バスケをやめたオレに対し腐れ縁の後輩がウザすぎる



 翌日。オレが家を出ると、「一緒に学校に行きましょう」と、俊太が言った。

 「悪い。今日は色々と思考がごっちゃになってるから、一人にさせてくれないか?」

 今日は考え事が多すぎて、正直俊太の顔を見れない。

 「えー、何でっすか。とはいえないっすよね。俺のせいなんで」
 「……ああ」

 オレは頭を下げる。

 「下げるならこっちですよ。変なこと言ってごめんぅす。もう考えなくていいですから。所詮独りよがりな思考なので」
 「待てよ」

 オレは捨て言葉を吐いて、去ろうとする俊太の肩を掴む。

 「なんすか?」
 「独りよがりって何だよ」

 オレはそこが気になる。

 「別に断るだなんて言ってねえだろ」
 「なら」
 「別にOKするとも言ってない」

 何を勘違いしているんだ。

 「だけど、もう少し時間が欲しいんだ」
 「分かりましたよ。俺はいつでも答えを待っていあmスから」
 そう、笑顔で俊太は言った。

 それから一人で、思索しながら、歩いていく。


 正直一緒に学校に行く気分ではない。



 歩きながら、思考を巡らす。
 正直、今のオレの心は、よくわかっていない。
 だが、俊太の事を考えながら歩いていく。そう、俊太と一緒に何をするか。
 正直俺は男と付き合うなんざ考えたことあない。
 そもそも俺は女子とも、長くは付き合えた事なんざない。

 そんなオレが俊太と付き合えるのだろうか。
 そもそも俊太にしたって、女子にモテるのに、なぜ男のオレなのだろうか。

 いや、それを言うのはおかしいか。理屈なんていらないのだから。

 恋人。
 オレはBL漫画なんて一切読まない。
 だからこそ、よく分からないのだ。
 だけど、それでも思う事はある。
 誠実に対応できないだろうという事だ。

 いや、こういうのは理屈じゃないな。
 オレが俊太に対してそう言う目で見たことがないから、そう思うだけだ。
 なら、行うは見るより易しで、付き合ってみるべきなのだろう。

 そう思い、オレは息を吐く。
 後で少し話をしたいな。そう思いつつ学校に行く。
 そして一件のメールを送った。

 その返事はすぐに来た。そう言う訳でオレの放課後の予定が決まった。


 「先輩、嬉しいっすよ。オレと一緒に来るって言ってくれて」

 手を合わせながら、そう言われた。

 「別に関係ないだろう。オレがそうするって決めただけなんだから」
 「えー、そうはいっても嬉しいっすよ」
 「そうか、ならよかった」

 とは言ったものの、オレは緊張している。
 今からどこに連れていかれるのだろうか。今からどうなってしまうのだろうか。
 不安しかない。

 「今日は、あまり遠出は出来ないっすからねえ。先輩と今行って楽しい所と言えば」

 じっくりと、考え込んでいるようだ。
 しかし、すぐにオレの方を見る。

 「とはいえ、もう決まってるんっすけどねえ」
 「それはどこ?」
 「ふふふ」

 そう、意味深に笑う俊太に連れてこられたのはまさに、

 「お前の家かよ」

 思わず、ツッコんでしまった。
 何しろ、まさかこことは思っていなかったのだから。

 「昨日も行っただろ」
 「のんのん」

 俊太が指を振る。

 「今日はカップルとしてっすよ」
 「いや、付き合うとは一言も言ってねえだろ」

 流石にそれは無茶が過ぎないか。

 「あ、勿論俺は今日ベッドに押し倒すなんてこと考えてないから安心して欲しいっす」
 「なら、なんでここに?」
 「決まってるじゃないっすか」

 そして取り出してきたのは、ゲームカセットだ。

 「なんでだよ」

 オレはツッコまざるを得なかった。
 なぜ、今になってこれなんだ。

 「別に変化なんて求めてないから」
 「求めてない?」
 「そうっす。俺は先輩を独占出来たらそれで十分なんっす」
 「十分か」

 なら今までと変わりがないじゃないか、と一瞬思ったが。違う。
 俊太の気持ちをオレは知っている。

 「他には何が望みなんだ」

 恋人になる、とかはよく分かっていない。
 だが、かなえられるならば、俊太の望みを最大限かなえてやりたい気分だ。

 「なら、一緒に遊園地に行きません?」
 「はあ?」

 遊園地だと。

 「そんなに嫌なんすか?」
 「いや、別にそう言う訳じゃないが」
 「なら決まりっすね」

 笑顔で言う俊太。相変わらず調子のいいやつだ。

 だが、

 「いいと言ったわけじゃねえ」

 嫌な訳ではないと言っただけ。オレは一度もうなずいてなんていない。

 「条件がある」
 「何ですか?」
 「オレをドキドキさせろ」

 男同士でこんなことを言うのはおかしいのかもしれん。しかし、

 「オレが楽しいと思うデートプランをお願いしたい」

 オレは不思議とわくわくしている。
 この、面白い、未知の瞬間に。


 その日の夜もまた眠りにつくのが大変だった。
 昨日は分からなかったがやはりオレはワクワクしているんだろうな。
 これが俊太に乗せられていると言ったら、少々悔しい気持ちになるが、それでもいい。

 そもそもから考えてオレは好きな女子が出来たことがなかった。
 それこそ俊太みたいにモテるわけではなかったが、バスケ部時代はそれなりにモテていた。

 だけど、オレは彼女を作らなかった。
 いや、正確には作っていた。だけど、直ぐに疎遠になった。理由はオレがあまり一緒にいて楽しいとは思えなかったからだ。
 今ともなれば中々にクズみたいな理由だが、あの時のオレは本当にそう思ったのだから仕方がない。

 彼女、稲葉光は可愛い女の子だった。
 オレとも気が合ったいい人だった。
 それこそ、ミーハー的な感じでオレに近づいた人たちとは違い、本当にオレの事を好きそうな感じだ。
 彼女は今何をしているのだろうか。
 今のオレには関係ないか。

 今彼女がどこで何をしていようと。