私が息子を産んだとき、彼は立ち合い出産に来なかった。次の日現れた彼は、知らないシャンプーの匂いがした。
「ねぇ、もしかして、あのときからずっと……?」
震える唇で、かろうじて言葉を紡ぎ出す。夫の沈黙は、私にとって正解を意味していた。視界が、絵の具に水を垂らしたみたいに滲んで歪んだ。
「何で!? ひどいよ……私があのとき、どんなに苦しんでたかも知らないでアンタは女とヤってたんだ!! この人でなし!!!」
パァン! と、破裂音がして、私は何が起きたか一瞬分からなかった。数秒して、頬がビリビリと痛みだした。え、何? 私、今夫にぶたれたの……?
「ぴーぴーヒスってんじゃねーよ。お前は黙って俺の世話だけしてりゃあいいんだよ。それとも、離婚するか?」
冷たい目。真っ黒で、ブラックホールみたいな。
「いや……いや……」
私は必死で首を横にふる。だって、貴方に見捨てられたら生きていけない。
「だよな? だって、お前は俺のこと愛してるもんな?」
ドロリと、歪ませるように夫は唇を吊り上げた。漆黒を讃えたその瞳は、少しも笑っていない。
そして、彼は私を乱暴に抱きしめた。生まれてはじめて。
「うん……言うこと聞く、言うこと聞くからぁ……捨てないでぇ~~」
私は子供のように、彼の腕の中で泣きじゃくった。
私は一生、彼の元から離れられない。鎖に繋がれてしまったから。愛情という名の、固く、太い鎖に。
「ねぇ、もしかして、あのときからずっと……?」
震える唇で、かろうじて言葉を紡ぎ出す。夫の沈黙は、私にとって正解を意味していた。視界が、絵の具に水を垂らしたみたいに滲んで歪んだ。
「何で!? ひどいよ……私があのとき、どんなに苦しんでたかも知らないでアンタは女とヤってたんだ!! この人でなし!!!」
パァン! と、破裂音がして、私は何が起きたか一瞬分からなかった。数秒して、頬がビリビリと痛みだした。え、何? 私、今夫にぶたれたの……?
「ぴーぴーヒスってんじゃねーよ。お前は黙って俺の世話だけしてりゃあいいんだよ。それとも、離婚するか?」
冷たい目。真っ黒で、ブラックホールみたいな。
「いや……いや……」
私は必死で首を横にふる。だって、貴方に見捨てられたら生きていけない。
「だよな? だって、お前は俺のこと愛してるもんな?」
ドロリと、歪ませるように夫は唇を吊り上げた。漆黒を讃えたその瞳は、少しも笑っていない。
そして、彼は私を乱暴に抱きしめた。生まれてはじめて。
「うん……言うこと聞く、言うこと聞くからぁ……捨てないでぇ~~」
私は子供のように、彼の腕の中で泣きじゃくった。
私は一生、彼の元から離れられない。鎖に繋がれてしまったから。愛情という名の、固く、太い鎖に。

