バスケをやめたオレに対し腐れ縁の後輩がウザすぎる

 「先輩、おはよっス」

 オレ、山瀬良太の元に後輩である宮田俊太が来る。

 「またか」

 それに対し、オレはため息をつく。もはや、いつもの光景と化したこの景色。
 

 「またかってひどくないっすか? 先輩の元にいつでも参上、この俊太様をまたか扱いとは」
 「うぜえ」

 オレはそう言って、「ええー」と言っている俊太を無視して歩いていく。
 俊太とは所謂腐れ縁、幼馴染だ。

 俊太は昔からオレの背中をついてくる可愛らしい、弟みたいな存在だった。
 前までは、もう少しおとなしい感じだったが、最近はとことんうざい。
 それもオレがバスケを引退してからだ。

 そして、一階校舎で俊太とわかれた。一年の教室は一階なのだ。
 そして二年のオレは二階の教室に入り、

 そして、自分の席に着く。

 「はあ」

 息を整え、
 すぐさまため息をついた。

 「また、あの後輩か」

 オレの親友である、神田仁志がオレの前の席に座って言う。
 彼はオレが俊太に最近ストーカーのように付きまとわれている事を知っている。

 「ああ」

 オレは頷いた。

 「大変だ」

 あいつはオレが裏でこんなことを言っているだなんて知らないんだろうな。
 こんなことを思ったら、陰口みたいなものだ。


 

 オレは髪の毛をかきむしる。するとチャイムが鳴り、教師が教室に入ってきた。

 「じゃあ」そう言って仁志は前を向いた。

 そしてホームルームが始まった。



 放課後、いつものように俊太が教室にやってきた。
 それを見て、オレは思わず、げっ、と声を漏らしてしまった。

 そして、俊太は手を振ると、「先輩、今日も帰りませんかっ!!」と元気よく言った。

 
 「そうだな」

 オレは席を立ち、そう答える。


 「最近ぶっきらぽうじゃないすか。どうしたんすか?」
 「最近ずっと来るよな、お前」

 放課後来ない日の方が少ない、と思う。
 オレが中学の頃は、もう少し距離感とか、そう言う物を弁えてくれる感じだったのに。

 「そりゃ、先輩の所にいるのが一番好きっすから、あ、今日家行っていいすか」
 「好きにしろ」

 どうせ断っても、こいつは来るだろう。

 「やったー」

 喜ぶ俊太。
 色々と調子が狂ってしまう。




 そして家で、俊太は座る。
 場所はオレの部屋だ。

 「先輩の家に来るの久しぶりっすけど。懐かしいっすね、これとか」

 そう、俊太はオレのバスケのトロフィを手にしながら言った。
 オレの中学の時のものだ。

 「しかし、もったいないっすよね。今はもうバスケをやってないなんて」
 「色々と会ったんだよ」

 そう、オレは自分の足をさすりながら言う。
 もう、オレの足はだめになっちまっている。
 日常生活には何も支障はないが、スポーツはあまりできない。

 いや、それはもういい訳だ。何しろ、スポーツが出来ないのは、体じゃなくて、心の問題なのだから。
 そうもう、もう足はほぼ完治してるのだ。
 だけど、どうしてもあの最後の瞬間が、トラウマになっている。そのせいで、バスケはもうできないのだ。

 オレの心が弱いせいで。

 最後、オレが足を完全にくじいたきっかけ。最後のシュート。先輩たちが作ってくれた隙。オレは完全にフリーの状態でボールが渡った。

 オレが決めなければならないタイミングだった。その最高のタイミング。そこでオレはしくじった。
 足を滑らせてしまい、オレはシュートを決められなかった。

 オレは知っていた。足に違和感があった事に。だけど、試合を優先した。その結果がこれだ。

 そのせいで、オレたちの学校は破れ、先輩たちはそのまま引退になった。
 そしてオレは傷を言い訳にバスケをやめた。

 そして今はバスケはやっていない。



 「そうっすね」

 俊太はその事情を知っている。だからこその言葉だろう。
 俊太は賢い。だからこそ、多分分かっているのだろう。オレの傷が既に癒えていることを。
 それでもって、オレがバスケから逃げていることを。



 「しんみりさせちゃったな」
 「いいっすよ。俺は先輩といられるだけでいいっすから」

 そう、オレの目を真っ直ぐ見て、

 「ゲームしましょう」

 と、言った。



 あの日からオレは、ゲームをし続けている。そして俊太もそれを知っている。だからこそ、ずっとオレと一緒にゲームをし続けてくれている、そうオレは思っている。


 ゲームはいい。ゲームはオレの傷をいやしてくれる。
 ゲームには後退のふた文字もないし、スランプもない。
 楽なんだ。

 考えることをやめるには楽なんだ。

 「じゃあ、しましょう」

 俊太が言って、オレたちはゲームをする、

 色々とうざいこいつだけど、ゲームを一緒にするのは楽しい。
 一人でやるよりも二人でやる方が楽しいんだから。