという状況を楽しむとしよう。
そんなふうに考えて、俺はノエルとグラムと共に晩餐の時間を楽しむことにするのだった。
俺が机の上に完成した鍋を置くと、二人は『おおっ!』と驚きの声を漏らした。
「肉多いな! おっさん、分かってんじゃん!」
「確かに、鍋というには野菜が少ないですね」
テンションが上がったノエルと、野菜の少なさを少し残念がるグラム。そんな年によって違う二人の反応を見つつ、俺は自慢げに口を開く。
「野菜はほうれん草みたいなのだけだ。ただこれだけでも十分に美味くて、ツマミになるのが常夜鍋の素晴らしい所だな」
常夜鍋はシンプルながら、毎日食べても飽きないと言われている鍋だ。要するに、ずっとツマんでいられる鍋ということだ。
如何にも知っているみたいな口ぶりだが、昔食べたことがあったが、自分で作ったのはこれで初めてだ。
それでも、スキル『おっさん』を使えば、おっさん料理人の力で作れてしまう。スキル『おっさん』は戦闘以外の私生活でも役に立つし、中々チートだよな。
俺はそんなことを考えながら、一升瓶に入ってある酒をコップに注いで、グラムに手渡す。それから、ノエルが自分のコップに飲み物を注ぎ入れるのを待って、俺は咳ばらいを一つする。
「それじゃあ、いただきましょうか。今日はお疲れ様でした、乾杯!」
「「乾杯!」」
俺の声に合わせてコップで乾杯してから、二人は各々鍋から好きな具材をとって、ポン酢風のタレをつけて口に運ぶ。
すると、ノエルとグラムは食べた瞬間、目を見開いた。
「美味いぞおっさん! これ、肉何枚でも食べれる!」
「ボア―の肉がすごいあっさりしてますね! 野菜とのバランスも素晴らしい」
俺は二人ががつがつと食べ出したのを見ながら、二人に倣うようにほうれん草のような野菜とボア―の肉を口に放る。
余分な脂が落ちて旨味のみが残ったボア―肉と、優しい舌触りのほうれん草のような野菜。薄味がついているそれらに絡んでいるポン酢のようなたれの塩味と酸っぱさが、それを薄めるものを欲しがる。
俺はその欲望に流されるように、その塩味と酸味を日本酒でぐいっと流し込む。キリっとした辛口の中にコメのうまみを感じながら、舌の上にあった油が流されていく。そして、微かなフルーティー香りが鼻に抜けていく。
「ああああっ! 美味い!!」
ツマミと酒の相性が抜群で、俺は自然と口角が緩んでしまっていた。
すると、グラムが目をぱちぱちっとして俺を見ていた。
「ひ、博さん、豪快に呑みますね」
「おっさん酒好きなんだよ。酒飲むとだいたいこんな感じになるんだ」
ノエルはなぜか得意げにそう言って胸を張っていた。
俺はどこに得意げになるポイントあったんだと思っていると、グラムが酒をくいっと飲んでから改めて鍋を見て感心するようにため息を吐いた。
「博さん、本当に何でもできるんですね」
「何でもはできませんよ。それに、調子に乗って今日はご迷惑をかけてしまいましたし」
「ご迷惑?」
俺がそう言うと、グラムは首を傾げて頭にはてなマークを浮かべた。
どうやら、本当に何のことかピンと来ていないらしい。
「ジャイアントビー件です。まとめて巣を焼き払う前に、確認しておけばよかったなと」
「迷惑だなんてとんでもない! というか、普通はあまりないことなんですよ。イワネズミの巣の近くにジャイアントビーが巣をつくるなんてことは」
「そうなんですか?」
「ええ。イワネズミも頭がいいので、巣はバレにくい場所につくります。目があまり良くないジャイアントビーが丁度良く巣穴を見つけるなんて確率はかなり低いかと」
俺はグラムの言葉を聞いて眉間にしわを入れて考える。
勝手に同じような場所に巣穴を作る習性があるものだと思っていたが、どうやらそう言う訳ではないらしい。
……そんなに確率が低いことなのに、偶然で片付けてしまっていいことなのだろうか?
「おっさん、おっさん! 米はまだ食わないのか?」
俺がそんなことを考えていると、ノエルが嬉しそうな顔でそんなことを聞いてきた。
俺は鍋に残る汁を見てから、首を横に振る。
「俺はまだいいよ。最後に雑炊にしたいからさ。食べるなら、雑炊を食べる分の腹は空けておきなさいよ」
「安心してくれ! おっさんの飯なら腹いっぱいでも食えるからさ!」
ノエルはニシシッと笑って、嬉しそうに土鍋にある米を取りに行った。
俺はそんなノエルの姿を見て、自然と口角を緩めていた。
まぁ、色々と難しいことを考えても分からないか。
とりあえず、今は何事もなく依頼を終えられて、ゆっくりと日本酒を飲めているという状況を楽しむとしよう。
そんなふうに考えて、俺はノエルとグラムと共に晩餐の時間を楽しむことにするのだった。



