おっさん、転生特典でスキル『おっさん』をもらう。 ~世界中のおっさん(達人)のスキル使い放題チートのせいで、異世界人に頼られまくる。

「あ~……あー」

 それから、俺はできたばかりのヒノキ風呂に使って、大きなため息を吐いていた。

 魔法使いのおっさんの力でちょうど良い温度のお湯をたっぷりに張り、そこに勢いよくは入ったのだからため息も出るというもの。

 じんわりと体の表面を温めている熱が、徐々に体の内側に伝わってくる。血流が良くなっていくのを感じつつ、俺はもう一度深くため息を吐いた。

「まさか、ノエルが女の子だったとなぁ」

 今度のため息はさっきの失態についてのため息だった。

 初めて会った時からやけに顔が整っているとは思ったが、髪の長さとか言葉遣いから女子だという線を考えてもいなかった。

 ノエルも怒っている訳ではなさそうだったのが幸いではあるが、自分が失礼なことをしてしまったという自覚はある。

 それから、俺は簡易的過ぎるフェンスをちらっと見る。

「あとでフェンスは強化してやんないとだよな。男なら多少荒くてもいいかと思ったが、もう少し全体的にディフェンス力をあげないと」

 ノエルの家は他の民家と離れているし、勝手口の先は森になっているからフェンスは手抜きになっている。

 ノエルが女子だというのなら、そこら辺をちゃんとしないと使ってもらえないかもしれない。

 というか、今日はまだしも今後もずっとこの状態でノエルに使ってもらうのは、俺が心配になる。

 俺はそこまで考えてから、湯船のお湯で顔を軽く洗う。

「あとは……お詫びに何か作っておくか」

 俺はどんなものを作ろうかと考えながら、湯船につかってゆっくりと体を温めるのだった。



「おっさん! あのヒノキ風呂ってやつ、凄いな! なんか凄いスッキリした!!」

 俺の後に風呂に入ったノエルは、タオルで髪を拭きながら風呂から出てきた。

 風呂を入る前、俺がノエルのことを男だと勘違いしていたことはすでに忘れていそうなくらい、さっぱりとしている。

「いやー、浴槽にゆっくり浸かるっていうのはいいな! 癖になりそうだぜ」

「そりゃあ、よかったよ。気に入ってくれたみたいだな」

「ああ。おっさんがいてくれると、風呂のお湯も楽に張れるし、助かるわ」

 ノエルはそう言ってご機嫌にソファにドカッと座った。

それから、俺がキッチンで何かをしているのが気になったのか、すぐにソファから立ち上がって俺のもとにやってきた。

「おっさん、何か作ってんのか?」

「風呂上がりに食べると美味いものをな」

 それから、ノエルは俺の手元を見てから、キラキラとした目で俺を見た。

「これって……アイスじゃんか!」

「まぁ、アイスというかシャーベットだけどな。前に勝ってきたジュースがあったからそれで作っただけだ」

 俺が作ったのはかなり簡易的なシャーベットだ。氷と塩で冷やしたボウルにジュースを入れてかき混ぜて作っただけのシャーベット。

 本当はもう少し手の込んだものを作りたかったが、家にあるものがジュースか酒くらいしかなかったのだから仕方がない。

 俺がボウルからジェラートをさらに分けて渡すと、ノエルは立ったままジェラートを食べ始めた。

「うっま! これ作ったのかよ、おっさん! これも『おっさん』のスキルか?」

「いや、今回は使わなかった。このくらいなら俺でも作れるからな」

「まじか! やっぱり、おっさんは凄いな!」

 ノエルは屈託のない笑顔を浮かべると、シャーベットを掻き込んでいた。

 昔の学研で扱われていたくらいのものだし、そんなに褒められるようなものじゃないんだけどな。

 俺はそんなことを考えながら、ノエルに倣うようにシャーベットを一口食べる。

「おお、確かに美味いな」

 風呂上がりということもあってか、ジュースしか使っていないシャーベットがやけにうまく感じた。

 ちらっとノエルの顔を確認すると、ノエルは風呂に入る前よりも随分と機嫌がよくなっている気がした。

 俺はそんなノエルを見て胸を撫でおろすとともに、ゆっくりと進む時間をどこか心地よく感じていた。

 ヒノキ風呂に入って、風呂を出たらアイスを食べながら何でもない会話をして過ごす。

 日本の現代社会では味わえない時間の過ごし方をして、こういう時間の過ごし方も中々の贅沢だなと思うのだった。