私の夫は崖の下

 その望みは、半年後に半ば叶えられることになる。両親から電話がかかって来たのだ。うちに孫を連れておいでと。




 最後に地元に帰ったのは、同窓会のときだ。新幹線から窓の外を眺めていると、ひどく懐かしく感じた。あのときは一人だったが、今は三人だ。

 新幹線を降りると、

「あ゛いいい゛いぎぃ゛いいいい゛!!!!」
 息子が癇癪を上げた。

「ユウタ。もう電車はおしまい。おばあちゃん家に行くよ」
 
 抱っこ紐の中で暴れる彼を必死に眺めていると、はるか遠くに夫の姿が見えた。

「うわ! 待って待って!!」

 慌てて追いかける。しかし、どうしてそんなにズンズン歩けるのだろうか。彼は私の実家の場所を全く知らないはずなのに……。