私の夫は崖の下

「え……?」
 呆けた声が短く聞こえて、それから

「嘘……だろ……、お前ふざけんな!! ふざっけんな!! おい!!! どうすんだよこれぇええええ~~~~~!!!!!」

 怒りの怒鳴り声、それから泣き叫ぶ声に聞こえる。

「この崖はね、高さが五十メートル以上あるの。だから、素手じゃあ登って来られないね」
「お前!! 覚えてろよ!!! 絶対ぶっ殺してやるからな!!!」

 まだ救助されると思っている夫に、私は笑い声を隠せなくなってしまった。


「あははは!! バーカ!! 救助なんて来ねぇよ!!! だって、ここらへんはヘリが止まれない地形なんだよ? そのくらい、私が調べてないと思ったの!?」

 サァーと、夫の血の気が引いていく。それだけで、私が彼に捧げた三十年間が報われた気がした。