私の夫は崖の下

 崖の底には、夫の凍った死体と、息子の死体がある。明日になれば息子の死体も凍って、夫と一緒に永遠にこの崖の底に氷像として残りつづけるのだろう。



 先ほどの男と別れて、一つ深呼吸をする。冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、白い息を勢いよく吐き出すと、頭がクリアになっていくのを感じた。

 さて、今日の夜ご飯は何にしよう。私は鼻歌を口ずさみながら、山道を降りて行った。





 私はきっと、この先もう二度と、この崖の上に立つことはないだろう。