私と夫が出会ったのは、私が十八歳のときだった。彼は私の上司で、高校を出てすぐのまだ仕事や社会人のルールについて何も知らない私に、ときには厳しくときには優しく、いろいろと教えてくれた。

 当時、私は彼のことを何とも思っていなかった。年が離れすぎていたから。彼は三十二歳、私は十八歳で、彼氏候補というよりもむしろどちらかと言えばお父さんに近かった。





 彼のことを意識し始めたのは、二十二歳のときだ。その時期になると仕事の分量も増えて、だんだんキツくなってきた。この仕事で年収三百万ちょっとか……。残業して夜十時に帰宅しベッドに倒れこむとき、私一生この仕事つづけて行くのかな? なんて、不安で押しつぶされそうになった。

 だから、私は婚活を始めた。今思えば甘い考えだったが、結婚して専業主婦になれば会社を辞められると考えたのである。そして、惨敗。まともな男性にはまったく相手にされず、マッチングするのは実家暮らしで私よりも年収の低い清潔感の欠片もない妖怪みたいな見た目の中年男性ばかりだった。

 人を見た目で判断するのはよくないことだと重々承知しているが、彼らは人間性も最悪で、まず喋らない、目も合わせない。口を開いたかと思えば否定ばかり。それどころか一人で延々と私の知らないアニメの話をしてきたりする。

 彼らとのランチはすべて割り勘だったので、お金がもったいなくなり私は婚活をやめた。そして、社内で結婚相手を探すことにしたのである。

 そんな折、社内で飲み会が開かれた。コロナ明けの久しぶりの飲み会で、浮かれた部長が『何でも好きなもの食べていいよ! 俺が全部出すから!』なんて大口を叩いて、同じ部署の社員ほぼ全員で少しお高めの居酒屋に行くことになった。





 その飲み会の席で、私の夫(このときはまだ独身)が私のことを好きだという話を同僚の男性から聞いたのだ。彼曰く、あまりにも年が離れすぎているから遠慮して気持ちを心の奥にしまっているのだと。

 正直、彼は全然タイプじゃないし、なによりおじさんだし、付き合うのは嫌だった。でも、結婚となれば話は別だ。大人しそうだし、私より年上で役職もついているからお金も稼げるし、何より仕事を辞められるならブサイクでもおじさんでもなんだってよかった。

 だから、私は彼に告白した。