「なにこれ……?」
ある日、帰宅した夫に一枚の紙を渡された。『葬式のお知らせ』と書いてある。
「ああ。お母さんが死んだから」
使っていた道具が壊れたみたいな言い方に、私は唖然とした。
「ねぇ、死んだっていつ? 何で黙ってたの!?」
「あーうるさい。三か月くらい前だよ。夜中にぽっくり亡くなったって。死んだ人のことなんてもうどうでもいいだろ」
「どうでもよくないよ……」
最近義理母が家に来ないと思ったら、まさか死んでいたとは……。夫はネクタイを解き、靴下を脱いで床に投げ捨てた。私は、それを拾う。私は夫が分からない。信じられない。でも、これって、私が悪いのかな……?
「何で悲しそうな顔してんの? よかったじゃん、介護しなくてすんで」
まるで濁った深淵みたいな夫の瞳に、背筋が寒くなる。いつか、その瞳が私に対して向けられる日が来るのだろうかと。
ある日、帰宅した夫に一枚の紙を渡された。『葬式のお知らせ』と書いてある。
「ああ。お母さんが死んだから」
使っていた道具が壊れたみたいな言い方に、私は唖然とした。
「ねぇ、死んだっていつ? 何で黙ってたの!?」
「あーうるさい。三か月くらい前だよ。夜中にぽっくり亡くなったって。死んだ人のことなんてもうどうでもいいだろ」
「どうでもよくないよ……」
最近義理母が家に来ないと思ったら、まさか死んでいたとは……。夫はネクタイを解き、靴下を脱いで床に投げ捨てた。私は、それを拾う。私は夫が分からない。信じられない。でも、これって、私が悪いのかな……?
「何で悲しそうな顔してんの? よかったじゃん、介護しなくてすんで」
まるで濁った深淵みたいな夫の瞳に、背筋が寒くなる。いつか、その瞳が私に対して向けられる日が来るのだろうかと。

