バスケをやめたオレに対し腐れ縁の後輩がウザすぎる

  練習試合にはそれなりの数の観客がいた。
 観客がいるというのも緊張するものだ。

 勿論あがり症なわけではない。だけど、また失敗するのが怖いのだ。

 「良太、大丈夫」

 そう言って俊太はオレの手を強く握りしめる。

 「オレがついているから」

 その俊太の言葉にオレは頷いた。ベンチスタートの俊太のためにも、必死でプレイをするべきだ。
 オレには立派な身長がある。
 少なくとも、全く戦力にならないなんてことは無いはずだ。


 そしてしあいがはじまった。その瞬間、観客に一人の姿を補測した。稲葉光だ。
 オレがバスケ復帰するという事を知り、ここに来たという事なのか。

 遊園地の時、オレは必死に振ったが、恐らくまだあきらめきれていないのだろう。
 ああ、面倒くさい。上じゃなくて、俊太を意識しながらバスケをしよう。


 結論から言うと、オレは幸いにもそこまで実践感覚は衰えていなかった。
 というのも、オレはかなりの活躍を出来たのだ。

 しかし、やっぱり少し衰えているのを感じる。
 僅かながら、ジャンプや、シュート、そしてドリブルの質が下がってしまっているのだ。

 そこに悔しさを感じつつ、オレはひたすらにプレイをしている。
 幸いにも、オレには背の高さがある、そのおかげで、何とか食らいついていけている。
 一番活躍とまではいかないが、それでも中々活躍は出来ているんではないだろうか、と思う。
 それは自画自賛かな、と思いながら必死にプレイをする。


 だけど、やはり体力は完全には戻っていないようで、第一クオーターの時点で疲労が限界にまで来ていた。
 さらに足も軽く痛んできた。
 そのため、一旦休憩をとることになった。


 今のオレがいても、足手纏いになるだけだ。悔しいけれど、一時撤退も手だろう。


 「はい」

 そう言ってオレにペットポトルを差し出す手が一つ。
 俊太だ。

 「ありがとう」

 オレはそう言ってペットポトルを受け取った。
 そしてキャップを開け、水を飲む。
 美味しい。ごくごくっと、喉の潤いを治す。
 そして、ある程度飲み終え、キャップを閉めると、

 「お疲れ様」

 そう言って俊太はオレの背中を優しく撫でる。

 「疲れた」

 そう言ってオレは顔を俯かせる。

 「まさかここまで体力が疲れるとはな」
 「仕方ない。良太はよく頑張った」

 そして、また背中を強く叩かれる。

 そして、暫く試合を見守る。

 試合の動きは点を取って取られての連続だった。
 中々点差が動かない硬直状態だ。
 オレの所属するバスケ部も中々強豪の部類に入る。

 強豪同士の戦いだ。

 ただ、終盤に近付くと、段々と点差が離れて行った。
 流れを持ってかれた。微々たる点差だが、終盤ともなれば、そのわずかな差が勝敗を分ける。

 オレはそれに軽いイラつきを感じた。
 何しろ、あの場にオレがいないことが悔しく感じてきたのだ。
 なんでオレはあそこで皆と共に頑張っていないんだ。もう体力は回復しきっているというのに、何でこんな場所にいるのだ。

 「大丈夫っすか?」

 俊太はオレに言う。

 「大丈夫だ。それよりもまだ終わっていない」
 「そうだな」向こうから声がした。「行ってもらおうか」

 オレが振り向くと、監督はにっと口角を上げ、笑った。
 そうだな、オレはそう思い、「行ってきます」と言った。

 オレが出てくると軽い歓声が上がった。
 光もオレをじっと見ている。
 皆の期待を裏切るわけにはいかない。それにさっきは、体力をは早々に消化しきってしまった。
 オレの体力と相談しながら、頑張るしかない。

 そう思い、オレは早速敵コートの中央付近に立った。

 そしてオレは来たボールを手にし、前につないでいく。
 あまり過度には動かない。しかし、身長を武器に、ボールを回していく。
 オレが入ったからだろうか、味方の連携が取れてきた。
 そして、段々と、こちら側にペースが流れてきた。


 そして最大のチャンスがやってきた。
 オレがシュートを打てる最大のチャンスだ。正直緊張をする。だけど、打たなくてはならない。
 これを外せば、負ける。あの時と奇しくも似たような状況だ。いける、いける。そう確信した瞬間だ。
 オレはゴール目掛けてボールを投げた。そのボールは宙できれいに回転をし、そして、ネットにきれいにはまって行った。
 オレはそれを見て、よしっとガッツポーズを決めた。

 その瞬間試合終了のホイッスルが鳴った。その瞬間に、オレたちのチームの勝利が決定した。

 ベンチから俊太が飛び出し、オレにハグを求めてきた。オレはそれに応じて、ハグをし返した。

 悦びの渦にまみれた会場。それをうけバスケに復帰してよかった。そう思った。


 そして、そのままバスケ場を後にしようとしたとき、話しかけられる。
 光にだ。

 なぜ話しかけられたか、その理由をオレは知っている。

 「ハグしてなかった?」

 そうだ、オレと俊太はハグをした。だけど、あれくらいは友達でもある。何しろ、喜びそのままにハグをしたいというのは、人間だれしもが持つ欲求なのだから。

 「なんで私じゃ、だめなの?」

 まただ。再びその言葉だ。

 「だめなんだよ。諦めてくれ」
 「やっぱり、良太のバスケはいいなって思ったし……」

 指をもじもじとさせて来る。

 「大丈夫。先輩は俺のものだから」

 困るオレの背後に、俊太が立っていた。

 「じゃあ、行きましょう」

 そして、俊太がエスコートしてくれる。
 「待ってくれ」
 まだ出るのは早い。

 「オレからも言わせてくれ。オレがまた光、いや稲葉さんと付き合う未来はないから。すまないが諦めてくれ」

 そう言って、オレは再び出て行った。

 俊太と手をつなぎながらだ。

 その後、軽い打ち上げのようなものに出て、その後俊太と二人で帰った。

 「やっぱり良太のバスケは最高」

 美酒に酔った感じの表情で俊太が言った。

 「ほれぼれしました」
 「そりゃオレのバスケだからな」
 「そっすね。オレ先輩の良太のバスケを特等席で見られて最高に幸せ」

 特等席、ベンチという事だろう。

 「いつかはスタメンに出てもらうからな」
 「まあ、それは頑張っては見るけど」
 「弱気を吐くなよ」
 「まあでも、布団の中の特等席いただいてますけどね、という事で今日も俺の家に行きましょう」
 「今日もかよ」
 「許可取ってあるので!!」

 流石、準備が早い。

 そのままオレたちは俊太の家に向かっていった。



 その後オレはスランプを抜け出して、バスケのチームに貢献し、俊太もベンチとしてだが、試合の中の特定の場面で。試合に出してもらえるようになった。
 そしてオレたちは、オレのせいで負けた高校に大会でリベンジすることになるのだが、それはまた別の話だ。