おっさん、転生特典でスキル『おっさん』をもらう。 ~世界中のおっさん(達人)のスキル使い放題チートのせいで、異世界人に頼られまくる。

「せっかくチェーンソーみたいなら、このまま加工してしまうか」

 俺はそう考えて、チェーンソーのような魔法を倒れた木に当てようとして、ピタリと止まった。

 ……木の加工なんかしたことないし、どこをどうやって切ればいいのか分からない。

「木の加工が上手いおっさんといえば、やっぱり大工さんだよな」

 俺は以前と同じように、おっさん魔法使いの力を維持しつつ、大工のおっさんの力を使う。

『おっさんスキル発動:おっさん魔法使い×おっさん大工』

 すると、頭の中にそんな声が直接聞こえてきた。そして、木のどこをどう加工したらいいのかが頭に入ってきて、体が勝手に動いてくれた。

 てきぱきと俺が木の加工をしていると、ノエルが感心するように息を吐く。

「おっさん、めちゃくちゃ器用だな」

「俺自身は不器用なんだけどな。今はベテランの職人さん並みに器用みたいだ」

 鉛筆で綺麗に直線をかくことも難しいくらい不器用なのに、今は下書きなしで綺麗に木を切って加工している。

 某アイドルが農家とか船を作ったりする番組を観て、何かを作るようなことをしたいなとは思ってはいたが、自分が不器用だったこともありできずにいた。

 それがまさか、異世界でこんな形で叶うなんて。

 まだ木を加工しているだけだというのに、あまりにもスムーズに事が進んでいくのが楽しくて、俺はいつの間にか鼻歌を歌いながら木の加工をしていた。

「とりあえず、ヒノキ風呂を作るのに必要な木は揃ったな」

「こんなに使うのか? 随分でかいやつ作ろうとしてんだな」

「狭いよりも大きい方がいいだろ?」

 せっかくなら、男同士で一緒に風呂に出も入れた方が楽しそうだしな。

 俺はそんなことを考えながら、ふむと少し考える。せっかくスキル『おっさん』があるのなら、少し凝ったものを作りたいな。

「うん。今回は釘を使わない、木組みという方法でヒノキ風呂を作ってみるか」

「木組み?」

「釘とかを使わないで木を組むんだよ。凹凸みたいな感じで木の先を加工してはめ込むんだ」

 これも某アイドルが色んなものを作るテレビで紹介されていた方法だ。古くからの日本建築に使われているらしく、数ミリのずれも許さない職人技だ。

「おっさん、そんなこともできんの?」

「まぁな。俺はスキル『おっさん』使いだからな」

 図工で二を取った俺にできるはずがないが、今はスキル『おっさん』の力がある。職人の技が必要な今にもってこいの力といえるだろう。

 俺は二つのおっさんスキルを駆使しながら、慎重に木組みに必要な凹凸を作っていく。時折、魔法を使うのをやめて工具で慎重に凹凸を作っていった。

 ……凄いな。本当に自分が頭の中で思い描いているのと同じ形で加工されていく。こんなに綺麗に、かつ早く加工をすることができると工作にでもハマりそうだな。

 俺がそんなことを考えながら木組みに必要な凹凸を作っていると、ノエルが凹凸が一個で切る度に『おおっ』と声を出して感動していた。

 そんなノエルの反応が嬉しくなって、俺は必要以上にノリノリで木組みの加工をするのだった。
そんなふうに

 そして、木の加工を終えた俺はノエルと共に、台車を使って数回に分けてノエルの家まで加工済みの木を運んでいった。

 それから、ノエルの家の裏側に、加工した木材でヒノキ風呂を組み立てていくと、宿にある露天風呂くらいの大きさのヒノキ風呂が完成した。

「できた! 凄すぎるぞ、おっさん! 家にこんなでかい風呂ができるなんて!」

「結局丸一に近かったが、丸一日で作れれば十分だな」

 俺は完成したヒノキ風呂を見て満足げに頷く。

 ノエルの家の勝手口を出たところすぐに、簡単なウッドデッキを敷き、その上にくつろぐための大きなヒノキ風呂と、体を洗うための浴槽の二つを設置した。

 今後、簡易的なシャワーを作ったり、簡易的過ぎるフェンスを強化したりしないとだが、一日でこれらを作ったのは我ながら凄すぎると思う。

 さすが職人の技という他ないだろう。

「よっし、それじゃあお湯を張って風呂に入るか。せっかくだ、一緒に入ろうぜ、ノエル」

「いやいや、おっさんと入るわけないだろ」

 俺がノリノリでそう言うと、ノエルは目を細めて手を横に振った。

 俺はやけに冷静になノエルの言葉に首を傾げる。

「もしかして、人と風呂に入ることに抵抗があるのか?」

 そういえば、海外の人とかかは複数人で風呂に入ることに抵抗があるんだっけ?

 俺がそんなことを主出してそう言うと、ノエルはサラに目を細めた。

「人とっていうか、おっさんとは無理だって。うち女だし」

「……ん?」

 俺は一瞬ノエルの言葉の意味が分からず、フリーズしてしまった。

 聞き間違いだろうか? 今、女だって言ったか?

「おっさん。うちのこと、男だと思ってただろ?」

 俺がしばらく黙ってしまうと、ノエルは確信を持ったようにそんな言葉を口にするのだった。

 どうやら、俺が森の中で助けた子供は少年ではなく、少女だったらしい。