朝起きてダブルベッドから体を起こすと、まず最初にサイドテーブルの引き出しを開ける。中の結婚指輪を取り出し、左手の薬指にはめるこの瞬間が私は一番好きだ。一人前の女になったと実感できるから。




「今日は同窓会だから、昼は冷蔵庫にあるお惣菜をチンして食べてね」
 隣で眠る夫の肩を揺する。彼は聞いているのか聞いていないのか、

「う……ん」
 と目を開けずに答えた。





 久しぶりにスーツに袖を通す。化粧はもちろん、薄化粧。同窓会に厚化粧で行くだなんて、男を漁りに来てるみたいでみっともないから。それに、私にはもう夫がいる。そのステージからはもう卒業したのだ。





 二時間ほど電車に揺られると、故郷に帰って来た。駅の周辺の商店街は、私が上京してからの数年で、すっかりと寂れてしまっていた。

 スマホで地図を確認しながら、懐かしい道を歩く。あった。お目当ての、チェーン店の居酒屋だ。

 ガラスドアの取っ手に手をかける。高校生のときの同級生に会うのは五年ぶりだ。